猫も人のように空気が読める!?　視線の研究でわかった猫の察知能力

視線を通じてさまざまな情報を読み取ることができる猫。では、猫はその場の空気を読むこともできるのでしょうか？

今回は、猫も人のように空気が読めるのかなど、視線研究からわかった猫の察知能力について、麻布大学特任助教の子安ひかり先生に伺いました。

猫は目の前に不明物があると飼い主さんの表情をうかがう

人はその場の「空気を読む」ことができます。慣れない状況下では、まわりの人の反応を読んで適切な行動をとろうとする……こうした心理的プロセスが猫にもあるかどうかを調査した研究があります。調査は大学の研究室で行われ、36組の猫と飼い主さんが参加しました。

研究内容

猫が初めて目にすると思われるリボンがついた扇風機について、猫がどのように反応するかを観察。次に、飼い主さんがその扇風機に対して楽しげな反応をする場合と、怖がる反応をする場合にわけて、猫の行動を記録しました。

結果、扇風機と接した猫の約8割が飼い主さんと扇風機を交互に見るという行動を示しました。また、飼い主さんが楽しげに反応する場合は扇風機に近づき、逆に怖がる反応をする場合は扇風機から離れるという行動が見られました。

【研究結果】猫は周囲の人の反応を見て、適切な行動をとろうとする

このように、新奇なものを提示されたとき、まわりの人の表情と新奇なものを交互に注視し、まわりの反応を読み取って行動することを「社会的参照」といいます。そう、猫も空気が読めるのです。

猫は人の指さしや視線だけでフードの場所を探し出せる

猫は「空気」よりも、さらに細かな人の視線や指さしを読み取れるのでしょうか？猫が視覚的な合図をどれだけ理解できるかを実験した研究があります。

研究内容

実験は、14組の猫と飼い主さんを対象に、飼い主さん宅で行われました。調査方法は次の通りです。

①2つのボウルを準備して、実験者は両方のボウルにオヤツを猫から見えないように入れる。
②どちらか一方のボウルを実験者が指さす。
③猫がどちらのボウルに行くかを観察する。

結果、試行回数の約7割～9割で、猫は実験者が指さしたボウルに行きました。同様に、指さしを視線に変更した実験もあり、こちらも試行回数の約7割で、猫は実験者が視線を向けたほうを選びました。

【研究結果】人と注意を共有する能力が猫にもある

このように、他者の視線や指さしの方向を目で追い、その方向にある物体に注意を向けることは、人でも生後6カ月～9カ月の乳幼児に見られ、社会性を獲得していくための大切な能力とされています。つまり、猫にも乳幼児と同じくらいのコミュニケーション能力があるのです。

視線を通じて愛猫との絆を育もう！

研究結果からも明らかになったように、猫は見ることや見られることを通して人と良好な関係を築いたり、意図や気持ちなどを共有したりしています。今回ご紹介した内容を参考に、視線を通じて愛猫との絆を育んでみてくださいね。

お話を伺った先生／子安ひかり先生（麻布大学獣医学部動物応用科学科特任助教ネコ研究集団「CAMP NYAN TOKYO（キャンプニャントウキョウ）」メンバー）
参考／「ねこのきもち」2025年11月号『視線の研究に絆を強めるヒントがあった！猫と飼い主さんの「見る」「見られる」でわかったこと』
文／宮下早希
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性がない場合もあります。