1. トップ
  2. 猫と暮らす
  3. 健康・病気
  4. 猫が食べると危険な食べ物
  5. 猫にカニを与えていけない理由を獣医師が解説 加熱すればOK?

猫と暮らす

UP DATE

猫にカニを与えていけない理由を獣医師が解説 加熱すればOK?

猫にカニを与えてはいけません。カニにはイカと同じように猫の健康を害する恐れのある成分が含まれているほか、アレルギー源にもなりやすい食べ物です。猫がカニを食べてしまったときに考えられる症状と対処法を紹介するとともに、猫にとってなぜカニがNGなのかを解説します。

佐野 忠士 先生

猫はカニを食べてはいけない。命の危険あり

大きな赤いカムチャツカカニの爪ファランクス脚触手、氷の上に横たわって、チェリー、レモンとライムのスライスは、周りにスライスされ、新鮮なハーブ、光、上側のビューで、周りに横�
Sergey Kurganskiy/gettyimages
カニはイカと同様、猫に与えてはいけない魚介類のひとつです。
カニやイカに含まれる「チアミナーゼ」という成分には、猫にとって重要な栄養素であるビタミンB1を破壊してしまう作用があり、猫の「ビタミンB1欠乏症」を引き起こす恐れがあるからです。

カニが食卓にのぼる機会はそう多くないとしても、カニの成分を使った加工食品は比較的身近にあります。
たとえば「カニカマ」。含まれるカニの成分が少量であったとしても、普段から頻繁に食べていたら、ビタミンB欠乏症になる可能性は高くなります。
飼い主さんが食べているのを愛猫がほしがっても、安易に与えるのはやめましょう。

まずは、猫にとって危険なカニの栄養成分とそれを摂取することによる弊害、さらには猫がカニを食べてしまった場合の対処法をしっかり覚えておきましょう。

猫がカニを食べたときに見られる症状|まっすぐに歩けない、けいれん、下痢、嘔吐など

キャットタワーの上から見下ろしている茶色のトラ猫
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
猫がカニを食べたことで現れる症状は以下の通りです。

ビタミンB1欠乏症(チアミン欠乏症)が考えられる症状

〈初期症状〉
食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、など

〈進行症状〉
めまい、ふらつき、筋力の低下、など

〈重篤症状〉
けいれん、昏睡状態、など

脚気(最近は「多発神経炎」と診断されることが多い)に見られる「背中や四肢の筋肉の萎縮」「立ち上がれない」などの症状も、ビタミンB1の不足によって起こる症状です。

症状が出るまでの時間

食べて短時間で症状が現れる場合もあれば、数時間後の場合もあり、食べたカニの状態や量、猫の体調や体質によっても違いがあり、一概にどのくらいで症状が現れるとはいえません。

猫がカニを食べてしまった場合の対処方法

斜め上を見上げている首にピンクのリボンをまいた三毛猫
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
飼い主さんがカニを与えなくても、目を離したすきに食卓にあったカニやカニカマを食べてしまうケースも考えられます。猫がカニを食べてしまったとき、誤食してしまった際の対処法を覚えておきましょう。

様子を見て普段と違う症状が見られたら病院へ

猫が少しカニを食べてしまったとしても、すぐに重篤な状態に陥るわけではないので、慌てて病院に駆け込まなくてもよいでしょう。しばらく猫の様子を観察し、普段と違う症状があれば獣医師の診察を受けてください。

愛猫がカニを食べて明らかになんらかの症状が現れている場合や、大量に食べてしまった(と思われる)場合は、すぐに動物病院を受診することをおすすめします。自己判断で無理やり食べたものを吐かせようとするのは、たいへん危険です。催吐処置は医療行為なので、飼い主さんは絶対にしないでください。

なお、病院に行く際には、以下の内容をメモしていくと診察や処置がスムーズに進みます。

  • 誤飲・誤食した時間(何時間前か)

  • 誤飲・誤食したカニの内容(生か、加熱か、身だけか殻も食べたか、など)

  • 誤飲・誤食した(と思われる)おおよその量


まずは、飼い主さんがパニックにならないことが大切です。万が一のときでも落ち着いて行動できるよう、深夜でも受診できる動物病院を探しておくことをおすすめします。

病院での治療方法

動物病院では、症状によって以下のような治療をします。

◇血中ビタミン濃度の測定

カニを食べたことによる影響を調べます。

◇点滴・投薬

 ビタミンB1欠乏症の症状が認められる場合は、ビタミンBを投与するための注射や点滴を行い、症状の改善を図ります。

◇対症療法

食欲低下や嘔吐、けいれんなどの症状を改善するために点滴や注射などによって必要な薬を投与します。

◇催吐処置・摘出処置

猫が大量にカニを食べてしまい、まだ胃の中に残っていると考えられる場合は、胃の中身を吐かせる「催吐処置」を行う場合があります。猫が嘔吐を催しやすい薬剤を使い、体に負担をかけないよう注意しながら行われますが、猫が吐ききれない場合には全身麻酔をかけて内視鏡や開腹手術によって取り出すこともあります。

