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【獣医師監修】猫のてんかん│症状と原因、治療法や対処法について解説
今回は、猫の「てんかん」について、症状や治療方法、発作の判断方法や危険性などをご紹介します。症状を事前に知ることは早期発見の確率を高め、最悪のケースを防ぐことにもつながります。てんかんへの正しい向き合い方を一緒に学んでいきましょう。
猫のてんかんとは、どういう病気?症状は?
「てんかん」とは、主に発作を伴う全身性のけいれんや意識障害が繰り返して起こる脳疾患のことをいいます。体が硬直して動けなくなったり、意識を失ってけいれんを起こしたりするなどの症状が見られます。
精神的なストレスや天候なども、てんかんの発作に関係しているといわれており、なかには大きな音などの特定の刺激で、てんかんの発作が起きることもあります。
猫のてんかんは、大きく2つに分類することができます。
症候性てんかん
「症候性てんかん」は、外傷・腫瘍・脳炎などによる脳への損傷や、水頭症などの生まれつきの脳奇形などによる脳の器質的異常(形態の異常)が原因で起こるてんかんのことです。MRIなどの画像検査で脳の形態に異常があった際は、「症候性てんかん」が疑われます。
特発性てんかん
「特発性てんかん」は、たとえば脳損傷など脳の器質的異常が見られないのに起こるてんかんです。若いうちに発症して画像診断上はっきりわかる器質的異常がない場合には「特発性てんかん」と診断されることが多いでしょう。
遺伝的要素が強いと考えられていますが、原因ははっきりしていません。上述した、天候や音、光、ストレスが発作の引き金となることがありますので、注意が必要です。
てんかん発作のとき、脳はどうなっている?
脳の神経は、「興奮」と「抑制」が互いにバランスを取りながら働いています。そのため通常は、興奮が強くなりすぎると脳内で抑制性の電気信号が働いて興奮を抑えますが、何らかの原因で神経の乱れが起こると、興奮性の電気信号が過剰に働いてしまい、てんかん発作が起こるのです。
てんかん発作は「全身性発作(全般発作)」と「局所性発作(部分発作)」の2つに大別され、全身性発作は脳の全体が、局所性発作は脳の一部が異常な興奮状態になって起こります。
全身性発作は、全身に症状があらわれるのが特徴です。突然意識を失って体全体がけいれん・硬直する、全身に力が入らなくなる、手足をバタバタさせるといった症状のほか、よだれを垂らしたり、排尿や排便が起こったりすることもあります。
一方、局所性発作では、発作の起きた脳の部分に対応して、体の一部に発作が起こります。顔面のけいれんや一部の手足のけいれんなどが見られ、ほかにもハエ噛み行動や攻撃行動、口をモグモグしてよだれを垂らす、絶え間なく鳴き続けるなど、症状はさまざまです。
てんかん発作の前兆はあるの?
愛猫がいきなりてんかん発作を起こすと、飼い主さんはビックリして慌ててしまいますよね。少しでも準備と心構えをしたいものです。前兆なく起こることが多い猫のてんかんですが、なかには以下のような前兆が見られる場合もあります。
・いつもよりも多く水を飲む
・落ち着きがなく歩き回る
・不安げに飼い主さんを捜す
・過剰にグルーミングをする
また、毎回同じきっかけでてんかんを起こすような場合は、大きな音や光、カチャカチャとした金属音、遊びや激しい運動による興奮などが原因になることが多いようです。
猫によりきっかけは多様ですが、原因がわかれば予防につながる可能性があります。発作が起こる前の状況などを、できる限り覚えておくようにしましょう。
猫のてんかんの治療法は?
症候性てんかんの治療
原因となっているもとの病気の治療を行い、神経症状がそれ以上悪化しないようにします。抗てんかん剤の投与を並行して行うこともあります。もし発作の頻度が多くなければ(数か月に1回程度の軽い発作なら)抗てんかん剤の投与はせず、経過観察をすることもあります。
特発性てんかんの治療
抗てんかん剤を飲ませて発作の回数を減らします。基本的に薬は生涯飲み続ける必要があり、複数の種類を処方されることもあります。発作の頻度が多くなければ投薬せずに経過観察をすることもあります。
てんかんの治療は、回数を減らす目的で発作のコントロールを試みるのが一般的です。
薬を飲ませる際は、処方された薬を用量どおりに与え、猫の様子を観察します。副作用などもあるため、猫の様子がおかしければすぐに獣医師に相談するようにしましょう。
なお、症状がよくなってきたからといって、独断で断薬するのはNGです。症状が重度に進行するおそれがあります。
死んでしまうことはあるの?
てんかんになった猫の寿命は、適切な治療を施せば、平均寿命に対して極端に短くなることはあまりありません。
ただし、てんかんの発作のなかでもとくに何度も発作が起こる「群発発作」や「重積発作」では、脳へのダメージが大きく、ときには命にかかわることもあるので注意が必要です。
また、てんかん発作の際に高いところから落下する、喉に物を詰まらせて窒息してしまう、誤って水槽に落下し溺死してしまう、といったことで命にかかわる怪我をしてしまった例もあります。
もしかしててんかん発作?こんなときには要注意
普段と比べて、水をたくさん飲む、落ち着かずそわそわしている、深く眠っている、甘えてくるなど、愛猫の様子が違うときには注意をしましょう。先述のとおり、猫のてんかんは犬や人のてんかんと異なり、前兆なく突然発作があらわれることも多いようです。常に小さな変化に目を光らせましょう。
愛猫がけいれんし始めたら…
もし突然けいれんし始めたら、まずは猫の周りの物をどけて、猫が高いところにいる場合は降ろして安全を確保します。見ているのは辛いですが、下手に手を出さずに見守りましょう。無意識の愛猫に噛まれて大怪我をすることもあります。発作が落ち着いたあとは音(声)や光(照明)の刺激を避け、意識があるかどうかも可能な範囲で観察しましょう。どんな様子でけいれんが起きているのか動画を撮影しておくと、動物病院の先生に正確に伝えられます。
けいれんの長さは、とても重要な情報です。できれば正確な時間を計測できるといいでしょう。いつもとは違う発作状況が続くときは、動物病院へすぐに連絡しましょう。近くの動物病院が緊急対応をしているかどうかなど、事前に確認しておくと安心です。
ほかにも、発作の日時や前兆の有無、発作中・発作後の様子、普通の状態に戻るまでにかかった時間も記録しておくといいでしょう。
少しでも変だなと感じたら動物病院へ!
てんかん発作の症状は、けいれんのほかにも、四肢が硬直する、倒れる、意識が急になくなる、口から泡を吐く、無意識に排泄をしてしまうなどさまざまです。いずれも普段の様子をよく観察して「正常な状態」を把握しておくことが大切です。少しでも変だなと思ったら、迷わず動物病院へ連絡をし、状況を伝えて指示を仰ぎましょう。
参考/「ねこのきもち」2017年4月号『治りにくいからこそ予防と早期発見が大事です! 一度かかると長いお付き合いになる病気』
監修/玉原智史先生(ひろ中央動物病院院長)
文/Yoko N
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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