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〈人と猫の専門医対談〉猫アレルギーってなに?実例からわかるアレルギーの不思議 〜前編〜

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猫アレルギーを引き起こす原因物質(アレルゲン)は、主に猫の唾液や皮脂腺などに含まれ、毛づくろいによって毛やフケなどに付着します。それが人の目や鼻、口などから体内に入ったり皮膚に触れることで、目のかゆみ、鼻水、くしゃみ、せきなどのアレルギー症状を引き起こしてしまうのです。

対談の様子/海老澤先生(左)と服部先生(右)
撮影/ねこのきもちWeb編集室

実際、猫と暮らしている中で悩んでいる人も多い猫アレルギー。悩み多きこの「猫アレルギー」について、国立病院機構相模原病院臨床研究センター・センター長で、アレルギー専門医である海老澤元宏先生と、東京猫医療センター院長・服部幸先生に、それぞれのご専門からみた現状や対処法などをお話しいただきました。

大人の5人に1人が猫アレルギーを持っている!?

女性が手のグリップでなでるハッピーキャットラブリー快適な眠り。動物のコンセプトを愛する。
Nitiphonphat/gettyimages

――猫アレルギーを持っている人は、現在どの程度いるのでしょう?

海老澤先生「詳しい統計などはありませんが、世界では大人の5人に1人が猫アレルギーを持っていると言われています。猫アレルギーを発症している患者さんの年代は、子どもから大人まで幅広く、どの年齢でも発症する可能性があります

――どんなきっかけで症状が出る人が多いのですか?

海老澤先生「例えば、“猫のいる実家に子どもを連れて帰省するうちに、ある日突然、子どもに猫アレルギーの症状が出るようになった”など、そんなに猫と接していなくても発症するケースは多いです。
また、“猫のいる実家で暮らしていた頃には症状はなかったのに、大学進学などで実家を離れ、久しぶりに帰省したら突然発症した”というケースもよくあります」

――服部先生の病院を訪れる猫の飼い主さんの中にも、猫アレルギーの方はいますか?

服部先生「ときどきいらっしゃいます。軽い症状の方が多いですが、中には重い症状の方もいます
以前お会いした飼い主さんは、マスクをしていないとぜん息の症状が出てしまって家にいられないと言っていました。猫を手放すことは絶対にしたくないと、マスクをして頑張っていらっしゃいました」

猫と接することで症状が出なくなるなど、猫アレルギーはわからないことが多い

「アレルギーは、個々の状態に合わせた対処が必要」とお話される海老澤先生
撮影/ねこのきもちWeb編集室

――海老澤先生のケースはたまに猫と接触し発症した患者さんの例で、服部先生のケースは毎日猫と接する飼い主さんの例です。接触する回数と発症とは関係ないのでしょうか?

海老澤先生「アレルギー反応はとても不思議な現象で、接触回数では測れないところがあります。
以前、アトピー性皮膚炎とぜん息症状があり受診された2人のお子さんがいました。お子さん達が生まれる前から猫を飼っていて、ご両親には猫アレルギー症状はないのですが、お子さん2人は症状が重く、対応に悩んでいました。
その後数年、お子さん達の治療を続けていたところ、ある時期から急に2人とも猫アレルギーの症状が治まってきたのです。検査でも猫アレルギーの数値がグッと低くなりました。

これは “免疫学的寛容(めんえきがくてきかんよう)”と呼ばれるもので、抗原に対して免疫反応が起こらなくなる状態です。このように、猫と接触を続けているうちに、逆に症状が治まっていくケースは少なくなく、以前から学会でも報告されています
ただし、猫と接していれば必ず“免疫学的寛容”の状態になるわけではありません。なかには重い症状が続く方もいますので注意が必要です。アレルギーはそれほど個人差が大きく、また変化もします。個々の状態に合わせた対処をすることが必要です」

服部先生も、実は猫アレルギーを持っていた!?

面白い顔をした猫。
chie hidaka/gettyimages

――獣医師の中にも猫アレルギーを持っている方がいると聞きますが、本当でしょうか?