猫がカニを食べてはいけない理由|チアミナーゼと殻、甲殻アレルギー、食物アレルギー

フローリングの床にあおむけに寝転がって上を見ているブリティッシュショートヘアー
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
猫がカニを食べてはいけない理由について解説します。

チアミナーゼによるビタミンB欠乏症

カニには、ビタミンB1を分解し壊してしまう「チアミナーゼ」という酵素が含まれています。
そもそも、ビタミンBは、細胞が活動するためのエネルギー生成に必要で、神経系の機能を正常に保つためにも必要不可欠なものです。欠乏すると、食欲低下や嘔吐、目の瞳孔が開くといった症状のほか、運動失調、体の麻痺やけいれん、てんかん発作などの神経症状や心筋の肥大なども見られるようになります。

猫が必要とするビタミンBの量は人の約4倍で、犬と比較しても約2.5倍必要であるとされています。雑食性のある犬と違い、猫は完全肉食系の動物なので、つねに獲物を捕食してエネルギーを補給する必要があるため、犬より多いビタミンBを必要とするのです。

普段からビタミンB1の必要量を含む栄養バランスの取れたキャットフードを食べていても、カニを食べることで摂取したビタミンBが損なわれたら意味がありません。「ほんの少しなら」と安易に考えず、猫にはカニを与えないようにしてください。

なお、チアミナーゼは加熱することで効力を失うといわれていますが、完全に作用しない状態になっているかどうか見た目では判断できないため、安全を期すためにも加熱したカニも猫に与えないほうが安心です。

固い殻が内臓を傷つけてしまう

カニの殻は非常に固く、猫が食べてしまったら食道や内臓を傷つける恐れがあります。猫が殻をかじって遊ばないよう、飼い主さんが食べたあとの殻の始末には気をつけてください。目を離したすきに愛猫が殻を捨てたゴミ箱をあさったりしないよう、きちんと処理しましょう。

甲殻アレルギー・食物アレルギー

人間に甲殻類アレルギーがあるように、カニやイカ、エビなどの甲殻類に対してアレルギーを起こす体質をもっている猫がいます。

さらに、アレルギーという観点からいえば、カニに豊富に含まれるタンパク質にも注意が必要です。なぜなら、食物アレルギーは、タンパク質に免疫機能が過剰反応する現象だからです。甲殻類にアレルギー反応を示さなくても、カニのタンパク質に対してアレルギー反応を示す猫も稀にいるので、今までになんらかの食べ物アレルギー反応があった猫はとくに注意が必要です。

危険な量の目安

個体差があるので、危険な量の明確な目安はありません。カニは微量でも猫にとって危険な食べ物であると覚えておきましょう。

「カニカマ」は与えても大丈夫?

手軽にカニの見た目と味を楽しめることから、一般の家庭でもおなじみになった「カニカマ」。そのおもな原料は、かまぼこやちくわなどと同じスケソウダラなどの魚のすり身です。しかしながら、「カニカマ」という名前の通り、カニの身やカニエキスを加えて本物のカニに近い風味を出しているので、猫にとって安全とはいえません。

さらに、カニカマにはさまざまな調味料や添加物が加えられています。カニカマは人間用に味加工された食品なので、猫に与えないようにしましょう。

猫のカニ誤飲を防ぐ方法

食器棚の上に載ってこちらをじっと見ている目がブルーのシャム
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
愛猫がカニを口にしないためには、カニやカニおよびカニカマを使った料理を食卓などに放置しないことが肝心です。
飼い主さんが猫にカニを与えなくても、目を離したすきにテーブルの上やキッチンにあるカニやカニ料理を食べてしまうかもしれないからです。

ちなみにペット用にカニ風味のおやつも市販されていますが、なかにはカニ肉を加えてあるものも。購入する場合は、袋に記載されている原材料をよくチェックし、カニ肉やカニエキスが使われているものは避けましょう。

猫にカニはNG。カニカマなどカニエキスが入っている食品にも気をつけて

猫に大切な栄養素を破壊してしまう成分を含むカニ。愛猫からじっと見つめられたら、ついお裾分けしてあげたくなるかもしれませんが、少量でも与えてはいけません。人間が食べてメリットのある食べ物でも、猫の体にはよくない食べ物があります。猫にとってカニは健康を損ねる原因になりうる魚介類のひとつです。人間用の加工食品であるカニカマもNGと覚えておきましょう。
猫には与えてはいけない食べ物があります。確認しておきましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
CATEGORY   猫と暮らす

UP DATE

関連するキーワード一覧

人気テーマ

あわせて読みたい!
「猫と暮らす」の新着記事

新着記事をもっと見る