愛猫にフードやおやつを与えるとき、何気なく手のひらにのせて与えている飼い主さんは多いかもしれません。「ハンドフィード」と呼ばれるこの方法ですが、実は猫にとってたくさんのメリットがあります。
そこで今回は、愛玩動物看護師の小野寺温先生に、猫へのハンドフィードが役立つシーンを教えていただきました。
ハンドフィードって?
ハンドフィードとは、英語で「手から直接、食事を与える」こと。主に犬のしつけや苦手克服、ほめたいシーンなどで活用されていますが、猫に対して行う場合はスキンシップの一環として考えるといいでしょう。
毎回の食事でハンドフィードをするのではなく、おやつタイムなど特別なときに行うのがポイント。猫と人との距離を縮めるのにも有効な手段です。使用するのは、ドライタイプのフードやおやつがおすすめ。手のひらをお皿代わりにして与えてみてください。なお、ハンドフィードは1日1回程度にとどめましょう。
ハンドフィードが役立つ7つのシーン
猫へのハンドフィードは、どのようなメリットがあるのでしょうか。ハンドフィードが役立つシーンをご紹介します。
(1) より人馴れさせたいとき
猫は警戒心の強い動物ですが、人からおいしいものをもらっていると、人のそばにいるとイイコトがあると学習します。とくに人馴れしていない猫は、手から与えることで「この人がおいしいものをくれた」という印象が強く残り、人馴れにつながるでしょう。
(2) おやつの時間にスキンシップもしたいとき
猫が夢中で好物を食べている姿を見るのは、飼い主さんにとっても癒やしの時間。人の手と猫の口が触れることで、スキンシップにもなります。ただし、目を見つめられるのが苦手な猫もいるため、近くでジッと見つめないよう気を付けましょう。
(3) 食欲がわかないとき
とくにシニア猫は食が細くなるため、置きフードでは食が進まないこともしばしば。そんなときは、ハンドフィードで猫の鼻先に持っていってみて。嗅覚が刺激され、かつ飼い主さんの手から食べられるという安心感で、食欲が出ることがあります。
(4) キャリーケースに慣れさせたいとき
通院や災害時に欠かせないキャリーケースは、猫に慣れてもらうため、ふだんから部屋に出して猫ハウスとして使うのが理想です。愛猫が自分から入ったときにハンドフィードをすれば、キャリーの中にいることが「イイコト」と結びつきやすくなるでしょう。行うタイミングはキャリーの中に入ったときでも、出てくるときでも、どちらでも効果的です。
(5) 新しいフードに切り替えたいとき
フードを切り替えたとき、警戒心からか食いつきが悪くなる猫もいます。ハンドフィードに慣れていれば、経験上「手から食べるものはおいしい」と覚えているので、新しいものでも口にしやすい傾向が。食事の選択肢が狭まる療法食に切り替えるときにも試してみてください。
(6) 苦手なお手入れを克服させたいとき
爪切りなど、猫によっては苦手なお手入れがあります。猫を押さえつけて強行するのは逆効果なので、ハンドフィードを交えて行ってみて。何度か繰り返すうちに苦手意識が軽減されて、お手入れがスムーズになるでしょう。
(7) ストレスを感じさせずに投薬したいとき
猫に薬を飲み込ませるには、口に直接錠剤を入れるのが確実ですが、猫にとってはストレスとなりがち。猫用の投薬補助おやつを用意して、薬もハンドフィードで与えれば、無理強いせずに済んでストレスなく投与できます。
手を噛まれないように注意して!
急いでフードを食べようとする猫もいます。それが飼い主さんの手のひらであっても、食べ方の加減がわからず、手を噛んでしまうことが。噛まれたり噛まれそうになったりしたら、すぐにハンドフィードは中断しましょう。
猫へのハンドフィードはメリットがたくさん。まだ試したことのない飼い主さんも、ふだんのお世話のなかにぜひ取り入れてみてくださいね。
お話を伺った先生/小野寺温先生(帝京科学大学講師 愛玩動物看護師)
参考/「ねこのきもち」2025年12月号『おいしいを「手から与える」で絆強まる♥メリットいっぱい 猫にハンドフィード』
文/柏田ゆき
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性がない場合もあります。