猫の腎臓病の診断や治療については、獣医師の間で常に注目されています。腎臓病の治療において食事療法はとても重要ですが、今回は食事療法を始める適切なタイミングを判断するために確立された新しい検査項目について、獣医師の山本宗伸先生にお話を伺いました。
腎臓病における食事療法とは?
腎臓病になると、ビタミンDの働きが低下してカルシウムの吸収が悪くなり、血中のカルシウム濃度が低下します。また、リンを尿として排出できなくなるため、血中のリン濃度は反対に上昇。このことから、猫の腎臓病の食事療法では、リンを制限する療法食がすすめられています。
腎臓病の新しい検査項目「FGF23」とは?
これまで、腎臓病の猫が食事療法を始める際は、クレアチニンとリンの数値が判断材料でしたが、そこに新しく加わった検査項目が「FGF23(線維芽細胞増殖因子23)」です。
FGF23とは、血中のリン濃度を調整するホルモンのこと。FGF23の異常な高値が見られたら、食事療法を開始したり強化したりする根拠になります。
正確なリンの制限が治療のカギ
FGF23の測定が推奨されるのは、リン濃度が上がる前から食事療法をするかどうかの判断をするためだけでなく、早期の腎臓病にリン制限食を与えると、高カルシウム血症になるリスクが上がることがわかってきたからです。
血中のカルシウムとリンはシーソーのような関係で、リンが低下するとカルシウムが上昇するように体内で調整が行われます。そのため、リンを制限する食事療法を早く始めてしまうと高カルシウム血症に、遅いと高リン血症になるリスクがあるのです。
FGF23を検査項目に加えてより正確なリン制限を行うことは、病気の進行をゆるめ、猫の寿命を延ばす可能性があるでしょう。
獣医療の進歩によって、より精度の高い腎臓病治療が可能になってきているようですね。腎臓病の療法食について気になることがあれば、かかりつけの獣医師に相談してみましょう。
お話を伺った先生/山本宗伸先生(Tokyo Cat Specialists院長 国際猫医学界ISFM所属)
参考/「ねこのきもち」2025年6月号『創刊20周年特別企画 猫の健康と、これからと。』
文/東里奈
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
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