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シニア猫に励まされる日々。寿命が異なる猫との暮らしのお話【連載】渋ネコししまるさん#176

「おーい、ししまる」
 と息子がししまるを呼んだ時、僕の頭の中では「老ーい、ししまる」と変換された。それもそのはず。ししまるは来年の3月で13歳。人間換算では68歳だ。
 忍歩きもドタドタ鳴るし、階段もひと呼吸置いてから登るようになった。尻尾は固まった軟骨の為に数年前から棒のようだし、毛もベタつき始めた。ブラッシングすればフケが出て、目ヤニもいびきも増えてきた。
「もうTacoくんより年上じゃな」
 ししまるの老いを見ていると、子ども時代の思い出が蘇る。
 小学生の頃、天本英世さんのインタビューがテレビで放映されていた。天本さんは初代仮面ライダーの死神博士の役をしていた方だ。内容は不正確だが、“明日には命が尽きると思って、今を大切に生きている“と話されていたような記憶がある。幼い僕は、明日が無かったらどうやって生きればいいのだ…と悶絶したが、歳を重ねた今では、天本さんの気持ちがわかる。僕にとってそれは、寿命が異なる猫との暮らしにおいて、とても重要な役割を果たしている気がしてならない。
「明日も、寝る」
 僕は渋味を増したししまるの顔をマッサージした。のどを鳴らすゴロゴロ音と、狭い鼻腔を押し出して漏れる音のハーモニーが心地よかった。暑すぎる程に温かいししまるのぬくもりと、足が痺れる程の重さに、僕は安堵した。どれも全て命の証だ。
「んん~そこそこ」
 鳩時計が鳴き、ししまるが顔を上げた。夜の薄暗さで、ししまるの黒目はまんまるで、子猫のように見えた。
 のっそりと起きあがった子猫のような目をした老猫は、2、3歩ヨタついてから力強く大地を踏み締めて歩き出した。向かった先は、やっぱりご飯入れだ。
 僕はこれからも、老いていくししまるにもっと励まされ続けるのだろう。

Taco(たこ)プロフィール

東京在住の漫画家・イラストレーター・キャラクタデザイナー。びゅうたびライターとしても活動中。
「ちいさな猫を召喚できたなら」「3匹のちいさな猫を召喚できたなら」「ぷっちねこ。」(徳間書店)など、好評発売中。「ちいさな猫を召喚できたなら」は重版後、中国版・韓国版・インドネシア版も発売。
現在、Web上では不定期に新作漫画を更新中。詳しくは以下のSNSへ。
・Instagram
 Tacoのインスタ: @tacos_cat
 ししまるのインスタ: @emonemon
・Twitter@taco_emonemon
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