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「あのとき、ああすれば良かった…」戻らぬ時の後悔のお話【渋ネコししまるさん】#8
ししまるは、初めてのお風呂場に興味津々でした。
そして私は、シャワーの温度を確かめるため、ししまるにお湯がかからないようにしながらシャワー出しました。
今思うと、ししまるに対して、気づかいが全くできていなかったな…と思います。
「お湯がかからなければ大丈夫だ」と勝手に思い込み、音については全く油断していました。
案の定、ししまるはシャワーが壁にぶつかる音に驚いて、飛んで出て行ってしまいました。
そしてその後も、シャワーの音は出さないように桶にお湯をため、静かに入れようとしたのですが、「お風呂=怖い」の先入観がぬぐえず、ししまるは暴れて、逃げて、隅っこへ隠れてしまいました。
その時、私も意地になってしまって、無理やりお風呂へ連れていき、怖い思いをさせたままお風呂に入れてしまったので、ししまるにとってこの時の入浴が、恐怖体験になってしまい、それ以後は、脱衣所にすら近づかなくなってしまいました…。
拭くタイプのシャンプーを使うこともありましたが、移動の際におもらしをしてしまったり、吐いたものを踏んでしまったりと、お風呂に入れないといけない時も多かったので、「お風呂に入れるのか…」と、こちらもちょっとした恐怖を感じるほどになりました。
「何とか良い思い出にすり替わってほしい」と、お風呂に入れる際におやつをあげてみたり、おもちゃをお風呂場にもっていったりと、あれこれ試してみましたが、結果は全くダメ。
結局、今はししまるを両手に抱えて、私も服を着たまま一緒に浴槽に入るのが、一番いいということになりました。
本当は、雪国の温泉に入るお猿のように、一緒にのんびりとお風呂にはいれたらうれしいのですが、現実は、お互い地獄風呂です。
もし最初の入浴の時、突然のシャワーで驚かせることなく、ししまるにとって快適な方法で入浴させることができていたなら…と、今でも後悔しています。
ちなみに、入浴中は歌舞伎の隈取のような形相で必死に逃げようとするししまるですが、終わった後はけろりとしています。
私たちは早朝に出ていき、義姉は夜遅くに家に着いたそうです。
ししまると私は家で一緒にいることが多いので、ししまるにとっては、迎え入れてから初めて長い間だれもいない家で、ひとりで過ごす初めての長い時間だったと思います。
義姉がお風呂からあがったとき、なんとししまるは、お風呂の入り口で待っていたらしいです。
しかも肩肘をついて、リラックスしたような様子ですわり、義姉をみていたそうです。
私たちが家にいる時は、脱衣所にすら近づかなかったししまるですが、人恋しさからか、こんなこともあるんだな!と驚きました。
その後は相変わらず、脱衣所には近づきません。
きっとあの時は、私たちに会いたい寂しさを、義姉にかまってもらうことで紛らわしていたに違いない…と、勝手な想像で心をホカホカにする私たちでした。
登場人物の紹介
Taco(たこ)プロフィール
「ちいさな猫を召喚できたなら」「3匹のちいさな猫を召喚できたなら」「ぷっちねこ。」(徳間書店)など、好評発売中。「ちいさな猫を召喚できたなら」は重版後、韓国版も発売。今年は中国版とインドネシア版が出版予定。
現在、Web上では不定期に新作漫画を更新中。詳しくは以下のSNSへ。
Tacoのインスタ: @tacos_cat
ししまるのインスタ: @emonemon
・Twitter:@taco_emonemon
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