2018年に大阪で誕生した「ねこから目線。」は、猫にまつわる社会問題の解決を目的にさまざまな事業を展開するチームです。日々、助けを必要とする猫のもとへ駆けつけ、経験とノウハウをもとに、猫と人がともに幸せに暮らせるよう全力を尽くしています。
*記事内容はすべて2025年8月1日現在のものです。
無理なく活動を続ける事業の仕組み
2023年の年末、前足に吹き矢のようなものが刺さった猫が見つかる事件が発生しました。ボランティアさんから相談を受けた「ねこから目線。」が猫を捕獲し、動物病院に連れて行くとともに警察へ通報。さらに、動物を虐待から守るために活動している「どうぶつ弁護団」を通じて刑事告発し、犯人の逮捕につながったといいます。「犯人の手がかりがなくなる前に捜査してもらいたいので、虐待事件は迅速さが大切です」と「ねこから目線。」代表の小池英梨子さん。
「ねこから目線。」は有償サービスを提供する株式会社。しかし虐待事件をはじめ、レスキュー案件の場合は無償で対応しているそうです。「レスキューにかかる費用は『お釣りは猫に使ってね基金』から使っています。精算の際に『お釣りは取っておいて』とおっしゃるご依頼主が多くて、基金として積み立てているんです」(小池さん)
「ねこから目線。」は、いくつか飼い猫向けのサービスも行っています。迷子猫捜し、引っ越しのサポート、脱走防止柵を設置する工務サービス、高齢者が保護猫を飼うための支援サービスです。
「保護活動などの社会貢献度が高い案件は低価格で、飼い猫の案件は高めの料金設定にさせていただいています」。そう話す小池さんは、料金設定することでボランティア活動の作業量を可視化できたかもしれない、といいます。「これまでに何度か料金改定をしてきて、このままでは会社がつぶれる! という状況に陥ったこともありますが、今は適正価格に落ち着いています。この料金設定を通じてボランティア活動の大変さを感じていただけると思いますので、少し立ち止まって考えるきっかけにしていただけたらうれしいです」
さらに「ねこから目線。」が会社であることは、若い世代にも保護活動の門戸を開けるというメリットもあります。屋外での保護活動は体力勝負。活動を長く続けていくためにも若者に参加してほしいことがありますが、体力とやる気があってもお金のない若者はなかなかボランティア活動に踏み込むことができません。「ねこから目線。」なら仕事として、本気で保護活動に携われるのです。
吹き矢(後日、自作の空気銃だったと判明)の被害に遭った猫。証拠品と診断書を揃えて警察に告発し、裁判で有罪判決が出た。猫は左前足のケガが完治したのち、第一発見者のボランティアさんに引き取られた
飼い主さんの代理で動物病院に連れて行くという依頼もある。猫が人馴れしていない、仕事が忙しい、足腰が悪いなど、その理由はさまざま
高齢者が保護猫を飼うのをサポートするサービスもあり、飼い猫のホームヘルパーサービスも用意
活動を育てながら今後、目指すこと
「猫の問題は"地産地消"で取り組むのが理想」と話す、小池さん。今は依頼があれば遠方に出張することもあるそうですが、将来的にはどの地域でも「ねこから目線。」を身近に利用できるよう、全国展開を目指しているといいます。その仲間を全国に広げていくために設けているのが「フランチャイズ」と「パートナー」という2つの加盟形態です。「フランチャイズ」とは本部のノウハウを使って独立開業した加盟店で、いわばグループ会社のような関係。一方、「パートナー」は開業まではせずに、「ねこから目線。」が受けた依頼に対応してもらう業務委託のような関係です。そして現在は、全国10拠点までに拡大。直営の大阪本部・京都・姫路(兵庫)のほか、フランチャイズは東京・岐阜・久留米(福岡)・沖縄、パートナーは山形・埼玉・鳥取です。「昨年スタートした『東京』のメインスタッフはまだ26歳。厳しい研修の数々を乗り越えて、日々全力で猫のために働いています」
そんな小池さんに、最終的な目標を聞けば「すべての猫が惜しまれて死んでいける社会」だと答えてくれました。「外で生きている猫はかわいそう、ケージの中で暮らすのもかわいそう……"かわいそう"の感じ方は人それぞれで、何が幸せかを一概に決めることはできません。けれど、少なくとも交通事故や殺処分などで人知れず命を落とす猫をなくし、すべての猫が誰かに見届けられて最期を迎えられる、そんな社会になればと願っています。その実現のために役立つサービスをもっと生み出していきたいですね」
大学構内や近隣に住む猫にTNRを行い、ゴハンやトイレなどのお世話をするサークル「立命館大学猫の会 RitsCat」の新入生向け勉強会は、OGである小池さんが講師を担当。今年は100名の学生が参加した
これまでの経験と、そこから生まれた知恵や知識を社会に還元することもミッションだと、定期的に勉強会(オンラインセミナー)を開催。写真右は、ゲストで登場したどうぶつ弁護団の理事長・細川敦史先生
講演依頼も多い小池さん。いつもよく話すのはTNRの重要性だそう。「メスは5年間で50
匹の子猫を生む場合も。だから1匹のメスをTNRすることは、50匹の子猫を保護するの
と同等の効果といえます」(小池さん)
出典/「ねこのきもち」2025年10月号『猫のために何ができるのだろうか』
写真提供/猫から目線。
取材/野中ゆみ
※この記事で使用している画像は2025年10月号『猫のために何ができるのだろうか』に掲載しているものです。