猫がジャンプに失敗したあとに少しだけ毛づくろいをするなどのしぐさは、「転位行動」と呼ばれています。今回は、猫が転位行動をする理由やよくある行動の例、字面が似ている「転嫁行動」との違いについて、愛玩動物看護師の小野寺温先生にお話を伺いました。
猫の「転位行動」とは?
「転位行動」は、哺乳類全般に見られる葛藤や動揺を落ち着かせるための行動です。
例えば、猫が高い場所に飛び乗ろうとして失敗したときなどに、急に少しだけ毛づくろいすることがあります。これは失敗をごまかしているわけではなく、「自分のしたいことができなかった」という葛藤や動揺を、別の行動で紛らわせていると考えられています。
よく見られる転位行動
急に少しだけ毛づくろいをする
食後などに見られる腰を据えた毛づくろいとは異なり、脇腹や後ろ足などを急に少しだけなめます。
爪とぎをする
急にスイッチが入ったように雑に爪とぎを始めますが、ほんの短い時間で終わります。
(窓の外の鳥などを見て)「カカカ……」と鳴く
「捕まえたいけれど捕まえられない」という状況でのクラッキングも、転位行動のひとつです。
ほかにも、こんな転位行動も
あくびをする
猫ではまれですが、リラックスしている状況ではないのに、急にあくびをする場合があります。
寝たふりをする
複数の外猫が集まる環境下で、強い猫から威圧されたときなどに、転位行動として寝たふりをすることがあるという研究結果も報告されています。
愛猫が転位行動をしているときに気をつけることは?
転位行動は、日常の小さなストレスを自分で緩和するための健全な行動なので、やめさせる必要はありません。ただし、持続的にストレスを感じていると、同じ行動を執拗に繰り返す「常同行動」に発展する可能性もあるため、長く続くストレス原因がある場合は、取り除く工夫をしましょう。
似ているけれど違う「転嫁行動」とは
猫がイライラや不安を感じると攻撃をする「転嫁行動」は、転位行動と字面が似ているため混同されがちですが、違う行動です。
どちらも一時的なストレスから逃れるための行動である点は同じですが、転位行動は自分で完結する行動であるのに対し、転嫁行動は関係のない他者(飼い主さんや同居猫など)や物に矛先を向ける点が異なります。
よく見られる転嫁行動
飼い主さんの足を噛む
窓から外猫が見えたなどでイライラしたとき、たまたま近くを通った飼い主さんの足を噛むことでイライラを解消しようとします。
同居猫に猫パンチをする
同居猫とは無関係の原因でストレスを感じたにもかかわらず、同居猫に猫パンチをする、噛み付くなどの攻撃をしてしまいます。
物を壊す
猫ではまれですが、他者を攻撃するほか、段ボール箱やおもちゃなどの物を破壊する場合もあります。
転嫁行動が続く場合はストレスを取り除く努力を
転嫁行動は猫がイライラしたときや、不安によるプチパニック状態のときに見られます。転嫁行動が数日間にわたって継続する場合は、ストレスの原因を考えて、取り除くことが大切です。原因がわからない場合は、動物行動治療の専門家に相談しましょう。
「転位行動」と「転嫁行動」は、言葉は似ているけれど異なる行動です。この機会に、違いをしっかり理解しておきたいですね。
お話を伺った先生/小野寺温先生(帝京科学大学講師 愛玩動物看護師)
参考/「ねこのきもち」2024年5月号『「転嫁行動」との違いも解説!愛猫の失敗・我慢のあとの謎しぐさは転位行動かもしれません』
文/寺井さとこ
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性がない場合もあります。