猫の死亡原因で最も多いのが、腎臓病。腎臓病で苦しむ猫と飼い主さんたちのために、東京大学のチームが腎臓病の特効薬の開発に尽力しています。
「ねこのきもち」では、2021年4月号特集で医学系研究科教授・宮崎徹先生にお話を伺いました。
東大チームが腎臓病を治療する特効薬を開発
東京大学大学院 医学系研究科教授の宮崎徹先生は、ヒトやマウスなど動物の血液中に存在する「AIM」という遺伝子を20年前に発見して以来、このタンパク質の研究に打ち込んできました。
2016年には、猫の腎臓病とAIMとの関与を明らかにした論文を発表。ネコ科の動物はAIMをもっているものの、ほかの動物のようにうまく機能しない状態で存在していることを明らかにし、それが腎臓病が起きやすい一因だとしています。
腎臓病とは、尿の通り道に死んだ細胞がたまっていき、最終的には「排水管が詰まる」ようにして腎臓が壊れる病気。血液中に存在するAIMが、その詰まりを解消する働きをするというのだそうです。
「厳密にいうと、AIMは、血液中の問題の箇所に行って『ここが詰まっているよ』と知らせる働きをします。AIMを目印にマクロファージなどの細胞がやってきて死んだ細胞を食べてくれます」(宮崎先生)
宮崎先生は、AIMを活かした治療薬を開発するために、2017年にベンチャー企業を設立しました。治療薬は、予防的に投与するほか、腎臓病の進行を抑えることにも効果を発揮すると期待されており、宮崎先生によれば猫の寿命が15歳から30歳に延びることも不可能ではないといいます。
コロナ禍でAIMの治療薬の開発がストップ。全国から支援が
治験薬製造のための開発をほぼ終了し、来年までの商品化を目指していたものの、思いもよらない事態が起こります。新型コロナウイルスの影響によって、治験薬の製造の前で中断せざるをえなくなってしまったのです。
宮崎先生の研究内容や現状について、今年の7月に大手通信社がインターネット上で配信したところ、全国の猫の飼い主さんや猫が好きな人から、東大に支援をしたいという問い合わせが殺到する事態に。
東京大学基金宛に多額の寄付があり、2日余りで寄付金額は3千万円にものぼったといいます。
東京大学の公式ホームページで、宮崎先生は次のように綴っています。
腎臓病に苦しむ猫たちのために、長い年月をかけて治療薬の開発に尽力している宮崎先生。支援に関する詳細は、
東京大学基金の公式ホームページをご覧ください。
参考/「ねこのきもち」2021年4月号『あらゆる分野でトップクラスが大研究! キャッと驚く東大猫学』
東京大学ホームページ
『腎臓の働きを改善する遺伝子「AIM」でネコの寿命が2倍に!? | 広報誌「淡青」37号より』
東京大学ホームページ
『宮崎 徹 教授による猫の腎臓病治療薬研究へのご寄付について』
文/sorami