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猫を看取ることはどうしてつらい? 猫との関係性について専門家に聞いた

猫を飼い始めると、どうしても「看取り」からは目をそらすことができません。愛猫が亡くなり、心に大きな喪失感を覚えた人も多いのではないでしょうか。

今回は、猫の看取りがどうしてつらいのかについて、ご自身のペットロスの経験から「猫社会学」を立ち上げた、大学教授の赤川学先生にお話を聞きました。

猫を看取る経験の構造的把握

3匹の猫
参考・写真/「ねこのきもち」2024年12月号『大学教授・歌人・イラストレーター・臨床心理士 その人の目線で綴ってもらいました。私とペットロス』
これだけ愛おしく、また別れが悲しい猫と人との関係性。赤川先生は、同じ猫好きの社会学者とともに「猫社会学」を立ち上げました。
研究テーマとして手がけたのは、「猫を看取る経験の構造的把握」。分析の結果、猫を看取る経験は、「飼う躊躇」「衝動飼い」「猫の家族化」「モノ化する悲しみ」「自然に還る死」「消えない悲嘆」「悔いなき看取りと死の受容」の7種類のシンボルマークに整理することができました。

このなかでも、「猫の家族化=猫は対等な家族の一員であり、猫の死は人間の家族並みに悲しい」という気持ちがうかがえます。また、「モノ化する悲しみ=猫が遺体・遺骨となっていく過程を観察するのは、つらく悲しい」「消えない悲嘆=猫の死のつらさ・悲しさは克服困難であり、悲嘆は消えず、後悔の念にもかられる」という気持ちがうかがえます。

同時に、「悔いなき看取りと死の受容=天寿を全うすべく悔いなき看取りを行い、死を受け入れ、他の猫と暮らし始める」という、愛猫の死を受け入れ悲嘆から回復する気持ちもあることがわかりました。

現在は家族のあり方が変わってきた

猫の写真
参考・写真/「ねこのきもち」2024年12月号『大学教授・歌人・イラストレーター・臨床心理士 その人の目線で綴ってもらいました。私とペットロス』
今では、「ペットは家族の一員」であるという認識が広まってきましたが、赤川先生が愛猫を看取った約30年前は、まだ一般的ではありませんでした。ペットと人の関係性や家族の定義に変化が出てきたのです。
近年、「血がつながっているから家族」といった考え方が希薄になってきている一方で、「愛していれば家族」と考えられるようになってきました。

猫だからこそ築ける関係性がペットロスをつらくする

スコティッシュフォールドの蘭くん
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
こうした近年の定義の傾向について、イギリスの社会学者アンソニー・ギデンズは、無償の愛で成り立つ「純粋な関係性」と呼んでいます。そして、こうした関係性は猫と人の間でより顕著にみられることがわかっています。人が他者と関係を結ぶとき、利害を考えたり責任を求めたりといった要素が入り込みがちですが、そういうものが一切ない関係性の極致が、人と猫の間にはあると考えられるのです。
ペットロスがつらいのは、猫と築けたこの関係性の純粋さゆえかもしれません。

また、飼い主さんは猫に対して子ども、恋人、老いた親……と愛情が変化していくため、別れの際にはいろいろなかたちの悲しみがあふれ、大きな悲しみになっていることも予想できるのです。
猫と暮らしている以上、いつかは訪れるお別れ。一日一日を大切に過ごしていきたいですね。
お話を伺った先生/赤川学先生(東京大学大学院人文社会系研究科教授・博士(社会学))
参考・写真/「ねこのきもち」2024年12月号『大学教授・歌人・イラストレーター・臨床心理士 その人の目線で綴ってもらいました。私とペットロス』
文/岩井まどか
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性がない場合もあります。
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