日本には、猫にまつわる言い伝えが世界に類を見ないほどに多く、昔から日本人は「大の猫好きだった」と考えられます。そこで今回は、日本各地で語り継がれる猫の言い伝えを5つ取り上げ、“猫博士”の岩﨑永治先生に解説していただきました。
(1)見知らぬ猫が入り込んできたら、その家は幸福になる
■宮崎県の言い伝え
「見知らぬ猫が入り込んできたら、その家は幸福になる」
猫が寄りつく人には人も集まりやすく、大成しやすいのでは(岩﨑先生)
猫は大きな声を出す人や、騒がしく荒々しい態度を見せる人が苦手な動物。そんな猫が寄りつくのは、きっと物腰がやわらかく、穏やかな人のはずです。穏やかで、入り込んできた猫を受け入れるような人は懐が広く、人脈づくりも上手そう。商いを成功させるなどして、幸福をつかみやすいということかもしれませんね。
(2)猫が顔を洗う動作をすると客が来る
■宮城県の言い伝え
「猫が顔を洗う動作をすると客が来る」
来客が苦手な猫が客の気配を感じたときの「転位行動」かも(岩﨑先生)
「顔を洗う動作」とは、顔まわりの毛づくろいのこと。猫の毛づくろいは、感覚機能や体温の調整のほか、不安や葛藤などのストレスを軽減させるための「転位行動」として見られることがあります。来客が苦手な猫が客の気配を感じ、ストレスを軽減させるために毛づくろいを始めた様子をあらわしたのかもしれません。
(3)猫の飯を食うと夜も目が見える
■福井県の言い伝え
「猫の飯を食うと夜も目が見える」
ビタミンAの影響? もしくは猫は夜目が利くからかも(岩﨑先生)
夜に目が見えにくくなる夜盲症は、後天性の場合、ビタミンAの欠乏により生じます。猫のゴハンに魚の内臓、とくに肝臓が入っていた場合、ビタミンAが豊富で夜盲症に利いた可能性も。また、猫の目には光を反射する構造があるため、暗闇でもよく見えます。このことも、言い伝えにつながっているのかもしれませんね。
(4)猫にエビを食わせると化ける
■秋田県の言い伝え
「猫にエビを食わせると化ける」
神経症状が出た猫を「化けた」と勘違いした?(岩﨑先生)
生のエビは、イカやタコ、カニなどと同様に、猫が食べるとビタミンB1欠乏症を引き起こすとされる有害な食べ物。猫がビタミンB1欠乏症になると神経症状があらわれ、ふらついたり腰が抜けたりするなど、奇妙な動きを見せることがあるため、昔の人は「化けた」と勘違いしたのかもしれません。命に関わる場合もあるので、猫には決して食べさせないようにしましょう。
(5)猫の口ヒゲを焼くとネズミを捕らなくなる
■高知県の言い伝え
「猫の口ヒゲを焼くとネズミを捕らなくなる」
猫にとってヒゲは狩りをするための重要なセンサーです(岩﨑先生)
猫のヒゲは神経につながっている感覚器。狩りのときに捕らえ損ねても、広げたヒゲに獲物が触れれば、どちらに逃げたか瞬時に判別して追うことができます。そんな猫もひとたびヒゲを焼かれれば、いくら目や耳があってもネズミを捕らえることは困難に。いかに猫にとってヒゲが重要な感覚器なのかが伝わってくる言い伝えですね。
こうした猫の言い伝えは、古くから人々が猫という動物を何とか理解しようとしてきた歴史ともいえます。猫という存在は、これからも私たちを魅了し続けてくれるでしょう。
お話を伺った先生/岩﨑永治先生(博士(獣医学)国立科学博物館認定サイエンスコミュニケーター)
参考/「ねこのきもち」2026年1月号『フシギ…のウラには理由があったり、なかったり。日本各地! 猫にまつわる言い伝え』
文/長谷部サチ
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性がない場合もあります。