「猫は魚介類が好き」というイメージをもつ方もいるかもしれませんが、実は猫にとってイカ・タコ・カニは危険な食べ物のひとつとされているのをご存じでしょうか? 今回は、この3つの食材がなぜ猫にとって危険なのか、獣医師の岡本りさ先生に詳しくお話を伺いました。
イカを猫に与えると危険な理由
生のイカには、ビタミンB1(チアミン)を分解する作用のある、チアミナーゼという酵素が含まれています。
ビタミンB1は、生物が生きていくのに重要なエネルギー源となるもの。完全肉食動物といわれる猫が必要とするビタミンB1の量は人の約4倍ともいわれ、チアミナーゼによってビタミンB1が分解されてしまうと、猫はビタミンB1欠乏症という病気を発症しやすくなるので注意が必要です。
ビタミンB1欠乏症とは
猫がビタミンB1欠乏症を引き起こすと、以下のような症状があらわれます。
- 初期症状:食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢など
- 進行症状:めまい、ふらつき、筋力の低下など
- 重篤症状:けいれん、昏睡状態など
消化不良や食中毒にも注意!
なお、イカは独特の歯応えがあるため、猫があまり噛まずに飲み込んでしまうと、消化不良を起こす可能性があるほか、イカの内蔵に寄生している寄生虫アニサキスによる食中毒の心配も。このようなことからも、猫にイカを与えるのは危険と考えられているのです。
タコを猫に与えると危険な理由
生のタコにもチアミナーゼが含まれています。そのため、猫にタコの刺身などを少量でも与えると、ビタミンB1欠乏症を引き起こして、めまいやふらつきなどの神経症状があらわれるおそれが。最悪の場合、死に至ることもあるので、猫に生のタコを与えるのはやめましょう。
加熱してもタコは危険な食材
チアミナーゼは、加熱するとその働きが失われるといわれていますが、ゆでて硬くなったタコを猫が食べると、消化不良を起こす可能性も。たこ焼きに入っているような大きさのタコでも、与えたり盗み食いが起こったりしないように注意してください。
カニを猫に与えると危険な理由
イカやタコと同様、カニにもチアミナーゼが含まれていますので、猫に与えないよう十分注意が必要です。
カニカマなどの加工食品も猫に与えないで
カニカマの主な原料は、かまぼこやちくわなどと同じスケソウダラなどの魚のすり身ですが、カニの身やカニエキスを加えて本物のカニに近い風味を出しているので、猫にとって安全とはいえません。
また、カニカマはさまざまな調味料や添加物が加えられ、人がおいしく食べられるように加工された食品です。猫にとって人の食べ物は塩分などが多すぎるおそれがあるので、このような点からもカニカマは猫に与えないようにしましょう。
人にとって身近な食材のなかには、猫にとって危険なものがたくさんあります。むやみに与えないよう注意してください。
(監修:ねこのきもち獣医師相談室 獣医師・岡本りさ先生)
取材・文/長谷部サチ
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※記事の内容は2024年10月時点の情報です。