2016年の3月下旬に、千葉の海岸で拾われた姉妹猫・ビスコちゃん(左)とムギちゃん(右)。発見当時、生後10日ほどの小さな小さな命でした。
かねてから「猫を飼いたい」と思っていた飼い主さんが家族に迎えることになるのですが、出会った当時のことを思い出すと、いま一緒に暮らせているのが奇跡のように思えるのです。
「このコを置いていったら後悔する」 1匹を引き取る予定が、2匹に
「猫を飼うなら保護猫を」と考えていた飼い主さん夫婦は、友人の紹介で1匹の子猫のことを知ります。それが、ビスコちゃんでした。
一目惚れをしてビスコちゃんに会いに行くのですが、そこで思いもよらないことが起こります。
「保護主さん宅に伺うと、最初に出てきたのはビスコではなく、ちいちゃい茶トラの女のコ。そのコが、ムギでした。
座るなり主人にぴったりくっついて離れません。まるで、私たちが来るのを待っていたかのようでした」
ビスコちゃんを迎えるつもりで来たけれど……このコを置いて帰ったら、きっと後悔する。
飼い主さん夫婦はその場で話し合い、姉妹を引き取ることに決めたのでした。
発見当時、瀕死の状態だったムギちゃん
ビスコちゃんは体が丈夫なコでしたが、ムギちゃんは保護された当時、猫特有のウイルスによって瀕死の状態だったそう。もう1匹一緒にいた男のコはその後、亡くなったといいます。
「その兄弟の命と引き換えに、ムギはたくさんミルクを飲むようになり、一命を取り留めたようです。
潰れていた目は動物病院で切開してもらい、濁りはあるものの奇跡的に両目きちんと見えるようになりました」
おうちに迎えてからも、ムギちゃんに目薬をしてあげる飼い主さん。次第に目が綺麗になっていきます。
つらいときも、ムギちゃんのそばにはいつもビスコちゃんがいたのでした。
まるで人間の姉妹みたい! ビスコちゃんとムギちゃんの関係
姉妹猫だけれど、性格はおもしろいくらいに違うといいます。
人がやることに対して興味津々のビスコちゃんは、家ではいつも飼い主さんのあとをついて来るそう。
一方のムギちゃんは、とってもマイペース。飼い主さんが「自分を中心に世界はまわっていると思っているタイプ」というほどです。
また、ビスコちゃんが甘え下手なのに対し、甘え上手なムギちゃんは、旦那さんのことが大好き!
こんなふうに、指をチュパチュパ吸うのが好きなのです♪
「面倒見がよくてムギを優先してあげる姉のようなビスコと、ビスコのことが大好きでぐいぐいアピールする妹タイプのムギ。
たまにその押しの強さにビスコはタジタジですが、まるで人間の姉妹のようです」
2匹といると、気づけば自然と笑顔になっている
2匹を飼い始めて、以前よりもお出かけはしなくなったけれど、「違う喜びを感じるようになった」と話す飼い主さん。
ビスコちゃんとムギちゃんと一緒にやることすべてが、楽しくて仕方ないのだそう。
「イライラしていたり仕事で疲れたりしているときでも、いつもと同じように接してくれるふたりのおかげで、気持ちがリセットされます」
「主人の仕事が忙しくなり家を空ける日が増えましたが、ふたりと一緒なら、いつも温かい心で留守番できるのが嬉しいですね」
幸せな一分一秒が、記憶にしっかり残るように
2匹のことを娘のように大切に思っている飼い主さんに、「これから」のことを聞いてみました。
「とにかく健康で幸せに長生きしてほしい。それに尽きます。猫の成長は早いです。あっという間に大人になってしまいました」
「これからの十何年も、きっと瞬く間に過ぎていくことでしょう。幸せな一分一秒が、ふたりの記憶にも自分の記憶にもしっかり残るように、これからも絆を築いていけたらと思います」
飼い主さんがInstagramを始めたのは、ビスコちゃんとムギちゃんとの「幸せの瞬間」を切り取り残していくため。
当たり前の毎日でも、あとで振り返ってみると、それは特別な思い出となります。
飼い主さんのInstagramには、1枚1枚が愛おしいビスコちゃんとムギちゃんの写真が、これからも増えていくのでしょう。
参照/Instagram(
@tonytony_oka)
取材・文/凜香