猫が好き
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「猫の完全室内飼いはかわいそう」という誤解を解きたい 「兵庫県動物愛護センター」の活動
※記事内容は2022年6月10日現在のものです。
猫の屋内飼育の見本となる“モデルルーム”
以前から近隣の幼稚園の遠足などでも利用されていたので、「幼い頃、幼稚園の遠足で来ました」と、親が子供を連れて来ることも。
また、兵庫県では中学2年生が地域で職場体験をする「トライやる・ウィーク」があり、その受け入れもしています。
リピーターも多く、最初は猫を追いかけ回していた幼児が2回、3回と訪れるうちにだんだんと猫に配慮した行動ができるように。その姿を見て、譲渡を受ける申し込みをする親御さんもいるそうです。
地域の人々に親しまれてきたセンターがリニューアルしたのが、2019年。
「以前は犬に関する相談がほとんどでした。でも10年くらい前から猫に関する相談が増えてきたので、センターの愛護館は、猫に関連する諸問題を可視化できるような展示やモデルルームを中心に作りました」
そう話してくれたのは、兵庫県保健医療部生活衛生課の石川幸子さん。犬に比べてだいぶ増えた猫に関する相談や苦情は、「野良猫が子猫を産んだ」「エサの放置で不衛生」「鳴き声がうるさい」など。電話やメールでセンターへ寄せられます。
目指すところは、「責任をもって屋内で猫を飼ってもらうこと」ですが、地域、猫の数、関わる人によっても解決策は異なるので、場合によってはセンターの職員が相談者の元へ出向き、その場に合った解決法を探ることもあるといいます。
県内4カ所の支所にもモデルルームがオープン
「”猫は家の中で飼ってください”とお話していますが、家の中に閉じ込めてしまってはかわいそうと言う方も多い。ですが、猫の習性を考えると、屋内飼育はかわいそうではないということを実際に見て、感じていただき、猫の屋内飼育を県民の方に広めたいと思っています」(石川さん)
猫には、テレビやインターネットで見るようなおしゃれな部屋が必須なわけではありません。猫にとっての幸せは、何より安心できる飼い主さんと一緒にいられること。
「あとは猫だけのスペースを工夫してください。段ボールや空き箱、ホームセンターで木材などを調達して、手作りのモノを置いてもいいですね」と、センターの久本千絵さん。
犬を飼うときは本で勉強したり、しつけ方教室に通う方もいますが、猫の場合はノウハウ本などもあまり読まずに、なんとなく飼っている方が多い印象があると、久本さん。習性を知り、モデルルームで猫とふれあううちに、屋内でも猫が快適に過ごせると理解できるようになります。
ペットのための防災コーナーも
「阪神・淡路大震災の教訓と、東日本大震災でお手伝いに行った経験を生かした展示を心がけています」(久本さん)
展示物には避難に必要なグッズを詰めたリュックサックがあり、実際に背負うことができますが、かなりの重さ。平常時に避難に必要なグッズを準備し、避難所、避難ルート、危険な場所がないかを確認しておくことの大切さを再確認できる展示内容です。
自治会などの要望を受けて、同行避難訓練をすることもあるといいます。実際に動物を連れて、必要な荷物を持って、ルートを確認するそう。
「譲渡猫写真展」には、譲渡された猫たちの微笑ましい写真がずらり。新しい飼い主さんの元で幸せに暮らしている様子を見ることができます。
センターにやってきた猫が、新しい飼い主さんと共に幸せに
まず、譲渡可能になった猫をホームページに掲載。希望者が実際に猫と接した後で申し込みます。次に職員が簡単な聞き取りをし、面談や家庭訪問の内容を判断してから新しい飼い主さんを決定。講習会に参加してもらった後に譲渡という流れです。
初めて猫を飼う人は、心配事や困り事も出てくるので、相談はいつでも受け付け、必要があれば家庭訪問をしてアドバイスも。
猫を引き渡してから半年後、去勢・避妊手術の確認も兼ねてメールでアンケート調査を実施。返信時には写真も添付してもらいます。新しい飼い主さんには、猫を屋内で飼うメリット、猫と暮らす楽しさを地域に発信してほしいと伝えていますが、それは「センターに引き取られる猫の数を減らしていきたい」の一心から。
「かわいい猫とふれあいながら楽しく学べる啓発棟がそれぞれの地域の支所にできたので、ぜひ足を運んでいただき、屋内飼育への理解を深めていただけたらうれしいです」(石川さん)
出展/「ねこのきもち」2022年8月号『ねこのために何ができるのだろうか』
撮影/後藤さくら
構成/犬神マツコ
※この記事で使用している画像は2022年8月号『ねこのために何ができるのだろうか』に掲載しているものです。
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