猫を観察していると、反省しているようなそぶりを見せたり、何かに文句を言うように鳴いたりするなど、「もしかして周囲の状況を理解しているのでは?」と思うようなしぐさをすることがありますよね。
そこで今回は、飼い主さんから寄せられた「猫なりにいろいろ感じて行動しているのかな」と感じたエピソードを取り上げ、上智大学総合人間科学部心理学科准教授の齋藤慈子先生に、その真相を伺いました。
猫が「反省する」ことはあるのでしょうか?
「愛猫が高所に飛び乗った際、ガラス製のランタンを落として割ってしまったことがありました。それからというもの、高いところに飛び上がろうとするときは、事前に着地場所を伺うような行動を見せるように。猫も反省することはあるのでしょうか」(Tさん)
反省というより学習能力のなせるわざですね
「猫は道徳的な善悪を基準にして内省をすることはないと考えられますが、学習能力が高いため、イヤな思いを繰り返さないようにすることはあります。今回の場合は、ランタンを落としたときのことなどがイヤだったことから、同じ過ちを繰り返さないよう考えて行動しているのでしょう。反省という学習能力がなせるわざですね」(齋藤先生)
猫が「文句を言う」ことってありますか?
「電話が鳴るたびに、にゃーにゃーと文句のようなことを言いにくる。もしかしたら、電話の相手にヤキモチを焼いているのでしょうか」(Sさん)
自分に注意を向かせたいのでしょう
「猫は、電話の向こうに人がいることを理解していないので、電話の相手に嫉妬心を感じることはありません。ただ、猫は自分に注意が向いていないことはわかるので、文句を言っているというよりは『こっちを向いて』などの要求をしている可能性はあります」(齋藤先生)
猫は「順番待ちをする」のでしょうか?
「(複数飼いをしていて)1匹がゴハンを食べていると、もう1匹の猫は食べずに待機しています。また、1匹がおやつを待っているときに、もう1匹の猫が割り込んできたら譲こともあります。猫は順番待ちをするのでしょうか」(Aさん)
猫は同じ獲物を共食する習性がありません
「猫は単独で狩りをする動物なので、ほかの猫が食事をしていたり遊んでいたりすると、待機する傾向があります。猫に『順番』や『譲る』という概念はないと考えられますが、ゴハンやおもちゃを自分の“獲物”と認識していない場合、ほかの猫の“獲物”には近づかないのかもしれません」(齋藤先生)
猫も「介抱をする」ことはありますか?
「子どもが室内でケガをしたとき、真っ先に駆けつけて手をなめてあげていました。その後もずっと心配そうな、悲しげな顔をして過ごしていたのですが、猫も介抱することがあるのでしょうか」(Kさん)
人に感情移入して行動するかは不明です
「猫は人の表情から緊張した気持ちなどを感じ取ることができますが、ケガ人に感情移入して介抱する行動をとるのかどうかわかりません。猫が人をなめるのは、愛情表現、要求、あいさつなどなので、お子さんがケガをしたときに、たまたまそれが発露したのかもしれませんね」(齋藤先生)
猫は人を「だます」のでしょうか?
「子猫の頃から、水を飲んだりトイレが成功したりすると、ごほうびのおやつをあげていました。それを利用してか、水飲み場で飲んだふりをしたり、トイレに入って砂をかいたりして、おやつをもらいにくるように。猫は人をだますことがあるのでしょうか」
おやつをもらえると学習した結果の行動でしょう
「たしかに、猫が飼い主さんをだまして、おやつをもらおうとしているように思えますが、猫にだます意図はないと考えられます。これは『水飲み場に行けばおやつをもらえる』『砂をかけばおやつをもらえる』と学習した結果でしょう」(齋藤先生)
猫が見せる気になる行動には、猫なりの理由があることがわかりました。
お話を伺った先生/齋藤慈子先生(上智大学総合人間科学部心理学科准教授 「CAMP NYAN TOKYO(キャンプ ニャン トウキョウ)」メンバー)
参考/「ねこのきもち」2025年4月号『飼い主さんの目撃談、その真相は… 人間味あふれるあの行動、猫もするの?』
文/東里奈
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
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