災害時、在宅に危険を感じて安全な避難場所への移動を決めたら、愛猫と同行避難することになります。その際、どれだけ迅速に出発できるかが猫と人の命に関わるので、持ち出し品をすべて持って歩く訓練を行うなど、「すぐ出発」を念頭に置いた備えが欠かせません。
そこで今回は、愛猫と同行避難するときに必要な備えや訓練を、専門家の香取章子さんに伺いました。
猫をキャリーケースに慣れさせておく
一刻を争う避難時に、スムーズに愛猫をキャリーケースに入れられないと、同行避難を諦めざるを得なくなるケースも。
日常的にキャリーケースの中でおやつを与えるなどして、キャリーケースを「いいことがあるところ」と認識させ、慣れさせる訓練をしておきましょう。
猫用の持ち出し品を揃えておく
猫との避難生活に備えて揃えておきたい、必須の持ち出し品は以下のとおりです。迅速に出発できるよう、玄関近くに置いておきましょう。
水
少なくとも2リットルのペットボトル1本分の飲み水(軟水)は用意しましょう。硬水は猫の結石の原因になるのでNG。
猫の情報がわかるもの
はぐれたり避難所で猫と別々に過ごしたりする可能性もあるため、猫の特徴や健康情報、飼い主さんの連絡先などをまとめた手帳などを用意しましょう。飼い主さんと猫が一緒に写った写真もあると○
ポリ袋
避難所では飼い主としてのマナーも大切。使用済みのトイレ砂の処理や、フードのパウチを片付けるときにも役立ちます。
トイレ砂・ペットシーツ
どちらも1週間分あると安心ですが、重くて持ち運びが大変なトイレ砂は最低でも3日分は準備を。ペットシーツはタオル代わりにも使えます。
フードボウル・水飲みボウル
軽くて割れない素材で、小さく折りたためるものなどを選びましょう。フードと水用に2つあると便利です。
ドライフード
食べ慣れたフードを最低5日~1週間分用意しましょう。療法食を与えている場合は、多めに入手できないか獣医師に相談を。
タオル
大判サイズであれば、キャリーケースを包むようにかけて目隠しや防音、防寒になり、猫のストレス軽減に。また、汚れた体を拭くのにも役立ちます。
常備薬
持病のある猫にとっては不可欠なもの。獣医師に相談のうえ、災害時に備えた予備を含めて可能な量を常備しておきましょう。
なお、必須ではありませんが、ケージやウエットティッシュ、ペースト状のおやつ、ウエットフード、首輪(ハーネス)+リードがあると安心です。
持ち出し品をすべて揃え、キャリーに入れた猫と合わせて持ち歩いてみる
愛猫をキャリーケースに入れ、実際に同行避難するときと同じものを持って歩いてみることで、「いざというときにこれではいけない」という課題が見つかる場合も。そんなときは、課題に応じた調整や改善をして備えましょう。
自宅周辺のハザードマップを確認しておく
津波、洪水、土砂災害など、自宅周辺の地域がどのような災害の発生率や危険度が高いのか、国や自治体が作成しているハザードマップや防災情報などで確認を。状況に応じた避難方法をシミュレーションしておきましょう。
最寄りの避難所が同伴OKかどうかも確認を
先述のとおり、避難の際は猫も一緒に避難所に移動する「同行避難」が基本ですが、人と猫が同じ避難場所で過ごす「同伴避難」が受け入れられるかどうかは、避難所によって異なります。避難所のルールや災害の規模などによっては同伴避難NGの場合があるほか、人とペットの居場所は別々だったり、受け入れられるまで時間がかかったりするケースも。
マイクロチップを装着しておく
猫の体内に装着すると、動物病院や愛護センターなどで専門のリーダーを使い、飼い主さんと猫の情報を照会できるマイクロチップ。万が一離ればなれになった場合、保護された先で身元がわかり、再会できる可能性がぐっと高まります。住所や連絡先が変わった際の情報更新も忘れずに。
「いつどこで大規模災害が起きてもおかしくない」といわれる昨今。災害は起きるものという前提で、被害を最小限に抑えるための「減災」に取り組むことが重要といえるでしょう。
お話を伺った先生/香取章子さん(特定非営利活動法人ちよだニャンとなる会業務執行理事 一般社団法人東京都人と動物のきずな福祉協会代表理事 フリーランス・ライター)
参考/「ねこのきもち」2025年9月号『「実際にやってみる」ことで、いざというときの減災につながる! 避難訓練やってみよう!』
文/長谷部サチ
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性がない場合もあります。