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人間嫌いの猫もコロッと甘えん坊にさせる!犬派だった父が「猫使い」と呼ばれるようになるまで

3匹に群がられて「重い、疲れる」と父が送ってきた写真
犬派の父と猫派の母に育てられた筆者は、犬も猫も大好きで、小さい頃からどちらも飼っていました。最後の犬は2年前に亡くなり、実家には猫が常時10匹前後います。母猫が子猫4匹を率いて庭にやってきたり、妊娠している母猫を保護したりで一気にドカンと増える機会が多かったのです。そんな環境の中、最初は猫に全く興味を示さずにいた父に変化が現れ始めます。

猫に興味を示さなかった犬派の父がひそかに「一匹猫」と絆を築いていた!

初代「一匹猫」のくるみ。自分を犬だと思っていました
犬派の父にとって、我が家の猫たちは「いつも、いつの間にかまた増えている存在」にすぎなかったと思います。一度、12キロの黒ヒョウのような黒猫を保護し、その猫が廊下をノソノソ歩いていた時は、「な、なんだ、あのヒョウみたいなのは!」とびっくりしていましたが。それでも、父は「勝手に増やして!」と怒ることもなければ、積極的に猫に関わることもありませんでした。

そんな立ち位置の父に目を付けたのが、我が家の「一匹狼」ならぬ「一匹猫」たちです。10匹前後の猫、みんながみんな仲よしだとありがたいのですが、個性が強くて孤立する猫もいます。

古くは、生後10日ほどから2匹の夫婦犬に育ててもらったくるみです。くるみは自分のことを犬だと思っていたようで、ほかの猫と一緒にいることを好まず、猫のいない父の部屋を「避難所」としてたびたび訪れていました。いつしか父の部屋にいるのが当たり前のようになっていて、父も「この猫はくるみ」として認識し、かわいがるようになっていたようです。くるみが病気でこの世を去り、私と母がくるみの亡骸を目の前にして悲しんでいた時、父も輪に加わって一緒に悲しみました。正座して「かわいそうにな…」とつぶやき、くるみの身体をなでて涙を流した姿が忘れられません。

猫を「かわいい」と言ったことは一度もない父。でもおそらく、くるみに対する愛情はずいぶん前から感じていたのではと思います。

気難しい猫たちがみんなメロメロに! 「懐いて甘えてしょうがない」

怖がりののんちゃんがお腹を見せてなでてもらっているなんて!
くるみが亡くなった後、しばらくして私は実家を出ることになりました。7年前、ライターとしてフリーランスなるにあたり、実家からも独立したかったというのが表向きの理由。実際は、大の仲よしだった兄妹猫が大げんかして引き離す必要があり、ついに部屋数が足りなくなったために猫を一匹連れて出たという裏事情もあります。

とは言え、実家の猫たちが心配なため、車で15分の距離のところに住み、頻繁に行き来しています。

私の引っ越しは、明らかに父と猫たちの関係に影響を与えました。人間と猫たちの部屋割りが変わり、私が使っていた部屋に父が入ることになりました。最も大きな部屋であるかわりに、「一匹猫」たちももれなく一緒についてくることに。

人懐っこく、どんな猫とも仲良くできるのですが、スプレー行為がやめられないメル、とにかく人間を恐れているのんちゃん、か弱そうに見えながら実は気が強くて裏番長タイプのすぅの3匹です。

のんちゃんとすぅは、それぞれ9年、13年うちにいますが母と私には全然慣れず、抱っこできたこともほとんどありません。私が実家を出てからはますます距離ができてしまい、会いに行くと隠れて出てきてくれません…。

ところが! 父にはベタベタなんです。父は「お父さん(自分でこう呼ぶ)は、何もしてないよ」と言うのですが、3匹は父を取り合いするほどに甘え、懐いているのです。一体、なぜ…? 「お父さんはあっち(猫)から来たら、なでてあげてるよ。多分きみたちは、猫にしつこくしてるんじゃない?」なんて澄ました顔で言うものだから、ちょっと悔しいです(笑)。

「一匹猫」たちにとっては、「猫大好き大好き~♪」という母や私より、程よい距離感を保つ父の方が近寄りやすいのかもしれません。母と私に「まるで猫使いだね」と言われ、父はまんざらでもないようです。

文句を言いながら猫の写真を大量に送ってくるのが日課に…

3匹のうち誰かしら、もしくは全員が常に父にくっついている
いまだに猫を「かわいい」「好き」など言ったことがない父ですが、LINEでしょっちゅう猫たちの写真を送ってきます。ほぼ構図が変わらない写真を、連続で2秒ごとくらいに何枚も何枚も送ってくることもあります。(多分、一斉送信の仕方がわかっていない…)

「3匹が常にくっついてきて重いし疲れる。なんとかして」
「なついてしょうがない」


こんな風に文句ばかりを送ってきますが、かわいがっているとしか思えません。

いまでは父は我が家のすべての猫を把握しており、朝、各部屋のシャッターとカーテンを開け、猫の水を取り替えることから一日がスタートするそうです。

重い猫砂やご飯の買い物にも率先して行ってくれます。猫を動物病院に連れて行くときは、あらかじめ映画や海外ドラマをスマホにダウンロードして、待ち時間に観ています。(待ち時間の工夫を覚えた)

ふと気付けば猫の世話に深くかかわるようになっていた父。父の協力なしには、こうも長年にわたって猫を多頭飼いすることはできなかったでしょう。

父の好きな家族旅行はできなくなった…その分、父娘旅行へ

「なでる」と「写真を撮る」が同時進行できずブレた写真を送ってくる父
犬だけを飼っていた時は、犬も連れてよく父の好きな旅行に家族でいきました。しかし、猫を多頭飼いするようになってからは、母か私のどちらかが残る必要があり、家族そろって遠出することはできなくなりました。その結果、母は近場で私と観劇やコンサート鑑賞を楽しみ、父は海外旅行へ私と2人で行く機会が増えました。今まで訪れたのはギリシャ、カタール、タイ、台湾など。日ごろの感謝を込めて「父にはただ楽しんでもらう」ことだけを考え、私はアテンドに徹します。

友人には「父娘で海外旅行ってすごい! 仲いいんだね」と言われますが、私にもそれなりの反抗期があり、若い頃は父と数年間口をきかないこともありました。あの頃を振り返ると、まさか父と海外旅行に行くだなんて、想像もできませんでした。父が猫の世話をするというのは、もっと考えられないことでしたが。

いつか父が「猫ってかわいいんだな」と口に出して認めることがあるのか、楽しみにしています。果たしてその日はやってくるのか…。

ねこのきもちWEB MAGAZINE/2022ねこの日
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取材・文・写真/
賀来 比呂美
雑誌の編集者を経て2016年よりフリーランスライターに。
猫数十匹の飼育経験あり。現在は人生で初めて猫一匹(ねね)と向き合った生活を満喫中。
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