1. トップ
  2. 猫が好き
  3. 連載
  4. 「アーティストまるこ」「かばん蜃気楼」「古爪の床」の3つのお話。ねこばなしvol.7【連載】渋ネコししまるさん#170

猫が好き

UP DATE

「アーティストまるこ」「かばん蜃気楼」「古爪の床」の3つのお話。ねこばなしvol.7【連載】渋ネコししまるさん#170

『アーティストまるこ』

 まるこはトイレの砂を掻いた後、さらに壁も掻くクセがある。そこで僕は、使わなくなった電子メモ帳を壁に貼り付けた。

 数日後。電子メモ帳をみると、思惑通りの作品ができていた。爪の軌跡が幾重にも重なり、美しい模様が描かれていたのだ!

 僕は自慢げに家族に見せると、息子は言った。
「凄いキレイ!でもトイレ後の手はキタナイね」
 まるこの苦悩や開放感が表現されたこの作品は、まだ手つかずで壁にかかっている。

『かばん蜃気楼』

 妻はかばんを壁際に寄せておくクセがある。外出が続いた日は、かばん数個がすみっこで暮らしていたりするのだ。

 ししまるはそんな場所を放っておくはずもなく、深夜、かばんの上に乗って寝てしまった。
「使ったから洗濯をするのでは無い。ししまるがかばんをのしにのしたから洗濯をするのだ」
と冗談のような事を言いながら妻は、かばんを洗濯機に入れた。

 その夜、ししまるはかばんがあった場所で寝転んでいた。
 “ここに何かオアシスがあったような?”
 ししまるはそんな表情をしていたので、僕はよしよしとなでた。

『古爪の床』

 ある夜のこと、ししまるの爪を切った。すると床が、切ったときに剥がれ落ちた爪だらけになった。ししまるは爪とぎをしないため、爪を切るたびに新しい爪と共に古い爪の層がボロボロと落ちるのだ。

 爪切りが終わりるとししまるは、古爪の床を散らしながら箱へと戻っていった。ししまるの身体にも爪は付き、ししまるも床も白雲母のように輝いて見え、ちょっと綺麗だった。

 次の日の朝。掃除しきれなかった爪が僕の足に刺さり目が覚めた。爪はやっぱりただの爪だった。

Taco(たこ)プロフィール

東京在住の漫画家・イラストレーター・キャラクタデザイナー。びゅうたびライターとしても活動中。
「ちいさな猫を召喚できたなら」「3匹のちいさな猫を召喚できたなら」「ぷっちねこ。」(徳間書店)など、好評発売中。「ちいさな猫を召喚できたなら」は重版後、中国版・韓国版・インドネシア版も発売。
現在、Web上では不定期に新作漫画を更新中。詳しくは以下のSNSへ。
・Instagram
 Tacoのインスタ: @tacos_cat
 ししまるのインスタ: @emonemon
・Twitter@taco_emonemon
CATEGORY   猫が好き

UP DATE

関連するキーワード一覧

人気テーマ

あわせて読みたい!
「猫が好き」の新着記事

新着記事をもっと見る