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ゴミ置き場で発見された子猫はエイズキャリア 飼い主の献身的な支えで、見違えるほどの美猫に変貌を遂げる

野良猫だったはなちゃん。出会った当時は傷だらけで、壮絶な生活を送っていたのが容易に想像できるほど痛々しい姿でした。そのはなちゃんが飼い主さんと出会えたことで、見違えるほどの美猫へと変貌を遂げます。

ねこのきもちWEB MAGAZINEでは、突然の出会いから現在に至るまでのはなちゃんについて、飼い主さんに聞きました。

ゴミ置き場でうずくまっていた、小さな子猫を発見

保護当時のはなちゃん
保護当時のはなちゃん
@satsukiqingshui
はなちゃんと飼い主さんの出会いは、2017年の8月のこと。家の勝手口に置いたゴミを漁られるようになり不審に思っていると、家の前を歩くガリガリの子猫を見かけた。ゴミを漁っていたのは、この野良猫ちゃんかも——ふと、そんなことが頭をよぎる。

それから数日間は見かけることはなかったが、その後もあの子猫のことが気になりあたりを探すと、ゴミ置き場のネットの上で小さく丸まっている、あの子猫を見つけた。

何日も食べていないのか、子猫はガリガリで衰弱していた。慌ててゴハンと水を与えると、子猫は立ち上がって食べてくれた。きっとこの子猫は、ずっと誰かの助けを待っていたのだろう。懸命に食べる姿を見ながら、「気づかなくてごめんね」と、飼い主さんは泣いたそうだ。

当時について、飼い主さんは「はなちゃんの顔を見ると、『私のことをよろしくお願いします』と言っているように見えた」と振り返る。

すぐに動物病院に連れて行き、飼い主さんはその日のうちに子猫を迎えることに。名前は「はな」と名づけた。ちょうどこの日は、飼い主さんが飼っていた愛犬の2回目の月命日だった。

弱りきった痛々しい姿のはなちゃん。のちに「エイズキャリア」だと判明

保護当時のはなちゃんは目がうつろで、耳はただれており、毛もハゲていた。つらそうなはなちゃんの姿を見るのは、本当に胸が痛んだという。

家に迎えてからも治療の日々が続き、猫風邪の治療などで通院するなかで、はなちゃんは「エイズキャリア」だと判明した。現在、猫エイズウイルス感染症は治療法がないため感染すると完治はのぞめないそうだが、症状のない通称「キャリア期」のステージが長い猫も多いという。

この頃のはなちゃんは、皮膚や口の粘膜が弱くてゴハンを噛めなかったが、病院での治療と良いサプリメントに出会えたことで少しずつ元気になり、ゴハンを噛めるようにまで回復したそうだ。

食も細くてほとんど寝ていたはなちゃんだったが、飼い主さんの献身的な支えにより、少しずつ少しずつ回復の兆しを見せていく。

「このままずっとエイズを発症しないで、元気でいてほしい」

はなちゃん
飼い主さんが出かける気配を察知すると、急いでソファの上に行き「遊ぼう!」と、かまってちゃんになるのだそうだ。「行かないで!」と必死なはなちゃんの姿が愛おしく、飼い主さんはなかなか出かけることができないという。
@satsukiqingshui
今では見た目も見違えるほどになり、オッドアイが印象的な美猫へと変貌を遂げたはなちゃん。甘えん坊で抱っこが大好きで、飼い主さんのおなかの上で眠るのが大好きなのだそうだ。

はなちゃんがエイズを発症しないように、ストレスのない環境でのびのび暮らしていけるようにと、家族みんなではなちゃんのお世話をしているという。

出会った当時、亡くなっていてもおかしくない状況だったはなちゃんだが、彼女の生きる力は驚くほどに強かった。「このままずっとエイズを発症しないで、元気でいてほしい」——飼い主さんは毎日そう願っている。

はなちゃんと同じように勝手口に現れた猫・ゆうくんを保護することに

保護当時のゆうくん
保護当時のゆうくん
@satsukiqingshui
2021年9月のある日、飼い主さんは以前から家の勝手口に現れていた野良猫・ゆうくんを保護した。無事に保護するまでの道のりは長かったという。

ゆうくんを初めて見たとき、ひどく痩せており子猫かと思うほどだったが、骨格の大きさから成猫だと思われた。怪我をしており、右目は開かずに膿が出ている状態だったそうだ。

