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【獣医が教える】猫の貧血を引き起こす疾患 −原因から治療法まで−

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猫の貧血を引き起こす疾患に、どのようなものがあるか知っていますか。猫の貧血は、栄養不足や外傷といった人間にもいえるものだけでなく、寄生虫や感染症、中毒、さらには遺伝性のものまで、その内容は多岐にわたります。中には重篤化すると輸血が必要になる疾患もありますので、注意が必要です。ここでは、猫の貧血をもたらす疾患とその原因、診断、治療法をご紹介します。

貧血の原因としくみ

貧血は、日本人女性の約6割がなっているともいわれる、とても身近な疾患です。これは、血液中に含まれる「赤血球」の数や濃度が減少することで起こります。

赤血球の主なはたらきは、肺で得た酸素を全身に届けることです。酸素は赤血球の主要成分であるヘモグロビンと結合します。つまり、酸素を伴った赤血球が血管内を流れることで、体の隅々まで酸素が供給されるという仕組みです。
ヘモグロビンは、ヘムとグロブリンからなり、ヘムは鉄、グロブリンはタンパク質からできています。そのため、からだの鉄やタンパク質の量が枯渇すると、正常な赤血球を生産できなくなり、貧血を起こします。

赤血球はからだの中で絶えず作られ、絶えず破壊されています。血中の赤血球の数のバランスが崩れると、貧血を引き起こします。
例えば、赤血球が生産される場所である骨髄の機能が抑制されると、生産量が破壊量を下回り、貧血になります(非再生性貧血)。
一方、肝臓や脾臓などでの赤血球の破壊量が大きくなると、生産量が正常でも貧血になります(再生性貧血)。
また、大きな出血により血液がからだの外に出過ぎると、貧血になります(失血)。
さらには、血液中の赤血球の量が同じでも、血液中の水分量によって、赤血球の濃度は増減します。たとえば、下痢・嘔吐・熱中症などで脱水が起こっていると、赤血球の濃度は高くなります。一方、治療で輸液を点滴した場合、血液中の水分量が多くなるので、赤血球の濃度は低くなり、貧血となります。

猫の貧血 −疾患とその原因・治療法−

猫でもやはり、赤血球の数や濃度が減少すると貧血になります。栄養不足や生理出血など人間と共通する面もありますが、中には猫特有の理由を原因とする貧血もあります。
貧血を起こすと、赤血球のはたらきが不足し、全身が酸欠状態になるため、鼻が白くなる、粘膜が白くなる(口腔内、舌など)、疲れやすくなる、呼吸が速くなる、元気が消失するなどの症状が現れます。

以下では、猫に貧血をもたらす疾患やその原因について詳しく紹介します。

腎性貧血

■原因:
猫に多い疾患として最初にあがるのは、腎臓病です。実はこの腎臓病が、貧血を引き起こす一因となります。腎臓は、骨髄での造血を促すホルモンであるエリスロポエチンを産生しています。腎臓病になると、このエリスロポエチンの産生能力が低下し、貧血を引き起こします。
■症状:
一般的な貧血症状が認められます。
■診断・治療:
診断は、腎臓病の有無と、赤血球が産生されているのかどうかを顕微鏡で形態的に評価することでなされます。
腎臓は再生能力がない臓器であるため、一度落ちてしまった機能は回復しません。そこで、エリスロポエチン剤を注射して治療することになります。しかし、治療反応は次第に悪くなっていくことが多く、そうなった場合には予後不良となります。
■治療費
エリスロポエチン剤は高価な薬です。1回2000~8000円ほどかかります。
それに加え、腎臓病の治療で、腎臓食、投薬、点滴通院などで、週に1万円ほどかかるでしょう。

ハインツ小体性溶血性貧血(タマネギ中毒)

■原因:
犬と同じく、猫もタマネギを摂取すると貧血を起こすことがあります。タマネギなどの赤血球に酸化障害をもたらす物質を摂取すると、赤血球に影響がおよびハインツ小体という構造が形成されます。すると、赤血球は破壊されやすくなり、貧血が起こります。
■症状:
一般的な貧血症状に加え、血色尿がみられる場合があります。
■診断・治療:
原因物質の摂取が疑われた場合、顕微鏡で赤血球上のハインツ小体を検出し、診断します。ただし、ハインツ小体が検出されなかったとしても、数日後に貧血を起こすことがあるため、該当物質の摂取が疑われた場合は、抗酸化剤の投与などの治療を開始します。
重症例では輸血が必要になることもありますが、治療反応が良ければ予後は良好です。
■治療費
輸血が必要なくらい重症であれば、費用は10万円を超えるかもしれません。
軽度であれば、点滴通院で一回3000~5000円、抗酸化剤などの投与を数日間で1000~2000円ほどかかるでしょう。

ピルビン酸キナーゼ欠損症

■原因:
ピルビン酸キナーゼという酵素が遺伝的に欠損する疾患です。ピルビン酸キナーゼが欠損すると、赤血球におけるエネルギー生成が障害され、赤血球の機能障害が起こり、貧血となります。
遺伝的な疾患であるため、生後2〜3ヶ月から慢性的な貧血が起こります。
■症状:
貧血が起こっても軽度であることが多いため、成猫になるまで症状がでないことも多くあります。
■診断・治療:
診断は、血液を用いた遺伝子検査などでなされます。
この疾患には好発品種があり、アビシニアン、ソマリ、メインクーン、ノルウェージャンフォレスト、シンガプーラ、サバンナ、サイペリアン、ベンガル、エジプシャン・マウ、ラ・パーマなどが報告されています。
治療法については、脾臓を摘出することで、貧血が改善したという報告もありますが、現在、基本的には有力な治療法は見つかっていません。4才くらいで亡くなてしまうことの多い、難しい疾患です。
■治療費
輸血、手術などによってまちまちです。手術をすれば、10万円ほどかかることもあります。

