「猫にまたたび」は蚊除けのためだった…!?
多くの猫はまたたびが大好き♡
2021年1月、「またたびに蚊除け効果がある」というニュースが猫好きの注目を集めました。
研究を行ったのは、岩手大学農学部教授の宮崎雅雄先生と岩手大学総合科学研究所農学専攻修士2年の上野山怜子さん。
『ねこのきもち』2021年7月号の特集で、またたびに蚊除け効果があることを紹介しました。今回は、さらに詳しい研究内容や成果について教えていただきました。
ここではさらに詳しく猫のまたたび反応と蚊除けの関係について解説します。
新発見された成分!「ネペタラクトール」
「なぜ、猫はまたたびに反応するか?」という素朴な疑問から始まった今回の研究で、新たにわかったのは、猫がまたたびを与えられてクネクネ、スリスリしたりする原因のひとつに「ネペタラクトール」という成分にあるということ。
これまでの研究では、またたびに含まれる「マタタビラクトン」に反応すると言われていましたが、最新の実験によって、さらに長い時間反応を起こすネペタラクトールが発見されたのです。またたびに含まれる量も、マタタビラクトンの10倍以上でした。
ネペタラクトールには、蚊除け効果がある
次に行ったのが「猫がまたたび反応するのは蚊除けのため」という仮説にもとづいた実験です。約20匹の蚊(ヒトスジシマカ)が入ったアクリルケージに「ネペタラクトールを塗った皿」「またたびの葉をのせた皿」「空っぽの皿」を置き、10分後の蚊の動きを調べました。
すると、ネペタラクトールやまたたびの葉があるときに、多くの蚊がケージに繋いだビニール袋へ逃げ込むという結果になりました。またたびには強い防蚊作用があることが判明したのです。
「またたび反応」は、成分を体にこすり付けるための行動
さらに、猫のまたたび反応は、このネペタラクトールを体に付着させるための行為であることも判明しました。ネペタラクトールを床以外の壁や天井に付けて、猫がどのような反応をするかを実験したのです。その結果、猫は壁や天井に付いたペタラクトールには顔や頭を何度もこすり付けますが、床にネペタラクトールを塗ったときに見られた体をクネクネ、スリスリする行為は見られませんでした。つまり、猫のまたたび反応とは、ネペタラクトールを自身の体にこすり付ける行動であることが明らかになったのです。反応した猫は、顔や頭にネペタラクトールを付着させていることも確認できました。
いかがでしたか。猫がまたたびに反応すると、意図せずとも成分が体に付くことで感染症を引き起こす蚊などの害虫から身を守れるようになると考えると、なぜ猫だけがこの反応を獲得したのか、自然の摂理の不思議を思わずにはいられませんね。
参考/「ねこのきもち」2021年6月号「猫とまたたび研究」(監修/宮崎雅雄先生 岩手大学農学部教授、上野山怜子さん 岩手大学総合科学研究所農学専攻修士2年)
写真提供/宮崎雅雄先生、上野山怜子さん
文/ねこのきもち編集室