はなちゃんのことを考慮し、新しく猫を迎えることを考えていなかった飼い主さんは、ボランティアの方に引き取りをお願いする予定だった。しかし、ゆうくんは捕獲器になかなか入らず、パタリと姿を見せなくなってしまう。

それから1カ月半が経ったある日、近所の家の軒先を歩く険しい顔をしたゆうくんを見かけた。そのときに、飼い主さんが「ゴハンを食べにおいで」と話しかけて帰宅すると、なんと勝手口の窓からこちらを覗くゆうくんの姿があり、驚いた。すぐにゴハンをあげると、ゆうくんは必死にゴハンを食べたという。

それからゆうくんは何日もずっと、排泄時以外は勝手口にいるようになり、家の中を覗いたり、はなちゃんと見つめ合ったりしていた。そのときのゆうくんは、いつも寂しそうな顔をしていたそうだ。

膿が出ている右目は深刻な状態で、もう時間がない——ゆうくんを家族に迎える決意をし、やっとのことでゆうくんの保護に成功する。

ゆうくんも「エイズキャリア」だと判明

家に来て4カ月が経過した頃のゆうくん
家に来て4カ月が経過した頃のゆうくん。目がぱっちり開いて、穏やかな顔つきになったのが印象的だ。
@satsukiqingshui
はなちゃんがエイズキャリアのため、ゆうくんとはなちゃんは別々の部屋で暮らすこととなった。2匹の食器を一緒に洗わないなど、日常生活での配慮にも十分に気をつけたそうだ。

ゆうくんは外生活が長かったため、家での生活に慣れさせるのは容易ではないと覚悟していた飼い主さんだったが、何度も心が折れそうになることもあった。そんなときは、ゆうくんが子猫だった頃を想像しながらお世話をしていたという。

はなちゃんのことも心配だった。これまでのびのびと暮らしてきたはなちゃんがストレスを感じ、病気が発症してしまわないかと不安だったが、当のはなちゃんは何事もない様子でゆうくんを迎えてくれたという。その姿に、飼い主さんは救われたそうだ。

部屋を分けているため2匹は触れ合うことはできないが、ドア越しに互いの顔を見つめ合ったりと、日常で微笑ましい光景がよく見られるという。

時間をかけながら、少しずつ家での生活に慣れていっている最中のゆうくん。病院で治療を受けて今では目がぱっちり開くようになり、穏やかな顔つきになった。

これも何かの縁なのかわからないが、後にゆうくんもはなちゃんと同じく、エイズキャリアの猫だと判明する。去勢手術時のウイルス検査でわかったそうだ。

はなちゃんとゆうくんの家族になれて、感謝の気持ちでいっぱい

くつろぐはなちゃん
@satsukiqingshui
ゆうくんのことを優しく迎えてくれたはなちゃんに、飼い主さんはいつも「はなちゃんが一番だよ」と伝えるようにしている。
「はなちゃんはもうすぐ5才になります。病気のことが心配ですが、はなちゃんはそれを忘れさせてくれるくらい毎日元気いっぱいで、嬉しいです。いつもそばにいてくれて、ありがとうの気持ちでいっぱいです」
ゆうくんは、出会った頃に比べたら猫らしい表情やしぐさをするようになった。まだ撫でることはできないが、ゆっくりと距離を縮めていきたいという。
「ゆうくんが小さい頃から家猫になれていたら、きっと大人しくて人なつっこい甘えん坊さんだったと思います。いつか、そうなる日が待ち遠しいです。今年の冬は寒いし雪もよく降るので、ゆうくんがおなかを空かせて震えながら寝る姿を想像すると、あのとき保護できて本当によかったです」
はなちゃんのことを考えると、ゆうくんを家族に迎えるのは相当の葛藤があった。だが、今では「はなちゃんとゆうくんの家族になれて、本当によかった。出会いに感謝しています」と、飼い主さんは話す。

出会ったときは驚くほどガリガリで、傷だらけだったはなちゃんとゆうくん。つらい境遇にいた猫でも、飼い主さんからたくさんの愛情を受けることで、本来の姿を取り戻せる——そんな奇跡を、2匹に教えてもらったような気がする。
写真提供・取材協力/Instagram(@satsukiqingshuiさん)
※この記事は投稿者さまにご了承をいただいたうえで制作しています。
参考/ねこのきもちWEB MAGAZINE『「猫エイズ」を発症したらどうしたらいい? 獣医師が回答します!
取材・文・構成/雨宮カイ
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