愛猫の異変にいち早く気付いて受診することは、病気の早期発見・治療につながります。そこで今回は、飼い主さんの「些細な気付き」で受診した結果、愛猫に病気が見つかったエピソードをご紹介。見つかった病気については、獣医師の重本仁先生に詳しく解説していただきました。
いつもよりオシッコのニオイがキツイと感じて受診したら
きなこくん(オス・10才/スコティッシュフォールド)、こんぶくん(オス・推定6才)の飼い主Kさんは、こんぶくんを迎えて間もない頃、トイレから漂うオシッコのニオイがいつもより強く感じ、動物病院で診てもらったそうです。
尿検査を行い「膀胱炎」が発覚
「最初はこんぶを疑い、自宅で採尿して動物病院で検査をしましたが陰性。帰宅して今度はきなこを動物病院へ連れて行くと、きなこが膀胱炎であることが発覚し、抗生剤と療法食が処方されました。
わが家では、キャリケースに慣れてもらうために、ふだんから愛猫たちの“隠れ家”として使っているので、2匹を連れ出すのは苦にならなかったです。こういった点も、膀胱炎の早期発見につながったと思います」(飼い主Kさん)
※膀胱炎発覚当時きなこくんは5才。
重本仁先生の解説
膀胱炎は、結晶や結石、細菌、ストレスなどが原因で、膀胱に炎症が起きた状態です。
オシッコが少量しか出ない、オシッコの色が赤っぽくなるなど、排尿障害で気付くことが多いもの。きなこくんの場合は、ニオイの変化だけだったので、初期症状といえるでしょう。再発するケースも多いため、療法食に切り替えたり、ウエットフードで水分を摂取させたりすることが大切です。
いつもより目の縁が赤く見えて受診したら
雪月ちゃん(メス・2才)の健康なときの顔写真を用意し、比べながらチェックしているという飼い主のWさん。雪月ちゃんが1才のときに、目の縁がいつもより赤い気がして、動物病院で診てもらったといいます。
症状が軽すぎるものの「結膜炎」と診断された
「症状が軽すぎて診断が難しいけれど、以前にも結膜炎を患っているので、今回も同様でしょうと目薬を処方されました。かかりつけ医が親切なので、些細なことでも相談しやすいです」(飼い主Wさん)
重本仁先生の解説
結膜炎とは、まぶたの裏側や白目の部分に炎症が起きた状態のこと。猫カゼのウイルスに起因することが多く、大半が目をシバシバしている、目ヤニや涙が出ているといった症状でしょう。そのため、雪月ちゃんのように目の縁の炎症で気付けたのは、かなり早いケースです。
いつもと違う体勢で過ごしているのが気になって受診したら
コウちゃん(メス・診断当時10才)の飼い主Mさんは、いつもは横になって寝ているコウちゃんが、香箱座りをしたまま体勢を崩さない日があり、動物病院で診てもらったそうです。
レントゲン検査などで「膿胸」が発覚
「レントゲン検査などの結果、肺のまわりの胸腔に膿がたまる、膿胸(のうきょう)と診断されました。注射器で膿を抜く処置などを行い、1カ月程度で完治。それ以降は大きな病気をせず、22才まで長生きしてくれました」(飼い主Mさん)
重本仁先生の解説
膿胸は、細菌などに感染して胸腔内に膿がたまる病気です。香箱座りは、リラックス中も具合が悪いときも見られるポーズ。コウちゃんは体に苦しさを感じていたのでしょう。長時間同じポーズで動かないのは不調のサインなので、早めの受診を心がけてください。
気になって受診したものの病気ではなかったケースも
愛猫の様子が気になって受診したものの、病気ではなかったケースも。最後にくすっと笑える飼い主さんのエピソードをご紹介します。
おなかが腫れている気がして「腹水かも」と思い受診したら
「『ただ太っているだけですね』と言われました。受診したのは2才当時。体重は4.4kgで標準体型だと思っていたのですが……」
(みやびちゃん(メス・4才/ベンガル)の飼い主Tさん)
重本仁先生の解説
おなかの張り具合にもよりますが、たまにあるケースですね。逆に太っていると思ったら腹水だったというパターンも。
このように、受診したものの病気ではなかったケースもあるようですが、もしものことを考え、愛猫に気になる様子が見られたときは、なるべく早く獣医師に診てもらうようにしましょう。
お話を伺った先生/重本仁先生(王子ペットクリニック院長)
参考・写真/「ねこのきもち」2024年5月号『飼い主さん、グッジョブ! 些細なことで受診したら、愛猫に病気が見つかりました。』
文/長谷部サチ
※記事と一部写真に関連性がない場合もあります。