愛猫との出会い方はみなさんさまざまだと思いますが、「運命のようだ」と思える出会いを果たした人も。今回は、猫のピョンタくん(♂・推定9才)と飼い主さんご家族の出会いのストーリーをご紹介します。
降りしきる雨の中、飼い主さんの息子さんの足元に小さな子猫が
2011年9月1日、この日は台風の影響で雨が降っていたそう。飼い主さんは息子さんと一緒に土手を歩いていたそうですが、息子さんが突然「ママー! 猫ちゃん!」と叫んだのだそうです。その声を聞いて振り向くと、息子さんの足元に雨でずぶ濡れになった小さな子猫がいたのでした。
飼い主さん:
「どこから現れたのかまったくわからなくて、もちろん近くに親猫がいる様子もなく、小さく震える子猫に戸惑いました。息子は触ることもできずに『ママ、このコどうしよう?』と、固まってしまっていました。この写真は、そのときに思わず撮ったものです」
突然現れた子猫に戸惑いはあったものの、台風による影響がこれから強くなるとわかっていた飼い主さんは、「このまま放っておけない」と子猫を保護することに決めたのでした。
保護当初は不安なことも
子猫に「ピョンタ」と名づけた飼い主さんご家族。生後約2カ月のピョンタくんはとにかく小さくて鳴くこともできず、「数日で死んでしまうのではないか」と心配したこともあったそう。小学生だった息子さんは「小さなピョンタを守らなくては」と、必死にお世話をしていたといいます。
そして、ピョンタくんはいつもそばにいてくれる優しい息子さんのことが大好きに。音読中の息子さんをじっと見守ったり、一緒に寝たり、とにかくふたりはずっと一緒にいたのだそう。
飼い主さんご家族の献身的なお世話により、ピョンタくんは少しずつ大きくなっていったのでした。
今ではもふもふの大きなニャンコに!
突然の出会いから約9年が経ち、ピョンタくんはこんなにも立派な大人猫に成長しました。キリッとした男前な表情や、もふもふの毛並みがとっても素敵ですよね。今のピョンタくんの姿を見ていると、たくさんの愛情を注がれて育ててもらったのだということが伝わってきます。
ピョンタくんを見ていると「本当に猫?」と思うことも
おとなしくてお利口さんだというピョンタくん。「お手」ができたり、扉を簡単に開けることができたり、爪研ぎも決められた場所でしかしなかったりと、とにかく賢いのだそう。飼い主さんのことを困らせるようなイタズラもせず、一度失敗をすると繰り返さないタイプなのだそうです。
また、家族の食事の時間にピョンタくんも同席するそうですが、そのときのマナーもバッチリなのだとか。
飼い主さん:
「ピョンタは自分の椅子に座って、自分のごはんを食べます。食事中にテーブルに乗ることはありません。『ごはんよ』と私が家族に声をかけると、一番に来て自分の椅子に座って待っていたりもしますね」
まるで自分のことを人間だと思っていそうなエピソードですよね。
また、在宅勤務の旦那さんが終業時刻を過ぎても部屋から出てこないと催促したり、息子さんの帰りがいつもより遅いと玄関で鳴いて待っていたりと、ピョンタくんは人間の言葉や時間を理解しているように感じることもあるそう。
そんなピョンタくんについて、飼い主さんは「猫であることが不思議な感じ」とも話していました。
息子さんとの「兄弟の絆」を感じる出来事が
ピョンタくんを保護したときは小学生だった息子さんも、今では高校生に。大きくなったふたりの姿を見ていると、微笑ましい気持ちになってきます。ふたりの成長を見守ってきた飼い主さんは、今でも印象に残っている出来事があると話します。
飼い主さん:
「息子が小学生の頃の出来事です。祖父母が我が家へ遊びに来て食事をしていたときに、息子がちょっと悪いことをしてしまって、その場にいた全員から『ダメだぞ』と注意を受けたことがありました。
そのときに、いつもは悪さをしないピョンタが急に花瓶を倒したんです。おそらく、さらに悪いことをすれば自分が叱られるから、気をそらして息子を助けたかったのではないかと思います。それを見て猫嫌いなおじいちゃんでさえも、『この猫は利口だな』と感心してしまったほどです」
最近でも、飼い主さんが留守中の息子さんの部屋を無断で掃除したりすると、ピョンタくんは邪魔をしてくることがあるそう。その姿はまるで「監視をするように息子から言われているかのよう」だといいます。
飼い主さん:
「拾ってもらった恩を感じているのか、兄弟の絆なのか。そのくせ最近は、抱っこ拒否など息子を避けたりすることもありますが、大事なときだけは団結する兄弟みたいです」
飼い主さんご家族にとってピョンタくんは大事な家族であり、「猫とか人間とかを超えた存在」でもあると飼い主さんは話していました。
ピョンタくんもきっと、素敵な家族に出会えて幸せを感じているはずです。これからもみんなで、幸せな日々を過ごしていってほしいですね。
写真提供・取材協力/ピョンタさん
取材・文/雨宮カイ