愛猫を亡くして深い悲しみに陥ったとき、そばにいてくれた人の“寄り添ってくれた気持ち”で、心が軽くなったという経験者は少なくありません。
では、もし今あなたの大切な人がペットロスに陥ってしまったら、何をしてあげたらよいのでしょうか――。この記事では、ペットロスの人への寄り添い方などについて、心理の専門家・濱野佐代子先生に伺いました。
「ペットロスの人の心を軽くする」と断言できる言葉はない
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「ペットロスの人の心を軽くする」と断言できる言葉はありません。
ペットロスを経験した人が「救われた」と話す言葉も、受け止める心境や信頼関係、タイミングがあったからこそ。逆に言えば、同じ言葉でもかえって辛さを深めてしまうことがあるのです。
このことから知っておいてほしいのは、「あなたがペットロスに陥ったとき、ほとんどの人は慰めようと思って言葉をかけてくれている」こと、そして「自分の言葉がペットロスの人の負担になることもある」ということ。
大切な人の悲しみに寄り添うときは、むやみに働きかけず、相手が話すまで待ち、状況を見て言葉をかけましょう。
気持ちを共有したり、理解してもらったりすることが悲しみを和らげる
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言葉はなくとも、そっとそばにいてくれる人、何気なく気にかけてくれる人の存在は、深い悲しみの中にいる人にとって、とても大きな支えになります。
ペットロスを和らげる方法として、「話すこと」や「共感してもらうこと」はとても有効とされています。たとえば、信頼する人に愛猫の話を聞いてもらったり、「うんうん」と耳を傾けてもらったりする時間は、気持ちの整理にもつながるのです。
とくに、愛猫のことを生前からよく知っているような親しい相手に話を聞いてもらうことは、悲しみを分かち合うことができ、心の支えになるでしょう。
「気づかいを形にしたプレゼント」は心を癒やす一助に
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悲しみに暮れる人を思って贈られたものは、言葉や寄り添いと同じように、ペットロスの人の支えになります。
そして、言葉や気づかいと同様、生前から愛猫を知る人や同じ経験をした人からの贈り物は、心に響きやすいもの。愛猫のために飾れるものや、それを通して愛猫を思い出せるものなど、その贈り物を選んでくれた思いも、癒やしになるでしょう。
ただし、「相手の負担になるもの」には注意が必要です。また、まだ相手の悲しみが深く、受け入れがたい時期に送ると、悲しみを強めてしまうこともあるかもしれません。
「悲しみのプロセス」に合わせた、慎重な寄り添い方をすることが大切
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ペットロスには「ショック」→「悲嘆」→「回復」と主に3つのフェーズがあり、「悲嘆」と「回復」は行き来しながら適応していきます。相手が今どのフェーズにいるのかを意識し、その心情に合った接し方をすることで、より相手に届く寄り添い方ができるでしょう。
フェーズ(1)ショック
愛猫を亡くした直後~数日、長い場合は数週間「ショック」のフェーズが続きます。愛猫の死に対して現実感がなかったり、何も感じなかったり、否認したりするよう気持ちになることが。
寄り添いのヒント
ただ黙ってそばにいる、体調を気づかうといったサポートをするとよいでしょう。「頑張って」といった気持ちを急かす言葉や、「元気出して」などの励ましの言葉をかけるのは、注意が必要といえます。
フェーズ(2)悲嘆
「ショック」のフェーズの次は、「悲嘆」というフェーズに入ります。ここでは、悲しみがあふれたり、後悔や自責、寂しさを感じたりするほか、気力が出なくなることも。こうした状態は、数週間~数カ月、1年、長いと数年続くこともあるようです。
寄り添いのヒント
気持ちを否定せずに話を聞く、その人の感情を受け止め、共感の姿勢をもって接するとよいでしょう。アドバイスや答えを出そうとしたり、無理に前向きな方向に誘導したりするのは、気をつけたいところです。
フェーズ(3)回復
「回復」のフェーズに入ると、少しずつ日常を取り戻し、愛猫とのあたたかな思い出や、絆が継続していることに気が付きます。ただし、「悲嘆」のフェーズと行き来するなど、「回復」のフェーズは人によって時期も進み方もさまざまです。
寄り添いのヒント
一緒に思い出話をしたり、愛猫について語ることを尊重してあげたりしましょう。「もう忘れたら?」と気持ちの終わりを決めつけたり、自分なりの回復法を押し付けたりするのは注意が必要です。
あなた自身が愛猫を失った経験があっても、大切な人がペットロスで抱える悲しみを完全に理解することはできません。しかし、その寄り添う気持ちはきっと支えになります。タイミングや方法を慎重に見極め、あなたの思いを届けられるとよいですね。
お話を伺った先生/濱野佐代子先生(日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科教授 博士(心理)獣医師 臨床心理士 公認心理師)
参考/「ねこのきもち」2025年11月号『大切な人が陥ったときの寄り添いのヒントも 経験者が語る「ペットロスの私を、支えてくれたもの」』
文/長谷部サチ
※記事と写真に関連性がない場合もあります。