猫と暮らす
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【獣医師監修】猫に生のイカは絶対にNG。腰を抜かすって本当? 食べてしまったときの症状と対処方法
猫に生のイカを与えてはいけません。生のイカに含まれるチアミナーゼが、猫の健康に大きな被害を及ぼすからです。ほかにも猫にイカを与えないほうがよい理由はあります。その理由と誤食してしまったときの対処法を紹介するとともに、「イカを食べると猫が腰を抜かす」の真偽についても解説します。

佐野 忠士 先生
酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
猫は生のイカを食べてはいけない。命の危険あり
とくに生のイカは絶対に猫に与えてはいけません。生のイカには「ビタミンB1(チアミン)」を分解する作用を持つ「チアミナーゼ」という酵素が含まれているからです。
ビタミンB1は、生物が生きていくのに重要なエネルギー源となるもの。完全肉食動物といわれる猫が必要とするビタミンB1の量は、人の約4倍といわれています。少しでもチアミナーゼによってビタミンB1が壊されてしまうと、「ビタミンB1欠乏症」を発症しやすくなり、猫の健康に大きな悪影響が出てしまうのです。
また、イカは独特の歯応えがあるため、猫があまり噛まずに飲み込んでしまい、その結果、消化不良を起こす可能性もあります。さらには、イカの内蔵に寄生している寄生虫アニサキスによる食中毒も危惧され、ビタミンB1欠乏症以外にもさまざまなデメリットがあることを覚えておかなければなりません。
猫にイカ、とくに生のイカを与えるのは絶対にやめましょう。
猫がイカを食べたときに見られる症状|悪心、嘔吐、ふらつき、けいれん、苦しそう
チアミン欠乏症および中毒(アレルギー)が考えられる症状
〈初期症状〉
食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、など
〈進行症状〉
めまい、ふらつき、筋力の低下、など
〈重篤症状〉
けいれん、昏睡状態、など
◆脚気の場合(最近は「多発神経炎」と診断されることが多い)
背中や四肢の筋肉の萎縮、立ち上がれない、など
◆アニサキス症の場合
胃のけいれん(お腹を床につけて苦しそう、動かない)、嘔吐を繰り返すなど
症状が出るまでの時間
猫がイカを食べてしまった場合の対処方法
猫がイカを食べてしまったとき、誤食してしまった際の対処法を覚えておきましょう。
様子を見て異常があれば病院へ
愛猫が生のイカを食べて何らかの症状が現れている場合や、加熱したイカでも大量に食べてしまった場合は、すぐに動物病院を受診することをおすすめします。自己判断で無理やり食べたものを吐かせようとするのは、大変危険です。催吐処置は医療行為なので、飼い主さんは絶対にしないでください。
なお、病院に行く際には、以下の内容をメモしていくと診察や処置がスムーズに進みます。
- 誤飲・誤食した時間(何時間前か)
- 誤飲・誤食したイカの内容(生か、加熱か)
- 誤飲・誤食した(と思われる)おおよその量
まずは、飼い主さんがパニックにならないようにしましょう。万が一のときでも落ち着いて行動できるよう、深夜でも受診できる動物病院を探しておくことをおすすめします。
病院での治療方法
◇血液検査、超音波検査など
◇催吐処置・摘出処置
◇点滴・投薬
猫がイカを食べてはいけない理由|チアミナーゼと寄生虫アニサキスに厳重注意
チアミナーゼによるビタミンB欠乏症、猫が腰を抜かす原因にも
ビタミンB1は、細胞が活動するためのエネルギー生成に必要で、神経系の機能を正常に保つためにも必要不可欠な栄養素です。欠乏すると、食欲低下や嘔吐、目の瞳孔が開くといった症状のほか、運動失調、体の麻痺やけいれん、てんかん発作などの神経症状や心筋の肥大なども見られるようになります。
とくにわかりやすいのが、ふらついて上手に歩けないという症状です。「猫はイカを食べると腰を抜かす」というのは、こうしたビタミンB1欠乏症の症状から端を発した「いい伝え」であると考えられます。
寄生虫アニサキスで重篤な食中毒も
そうした苦しみを愛猫に与えないためにも、生のイカは猫に与えないでください。
ちなみに、タコはイカとは違い、アニサキスを含む餌がいない海底に住んでいるため、アニサキスが寄生している可能性は低いといわれています。
加熱したイカは大丈夫?
そうした理由から、「生のイカはダメでも加熱したイカなら与えても大丈夫」という情報もあります。
たしかに、イカはタンパク質が豊富な食べ物なので、安全なイカなら食べさせたいと考える飼い主さんもいるかもしれません。しかしながら、加熱や冷凍によって完全に猫に有害なものがなくなったどうか、見た目ではわかりません。
さらに、イカは弾力のある独特の歯応えがあり、猫がよく噛まずに丸飲みしてしまえば、胃腸に負担がかかり、消化不良を起こす心配もあります。
完全に加熱、冷凍処理をしたイカなら、少量であれば猫に与えても大きな問題はありませんが、栄養補給のために積極的に与えたい食べ物ではないことは理解しておきましょう。
スルメ(あたりめ)、イカの燻製は大丈夫?
ほかにも「さきイカ」「酢イカ」など、イカを加工した食品はいろいろあります。人間のおつまみやおやつ用に作られた食品には、イカの成分だけでなく、塩分や糖分などの調味料が加えてある場合が多いので、やはり猫に与えるのはNGです。
猫のイカ誤飲を防ぐ方法
また、屋外のバケツなどに生ゴミを置いておく場合は、飼い猫以外の猫が中をあさったりしないよう、きちんと管理をしておきましょう。
猫に生のイカは絶対にNG。愛猫の健康を守るならイカはすべて与えないほうが安心
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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