愛猫の健診を受けたものの、検査内容や結果の見方がよくわからず、不安に感じている飼い主さんも多いのではないでしょうか。そこで今回は、猫の「血液検査」の検査項目や、検査結果の読み解き方などについて、猫専門病院院長の山本宗伸先生に教えていただきました。
血液中の有形成分を調べる「血球計算」
血液は有形成分である血球(白血球・赤血球・血小板)と、液体成分(血しょう)で構成されており、前者を調べるのが「血球計算」です。
血球数を調べることで、たとえば白血球数が高い場合は感染症や炎症など、赤血球数は高い場合は脱水、低い場合は貧血などが疑われます。赤血球については大きさやヘモグロビン量なども測定し、貧血の種類も調べられます。
検査項目の見方と疑われる病気
白血球関連の項目
白血球数(WBC)
白血球の数で、炎症や感染の有無を知る目安に。数値が高いと感染症、炎症、ストレス、低いと重度のウイルス感染症、薬物や毒物の摂取、骨髄異常などが疑われます。
赤血球関連の項目
赤血球数(RBC)
赤血球の数で、体の元気度に直結。数値が高いと脱水、多血症、低いと貧血、出血、慢性炎症などが疑われます。
ヘモグロビン量(HGB)
赤血球の中のヘモグロビン量で、貧血の有無を評価。数値が高いと脱水、多血症、低いと貧血、出血、慢性炎症などが疑われます。
ヘマトクリット値(PCVまたはHCT)・赤血球容積比
血液中に赤血球がどのくらいの割合で含まれているか、血液の濃さを見る指標で、数値が高いと脱水、多血症、低いと貧血が疑われます。
平均赤血球容積(MCV)
赤血球1個あたりの大きさで、貧血のタイプを見わけるヒントに。数値が大きいと再生性貧血など、小さいと鉄欠乏性貧血などが疑われます。
平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)
赤血球のヘモグロビン濃度で、貧血のタイプを見わけるヒントに。数値が低いと鉄欠乏性貧血などが疑われます。
血小板関連の項目
血小板数(PLTまたはPlat)
ケガや出血時に重要な、血を止める細胞・血小板の数。数値が高いと免疫介在性疾患、出血、慢性感染症、低いと出血しやすい、免疫介在性疾患、感染症が疑われます。
血しょう中の物質を調べる「生化学検査」
「生化学検査」は、血液中の液体成分(血しょう)に含まれる栄養素、酵素、ホルモン、免疫物質、ミネラル、老廃物などの濃度を調べることで、おもに腎臓や肝臓などの状態を評価する検査です。
猫は慢性腎臓病になりやすいといわれているため、腎機能低下の指標となる尿素窒素やクレアチニンの値はとくに重要。また、肝酵素からは肝機能障害、血糖値からは糖尿病などを疑うことができます。
検査項目の見方と疑われる病気
検査項目の一例と、それぞれの数値の見方についてご紹介します。
おもに栄養状態を見る項目
総たんぱく(TP)
血液中のたんぱく質の総量で、数値が高いと脱水、炎症、感染、腫瘍、高脂血症、低いと免疫不全、栄養不良、重度出血、肝臓病、糸球体腎炎が疑われます。
アルブミン(ALB)
血液中の主要なたんぱく質で、数値が高いと脱水、低いと腸吸収不良、栄養不良、肝不全、大量出血が疑われます。
おもに肝臓を評価する項目
GPTまたはALT
肝細胞に多い酵素で、数値が高いと肝細胞損傷、膵炎、甲状腺機能亢進症が疑われます。
ALPまたはSAP
胆汁の流れに関係する酵素で、数値が高いと肝リピドーシス、胆汁うっ滞、骨疾患、薬物、甲状腺機能亢進症が疑われます。
おもに腎臓を評価する項目(※とくに重要)
尿素窒素(BUN)
たんぱく代謝の老廃物で、数値が高いと腎臓病、脱水、尿路閉塞、高たんぱく食、低いと肝不全が疑われます。
クレアチニン(CRE)
筋肉由来の老廃物で、数値が高いと腎臓病、低いと筋肉減少が疑われます。
無機リン(IP)
骨・腎臓にかかわるミネラルで、数値が高いと腎臓病、上皮小体機能低下症、低いと高カルシウム血症、ビタミンD欠乏症が疑われます。
ミネラルバランスを見る項目
ナトリウム(Na)
体液バランスを保つミネラルで、数値が高いと脱水、塩分摂取過多、低いとおう吐、下痢、多尿期の腎臓病が疑われます。
カルシウム(Ca)
骨・神経・筋肉にかかわるミネラルで、数値が高いと腎臓病、腫瘍、甲状腺機能亢進症、低いと低アルブミン血症、上皮小体機能低下症が疑われます。
おもに代謝・エネルギーを見る項目
血糖値(GLU)
血液中のブドウ糖で、数値が高いと糖尿病、ストレス、低いと肝不全、栄養不足、インスリノーマが疑われます。
中性脂肪(TG)
血中脂質のことで脂質代謝の指標。数値が高いと膵炎、糖尿病が疑われます。
高齢猫に多い病気の早期発見に有効な「オプション検査」
血液検査には、特定の病気を調べることを目的とした「オプション検査」もあります。オプション検査は、10才以上の高齢猫がかかりやすい病気の早期発見に有効な検査。受けられる検査などは動物病院によって取り扱いが異なるため、希望する場合は事前に確認しましょう。
おもなオプション検査
甲状腺ホルモン
血液中の甲状腺ホルモン(T4)濃度を測定し、甲状腺機能亢進症を調べる検査。この病気は10才以上の猫に多く、活動性や食欲が増して、一見元気そうに見えるのが特徴です。進行すると心臓や腎臓に負担がかかります。
腎機能マーカー(SDMA)
日本で2016年から測定できるようになった検査。これまでの血液検査では腎機能が75%以上失われないと検出できなかったのに対し、SDMAは40%で検出が可能となります。慢性腎臓病の早期発見に効果的です。
心臓マーカー
心筋に負荷がかかった際に血液中に出るホルモン(NT-proBNP)の濃度を測定して、心臓病を調べる検査です。とくにラグドール、メインクーンなど心臓病が多い純血種で、心臓病の早期発見マーカーとして重要です。
それぞれの数値の正常値や参考基準値は、分析機器によっても異なります。また、ひとつの項目だけではなく、各数値のバランスを見て獣医師が判断するため、より詳しく知りたい場合や、結果に不安がある場合は主治医に質問しましょう。
お話を伺った先生/山本宗伸先生(猫専門病院 Tokyo Cat Specialists院長 国際猫医学会ISFM所属)
参考/「ねこのきもち」2026年6月号『“受けっぱなし”はもったいない!猫の健診結果は、こうして読み解く』
文/宮下早希
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性がない場合もあります。