ノミによる貧血

■原因:
人間ではまず考えられませんが、猫にとっては身近な原因のひとつです。吸血寄生虫であるノミによって貧血が起こります。
血液を吸われたからと言って、あんなに小さなノミが原因で貧血に陥るというのは、にわかには信じられないかもしれません。しかし、同じ吸血する虫である蚊とは違い、ノミは寄生してから短時間で大繁殖する能力があるため、放っておくと一度で大量に寄生してしまいます。寄生したメスのノミは1日に数十個の卵を産み、その卵が孵化すると、3週間ほどで成虫となりあたらしい卵を産卵します。ノミはこうしてねずみ算式に増えていくのです。

ノミに大量寄生されると、猫の体表に黒いぶつぶつがたくさん付着します。ノミの糞です。このノミ糞を濡らした白いコットンの上などで潰すと、ジワッと赤く染まります。吸血した血液が糞として排泄されているためです。このたくさんの黒いぶつぶつ全てが吸血されたものだと考えると、貧血に陥ってしまうのも納得できます。特に、仔猫がノミに大量寄生されたときは、注意が必要です。

地域猫、外猫では当たり前のようにノミが寄生しています。では、室内飼育をしていれば安全でしょうか。実は、室内で飼育している猫でも、ノミが寄生することがあります。室内は年間を通して暖かいため、冬でもノミは活発に活動できます。室内でも冬でも、油断はできません。
■症状:
一般的な貧血症状に加え、かゆみを伴う皮膚炎を引き起こすことがあります。単純に噛み口である患部がかゆいということもありますが、ノミに対するアレルギー反応が原因となることが多くあります。
■診察・治療:
臨床上に加え、体表のノミの検出、ノミ糞の検出によってなされます。検出方法は、体表をノミとりクシによって丁寧に検査します。
治療法は、ノミの駆虫薬を使います。多頭飼育の場合は、全員一緒に駆虫しましょう。また、室内飼育においては、室内環境の清浄化が重要です。掃除機を念入りにかけるだけでも、治療効果は大きく異なります。皮膚の二次感染が発症している場合は、外用薬による消毒や抗真菌薬の投与も検討します。
予後は、多くの場合、適切に治療できれば2ヶ月もせずに改善します。
■治療費
輸血や、感染症患者の特別入院管理などの費用がかかる病院であれば、10万円を超えるかもしれません。
軽度であれば、ノミの駆虫薬で1000~2000円ほどかかります。
ノミアレルギー性皮膚炎を併発した場合は、加えて抗生剤やステロイドなどで1日に100~300円ほどかかります。

猫伝染性貧血(ヘモプラズマ症)

■原因:
マイコプラズマという微生物が、猫の赤血球の表面に感染することで発症します。マイコプラズマが付着した赤血球は、付着による障害もしくは免疫反応で赤血球が破壊されることで貧血がおこります。
この疾患は、回復後も体内に細菌が残り、あらたな感染源となる恐れがある点に注意が必要です。感染経路としては、猫同士のケンカ、ノミによる吸血などが考えられています。
条件として・・・ ノミやマダニの寄生がある、感染している母猫から出産した、夏場である、オスである、FeLV(猫白血病ウイルス)の感染がある、感染猫の輸血を受けた、などの項目に該当していると、その猫はマイコプラズマ症に感染しやすいと言えます。猫白血病ウイルスに関しては、これ自体が貧血を引き起こす疾患のため、原因を特定する必要があります。
■症状:
一般的な貧血症状に加え、発熱、脱水、体重減少、黄疸が認められます。
■診察・治療:
顕微鏡下で赤血球に感染体を検出する、血液を遺伝子検査に出すなどがあります。
治療法は、抗生剤を用います。また、免疫反応による赤血球の破壊もあるため、重症例ではステロイドや輸血も検討します。ノミやマダニの寄生が認められたら、これらの駆虫もおこないます。
早期診断、早期治療ができれば、予後は良好です。
■治療費
輸血が必要なくらい重症であれば、費用は10万円を超えることもあります。
軽度であれば、抗生剤やステロイドなどで1日に100~300円ほどかかります。

猫の貧血の予防法

以上の内容からおわかりの通り、猫の貧血の原因はさまざまです。貧血を引き起こす物質を摂取させない、ノミなどの吸血生物に寄生されないよう駆虫薬を使用する、腎臓病などの疾患を早期発見するなど、日頃からの対策や適切な観察を行うなどして、貧血を予防するようにしましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。実は今回紹介した疾患のほかにも、貧血の原因には出血をともなう腫瘍や骨髄疾患といったものもあります。猫の貧血の原因がいかに多岐に渡るかご理解いただけたかと思います。
猫は犬と比べると、疾患にかかっても体調に変化が起きにくい動物です。些細な変化でも見過ごさず、早めに動物病院に相談するよう心がけましょう。


監修/滝田雄磨(SHIBUYAフレンズ動物病院 院長)

※治療費はあくまで目安ですので、動物病院にお問い合わせください。

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