猫の歯は病気にかかりやすく、放置すると重症化して強い痛みを感じるほか、口内の細菌が血液にのって全身を巡り、悪影響を及ぼすことも。愛猫に健康で長生きしてもらうためには、毎日のデンタルケアが欠かせません。
そこで今回は、猫のデンタルケアをする際に知っておきたい、猫の歯の構造や歯磨きのポイント、慣れさせる手順などについて、獣医師の藤田桂一先生に解説していただきます。
まずは猫の歯の構造を知ろう
参考・写真/「ねこのきもち」2025年11月号『構造・役割・病気・お手入れ まとめて理解することで、知識深まる! 猫の歯のすべて』
猫の歯は肉食動物の特徴を備えており、構造・役割ともに人の歯と大きく異なります。
猫の歯の構造と役割
- 切歯(せっし):上下に6本ずつ生えている小さな歯(前歯)。毛づくろいのときに役立ちます。
- 犬歯(けんし):上下2本ずつ生えている長い牙。獲物を捕らえる際に使われます。
- 前臼歯(ぜんきゅうし):犬歯の後ろに上6本、下4本生えている鋭い歯。食物を噛み切る際に使われます。
- 後臼歯(こうきゅうし):上下に2本ずつ生えている奥歯。下の後臼歯は食物を噛み切る際に使われますが、上の後臼歯は小さく、ほとんど役割を果たしません。
猫の歯磨き成功のポイント
猫の健康のために歯磨きが必要とわかっていても、「ハードルが高い」などと諦めている飼い主さんも。猫の歯磨きを成功させるには、以下のポイントを意識してみましょう。
歯磨き成功のポイント
- 飼い主さんが「歯磨きするぞ」と力むと、猫も何事かと怖がってしまいます。飼い主さんもリラックスしましょう。
- 猫を長時間拘束するのは避け、なるべく短時間で済ませましょう。ほんの短時間でパパッと進め、猫が嫌がる前にやめてください。
- 1回ですべての歯を磨かなくてもOK。「今日は右上の奥歯だけ」など、1週間ですべての歯を磨く気持ちで進めましょう。
- 猫が好むデンタルペーストを使うほか、歯磨き後におやつを与えるなど「歯磨き=おやつタイム」と印象づけてみましょう。
猫を歯磨きに慣れさせる手順
猫を歯磨きに慣れさせる手順は、次のとおりです。なお、歯石がついている、歯肉に赤みや出血がある、口を触ると痛がるようなそぶりをする場合は、歯磨きで強い痛みを感じている可能性も。事前に動物病院で相談してみましょう。
STEP1 口まわりへのタッチに慣れさせる
参考・写真/「ねこのきもち」2025年11月号『構造・役割・病気・お手入れ まとめて理解することで、知識深まる! 猫の歯のすべて』
口まわりをやさしくなでながら、指を口内に滑り込ませたり、唇をめくって歯を触ったりしてみましょう。触らせてくれたら、ほめておやつを与えて。
STEP2 綿棒を使って異物に慣れさせる
参考・写真/「ねこのきもち」2025年11月号『構造・役割・病気・お手入れ まとめて理解することで、知識深まる! 猫の歯のすべて』
触れられることに慣れてきたら、綿棒を使って歯磨きを。綿棒を水やデンタルペーストで湿らせ、先を細かく動かすようにして1本ずつ磨きます。
STEP3 歯ブラシに慣れさせる
参考・写真/「ねこのきもち」2025年11月号『構造・役割・病気・お手入れ まとめて理解することで、知識深まる! 猫の歯のすべて』
ヘッドが小さくやわらかい猫用の歯ブラシを使い、水でぬらしてからデンタルペーストをつけて、ニオイをかがせたり、なめさせたりしてみましょう。
STEP4 歯ブラシでの歯磨きにトライ
参考・写真/「ねこのきもち」2025年11月号『構造・役割・病気・お手入れ まとめて理解することで、知識深まる! 猫の歯のすべて』
歯垢がつきやすい臼歯(奥歯)からスタート。手で唇を上に引き上げるようにして、歯と歯肉の境目に歯ブラシを45度の角度で当て、横に小刻みに動かして磨きます。
犬歯・切歯も磨く
参考・写真/「ねこのきもち」2025年11月号『構造・役割・病気・お手入れ まとめて理解することで、知識深まる! 猫の歯のすべて』
犬歯は根元から先端まで磨くように、歯ブラシを縦にも動かしましょう。
ご紹介したように、ステップを踏んで少しずつ進めれば、徐々に歯磨きを受け入れてくれる猫もいます。たとえ過去に挫折した経験があっても、「何才からでも慣れさせられる」と気持ちを切り替え、チャレンジしてみることが大切です。
お話を伺った先生/藤田桂一先生(フジタ動物病院院長 獣医学博士)
参考・写真/「ねこのきもち」2025年11月号『構造・役割・病気・お手入れ まとめて理解することで、知識深まる! 猫の歯のすべて』
文/長谷部サチ
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性がない場合もあります。