服部先生「実は、自分も少し猫アレルギーの症状があります(笑)
猫を飼い始めたのは大学生の頃ですが、獣医師になってから症状が出るようになりました。軽い鼻水と涙目になる程度で診察に影響はないため、特別な対策はしていません」

海老澤先生「服部先生は常日頃から多くの猫と接しているので、先ほどの“免疫学的寛容”の状態に近く、症状が軽いのかもしれませんね。おそらく、猫と全く接しない時期がしばらく続き、その後で再び接すると、重い症状が出るかもしれません」

服部先生「言われてみると、特に最近は症状が軽くなっているように思います。体が慣れてきたのかもしれないですね」

海老澤先生アレルギーは年齢を重ねると症状が落ち着いてくる傾向があるので、その要素も加わっているかもしれません。僕も20代の頃はスギ花粉症がひどかったですが、今では症状が全くなくなりました。
免疫力は若い時のほうが強く、年齢を重ねるとともに低下します。それに伴い、アレルギー症状も勢いがなくなってくるのです。
また、アレルギーの免疫反応は、ダニのアレルゲン、犬のアレルゲン、猫のアレルゲンなど、アレルゲンの種類によっても異なるなど複雑で、解明されていない部分が多くあります」

同じアレルギーでも猫と人間では治療が異なる!?

アレルギー症状が出た猫への治療・対処法を説明してくださる服部先生
撮影/ねこのきもちWeb編集室

――猫にもアレルギー症状が出ることがありますが、人間と同じでしょうか?

服部先生「猫にもスギ花粉アレルギーや食物アレルギー、アトピー性皮膚炎の猫もいます。そして人間と同じく、猫齢を重ねるとともに症状が落ち着いてきます
ただ、猫のアレルギーの治療にはステロイド薬を主に使うのが一般的です」

海老澤先生「ステロイド薬は体の中の炎症を抑えたり、体の免疫力を抑制したりする作用があり、さまざまな疾患の治療に使われている薬です。効果が高い反面、人間の場合は副作用も多く、医師の管理のもとで適切に利用することが求められる薬です」

服部先生猫の場合、ステロイド薬による副作用は人間に比べて少ないように思います。逆に、人間が一般的に利用する抗ヒスタミン薬は、猫には効果が小さいようです
飼い主さんのご家族にアレルギーを持っている方がいて、ステロイド薬の使用に抵抗感があると、猫に処方することを拒否される場合もあります。その際は猫の特性をよく説明して、納得いただくようにしています」

海老澤先生「アレルギーの症状は同じでも、猫と人間では効果的な治療法が異なるのですね。猫とステロイドの関係は意外で、勉強になったなあ(笑)」

猫は背中に横たわっている
ramustagram/gettyimages

海老澤先生、服部先生、ありがとうございました。
猫アレルギーは、発症するきっかけも、症状が治まる経緯にもさまざまな要素があり、ひと括りにはできないということ。それだけに、一人ひとりのケースに合った対処が必要だということがよくわかりました。

また、人間と猫でアレルギーの治療が違う点は、それぞれの専門医であるお二人の対談だからこそ、気づくことができたと言えるかもしれません。私たち飼い主は、つい猫と自分を一緒に考えてしまいがちです。でも、違うということを念頭において猫のお世話をすることも大切ですね。

次回は、海老澤先生と服部先生に「人と猫が仲良く快適に一緒に暮らすための対策や考えておくべきこと」についてお話しいただきます。お楽しみに!

猫アレルギーと上手に暮らすプロジェクト

専用ページはこちらから>

監修/海老澤 元宏先生
国立病院機構相模原病院臨床研究センター センター長
東京慈恵会医科大学医学部卒。
米国ジョンス・ホプキンス大学医学部内科臨床免疫学教室留学。
東京慈恵会医科大学大学院医学博士号取得。
2020年より国立病院機構相模原病院 臨床研究センター センター長。

監修/服部 幸先生
猫専門病院 東京猫医療センター院長
北里大学獣医学部卒業。2005年よりSyuSyu CAT Clinic院長を務める。
2006年にアメリカの猫専門病院 Alamo Feline HealthCenterにて研修プログラム修了。
2012年、東京猫医療センターを開院。2014年より「JSFM(ねこ医学会)理事。
『猫を極める本 猫の解剖から猫にやさしい病院づくりまで 』(インターズー刊)他、著書多数。

文/かきの木のりみ(ライター)
構成/ねこのきもちWeb編集室

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