1. トップ
  2. 猫と暮らす
  3. 雑学・豆知識
  4. 「助けを必要としている猫がこんなにもいる」熊本市動物愛護センターが市民と目指す、人と猫の共生

猫と暮らす

UP DATE

「助けを必要としている猫がこんなにもいる」熊本市動物愛護センターが市民と目指す、人と猫の共生

熊本市動物愛護センターでは、飼い主のいない猫の不妊去勢手術や地域猫活動の支援などに取り組んでいます。こうした活動を支える市民やボランティアとの関わり、さらに飼育放棄や多頭飼育崩壊を防ぐための取り組みについて、獣医師の資格をもつ職員・藤野理恵さんにお話をうかがいました。

*記事内容はすべて2026年6月1日現在のものです。
各種チラシをつくって呼びかけている。乳飲み子猫はミルクボランティアのほか、職員が家に連れて帰ってお世話することも多い
各種チラシをつくって呼びかけている。乳飲み子猫はミルクボランティアのほか、職員が家に連れて帰ってお世話することも多い

市民の支えを力に、命をつなぐ地域の拠点

「飼い主のいない猫への取り組みは、ボランティアさんに力を貸していただくことで成り立っています」と話すのは、熊本市動物愛護センター(以下、センター)で働く、藤野さん。

たとえば「飼い主のいない猫の不妊去勢手術に関するボランティア」では、器具や捕獲器の洗浄など、手術現場のサポートをしてくれる市民を募集。また、TNR※手術のために捕獲の支援をしてくれるボランティアさんもいるとか。猫のお世話から不妊去勢手術まで、限られた人員でひたむきに仕事と向き合う職員と、それを支える市民の力が多くの猫の命をつないでいます。

※「Trap(捕まえる)」「Neuter(不妊手術する)」「Return(元の場所に戻す)」を行うことで、繁殖を抑え、地域猫としてともに暮らしていくための活動。
飼育放棄により収容されたニココくん。遊ぶのが大好き
飼育放棄により収容されたニココくん。遊ぶのが大好き
さかのぼれば、約20年前に熊本市は犬の殺処分を限りなくゼロに近付けることに成功しました。近年は殺処分ゼロを目指す自治体も増えていますが、熊本市のセンターがそれを目指したのは動物愛護の意識がまだあまり高くなかった2000年代初頭のことで、現状を変えようと声を上げた所長と職員たちが地道に取り組んだ結果です。2009年頃には先進的なセンターとして多くのメディアに取り上げられ、全国的に注目を集めました。当時、そんなセンターのことを誇りに思った市民も少なからずいたのではないでしょうか。

現在も殺処分はほとんど行われていませんが、重篤な傷病で回復が見込めないなどのやむを得ないケースは、毎年、数件は発生するそうです。「センターには、瀕死の猫、飼育放棄された猫、多頭飼育崩壊の現場から救出された猫など、過酷な状況を経験したさまざまな猫がやってきます。まずはセンターの現状に目を向けていただいて、助けを必要としている猫がこんなにもいるという現実を、多くの方に知っていただけたらいいなと思っています」

また、猫を新たに迎える際は、センターにいる猫も選択肢に加えてほしい、と藤野さんは話します。「子猫がほしいとおっしゃる方は多いと思いますが、成猫のほうが『おとなしい猫がいい』『先住猫と仲よくできる猫がいい』といった希望に合う猫が見つかるかもしれません。職員は1匹ずつの性格や健康状態を把握していますので、いろいろと質問してみてください」
保護団体の主催する譲渡会に参加した様子。センターの休日譲渡会は年間約10回の開催で、収容数がひっ迫した際には緊急譲渡会を行っている
保護団体の主催する譲渡会に参加した様子。センターの休日譲渡会は年間約10回の開催で、収容数がひっ迫した際には緊急譲渡会を行っている

人と猫が幸せに暮らす仕組みづくりを目指して

飼い主のいない猫への取り組みに加え、センターでは「飼育放棄や多頭飼育崩壊を未然に防ぐ取り組み」にも力を入れています。

「2024年度は、猫の飼養放棄事例の約7割が高齢の飼い主さんからの引き取りでした。入院や施設への入所、死去などの理由で飼育が難しくなる方のほか、多頭飼育崩壊に陥るケースも見られます。でも、それらの問題は高齢者に限らず、年齢を重ねたり、ライフスタイルが変化することで、誰もが直面する可能性はありますよね。だからこそ、これからは困ったときに相談できる環境づくりが必要です」

問題が深刻化してから対応するのではなく、できるだけ早い段階で防ぎたいと話す、藤野さん。今年、高齢者の飼い主さんを対象にしたチラシも作成し、本人はもちろん、親族やケアマネージャーさんなど周囲の人々にも一緒に考えてほしいと呼びかけています。「かわいいから、という一時の感情だけで猫を迎え、病気になった、鳴き声がうるさい、お金がかかるといった理由で手放すケースもあとを絶ちません。15年後、20年後のご自身の生活環境はどうなっているか、もし飼えなくなったときの“第2の飼い主”を決めてあるか、猫を迎える際には“猫の未来まで責任をもつ覚悟”が欠かせませんよね」

センターでは、熊本市動物愛護推進協議会とともに毎年「ねこと人との暮らし方未来会議」(通称:ねこ未来会議)を開催しています。今年2月に行った会議のテーマは、「高齢者と猫との暮らし方」。獣医師や保護団体、トリマーさんやボランティアさんなどが参加するシンポジウムは、多くの人で賑わいました。
2025年に開催した「ねこ未来会議」の開催風景。テーマは「飼い主のいない猫」で、会場では捕獲器の使い方を説明した
2025年に開催した「ねこ未来会議」の開催風景。テーマは「飼い主のいない猫」で、会場では捕獲器の使い方を説明した
「動物愛護は行政だけで完結するものではありません。市民、保護団体、関係機関などと連携しながら、人も猫も幸せに暮らせる“持続可能な共生のかたち”を見つけていくことがこれからの大きな目標です」
猫のモデルルーム、トリミング室、治療室、入院室、研修室などを備えた「愛護棟」。センターには「ハローアニマルくまもと市」という愛称がある
猫のモデルルーム、トリミング室、治療室、入院室、研修室などを備えた「愛護棟」。センターには「ハローアニマルくまもと市」という愛称がある
出典/「ねこのきもち」2026年8月号『猫のために何ができるのだろうか』
取材/野中ゆみ

※この記事で使用している画像は2026年8月号『猫のために何ができるのだろうか』に掲載しているものです。
CATEGORY   猫と暮らす

UP DATE

関連するキーワード一覧

人気テーマ

あわせて読みたい!
「猫と暮らす」の新着記事

新着記事をもっと見る