金沢市の中心部から車で約30分の場所にある、石川県森林公園に、この春「いしかわ動物愛護センター」が誕生しました。開所当初より、能登地方で被災した猫も多数収容しているそうです。身近で親しみやすい公園内に佇むセンターには、猫が引き取られやすくなる環境も整い、連日、多くの人が訪れています。
*記事内容はすべて2024年10月10日現在のものです。
石川の動物愛護の歴史に名を刻む、新施設
石川県のほぼ中央に位置し、金沢市に隣接する津幡町に、この4月「いしかわ動物愛護センター」(以下センター)が開所しました。公募の上で決定した愛称は「しっぽのかぞく」。「まもる・つなぐ・まなぶ」を基本コンセプトに、動物の保護や譲渡の推進、普及啓発などの活動に取り組む施設です。
センターの前身は、小松市にあった「石川県南部小動物管理指導センター」(以下、旧センター)。県内4つの保健福祉センターから収容動物が運ばれてくる殺処分施設で、昭和54年の開所当時はおもに野犬、その後は猫が増えていったそうです。しかし、時代を経て動物愛護に対する価値観が変化し、令和3年には県が「石川県動物の愛護及び管理に関する条例」を制定。たとえば、〝終生飼育〟を飼い主の責務とし、飼育が難しくなった場合も他者への譲渡に努めることと規定するほか、犬や猫を合わせて6匹以上飼養する場合は、氏名や飼育場所などを届け出る必要があるなど「人と動物の共生する社会の実現」を掲げた条例で、その理念を体現する拠点としてつくられたのがこのセンターです。石川県はここ2年間殺処分ゼロを達成していますが、新たなセンターには殺処分の設備はありません。
〝終生飼育”を強く求めるセンターでは、今までより譲渡条件
を厳しく設定。条件を満たした人は、譲渡前講習の受講、面
談を経て、猫にマイクロチップを入れた上で引き渡されます
よりよい環境を整え、譲渡を促進
「小松市にあった旧センターは老朽化が進んでいた上、譲渡施設として使うには環境が整っていませんでした」。今回、話をお聞きしたのは所長の大矢英紀さん。旧センターでも所長をつとめていました。「猫の収容数は約15匹で、譲渡希望者が訪れてもケージの中をのぞいて検討してもらうしかありませんでしたが、新センターは70匹を収容可能で、お目当ての猫と触れ合える〝マッチング室”を2室設置。誰でも気軽に足を運べるセンターとなり、開所以来、多数の譲渡希望者が訪れています」
また、館内には手術室も完備。原則として成猫は不妊手術し、繁殖リスクを排除した状態で新たな飼い主さんに引き渡せるよう仕組みづくりの最中だといいます。
「今はセンター職員が中心となって、できる限り不妊手術を行っています」
「猫マッチング室1」の様子。気に入った猫がいたらここへ連れてきて、触れ合いながら相性を確かめることができます。また、常時約3匹が居住
猫マッチング室は家庭の雰囲気を模した空間で、猫の完全室内飼育を啓発しています
石川県産材を活用した猫タワーやキャットウォークも設置
出典/「ねこのきもち」2024年12月号『猫のために何ができるのだろうか』
写真提供/いしかわ動物愛護センター
取材・文/野中ゆみ
※この記事で使用している画像は2024年12月号『猫のために何ができるのだろうか』に掲載しているものです。