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海鳥を襲う猫を“害”にしないために、天売島が猫にしている策とは?

「人と海鳥と猫が共生する天売島」連絡協議会が始めた新たな対策

撮影/石原さくら
撮影/石原さくら
北海道の北西に位置する「天売島(てうりとう)」。
海鳥の聖地となっているこの島では、海鳥を捕えてしまうノラ猫の急増が懸案事項でした。
そのノラ猫を殺さずにどう対処するか、島の「人と海鳥と猫が共生する天売島」連絡協議会が始めた新たな対策を取材しました。

※この記事の情報は、すべて2018年2月10日段階のものです。

目標は、すべての猫に飼い主を見つけること

「飼い猫の管理ができるようになっても、ノラ猫の繁殖能力をコントロールしても、猫が外にいては、海鳥の被害の直接的な対策にはなりません」と話す、「北海道海鳥センター」のスタッフであり、協議会のメンバーでもある石郷岡(いしごうおか)さん。

「島の猫を減らしたいからといって猫を殺(あや)めることはできません。この取り組みは、海鳥と猫、どちらの幸せも考えています。ということで私たちは、島のノラ猫を迎えてくれる、新しい飼い主さんを探すことにしました。

とはいえ島で自由に生きてきたノラ猫を人と暮らせるようにするのは、至難の業。ましてや私たちは海鳥のことならまだしも、猫については素人も同然です。そのため、協議会メンバーに加えて、旭山動物園や酪農大学からもさらに協力を得て、最終的には島のノラ猫すべてが、人の手に渡ることを目指しています」。

天売猫と新しい飼い主さんとを繋ぐまでのステップは大きく分けて3つ。その中でもとくに注力しているのが、猫を人になれさせる「馴化(じゅんか)」のステップだそうで、「猫1匹1匹と向き合うぶん、人手が要るので、道内の一般市民約50名にも、ボランティアとして協力していただいています」。

天売猫が新しい飼い主さんと出会うまでの3つのステップ

①ノラ猫の保護&医療処置

島内に捕獲器を設置し、ノラ猫を捕まえます。島には動物病院がないので、捕まえたノラ猫はまず札幌市などの動物病院に搬送。健康状態の確認と、マイクロチップの挿入や去勢・避妊手術、ワクチン接種が行われます。
捕獲器にかかったノラ猫の写真。「人なれしていないので、とても怯えた表情で写っています」(石郷岡さん)(画像/北海道海鳥センター)
捕獲器にかかったノラ猫の写真。「人なれしていないので、とても怯えた表情で写っています」(石郷岡さん)(画像/北海道海鳥センター)
「天売島と本島を結ぶ船は、日に数本しかないこともあり、搬送にはとても苦労します。一度で10匹もの猫を送ることも。年間だと、大体40匹くらいを捕まえるペースで行ってきました」(石郷岡さん)。

②猫と触れ合って人になれさせる

画像/北海道海鳥センター
画像/北海道海鳥センター
各団体や一般の預かりボランティアと協力して、積極的に猫とコミュニケーションをとります。

「今回の取り組みを始める際に、島のノラ猫を試験的に3匹捕獲し、本当に人と暮らせるようになるかを研究しました。結果、愛情をもってゆっくり猫に合わせて接していけば、大半の猫は半年くらいで人と暮らせるようになることがわかったので、本格的にこのステップを取り入れることになりました」(石郷岡さん)。

③新しい飼い主さんへの譲渡

協力団体を通して、月1回ほど羽幌町や近隣の留萌(るもい)市、札幌市、江別市などで譲渡会を実施。
画像/北海道海鳥センター
譲渡会の様子。猫ごとに特徴などが細かく描かれた貼り紙が掲示されることも(画像/北海道海鳥センター)
「預かっていた人が猫の性格や特徴を把握し、譲渡会で説明できるのも、馴化期間の利点。預かり手の話を受けて、引き取りを決意してくれる方はとても多いです」と石郷岡さん。ちなみに、新しい飼い主さんになった人の中には、預かりボランティアをしてそのまま迎えてしまう方や、天売島の住民もいるのだそうです。


そもそもは海鳥を守るために始まったこの取り組み。しかし結果、島のすべてのノラ猫に新しい飼い主さんを見つけるという、前代未聞の結果を出そうとしています。「人々の理解と協力、そして実行に移す気持ちさえあれば、猫の問題は解決できる」ということを証明した天売島で、「達成」の声があがるのはもう間近です。
撮影/石原さくら
撮影/石原さくら

問い合わせ先

「天売島のネコ問題」
URL http://teuri-neko.net/
このサイトには、お問い合わせができるほか、「天売猫」に関する活動内容などについても記載されています。


出典/「ねこのきもち」2018年4月号「猫のために何ができるのだろうか」
文/「ねこのきもち」編集室
カメラマン/石原さくら
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