猫が好き
UP DATE
生存率1%以下、安楽死の選択も… 保護した子猫に重病が発覚 壮絶な闘病生活の末に起こった奇跡とは?
投稿したのは、飼い主の@kuroto_mhkoさん。昨秋、勤め先の駐車場で、思いがけず、子猫を保護。お迎えしてすぐ先住猫2匹と打ち解け、幸せな日々を送っていましたが、ある日、命を脅かす病にかかっていることがわかりました。
医師から「生存率1%以下」と告げられる中、懸命に子猫のケアを続ける飼い主さん。それに応えるように子猫もまた辛い治療を静かに受け入れます。厳しい闘病生活が続く中、ある日、子猫の体に良い兆しが現れて……。
当時の状況や現在の子猫の様子について、飼い主さんに詳しいお話を伺いました。
普段は、先住の2ヶ月先に保護された推定1歳2ヶ月の女の子「仁虎(にこ)」ちゃんと、今年1月21日に保護した「怜音(レネ)」ちゃんと一緒に暮らしています。
今年5月、飼い主さんは、「2022.10.30、母猫に置き去りにされ泣き喚いていたのを発見。皮脂と汚れにまみれ、栄養不良で頭が大きく手足が短かった子が、お風呂好きで手足の長い綺麗なお姫様に」とのコメントを投稿。類ちゃんとの出会いから今までの軌跡に思いを馳せました。
類ちゃんと飼い主さんが最初に出会ったのは、2022年10月28日のこと。出社した飼い主さんは、上司から「駐車場の石垣の隙間に子猫がいる」と告げられました。
飼い主さん:
「私が“猫好き”であることを知っている上司から、『母猫を探して大声で鳴いていて、カリカリを与えてみても食べられない。かわいそうだから、助けてあげて』と頼まれました」
早速、飼い主さんはその足で駐車場へ。石垣の前で足を止めて、「ニャア、ニャア」と猫の真似をして呼びかけてみると、子猫は転がるような勢いで飛び出てきました。それがのちの類ちゃんです。飼い主さんは、生後間もない子猫の姿を想像していましたが、目の前に現れた類ちゃんは成猫のように大きく見えたため、とても驚いたそうです。
飼い主さん:
「類ちゃんも、『ママが帰ってきたと思って飛び出したら、変なのがいた!』と言いたげな表情を浮かべていたので笑ってしまいました(笑)一方、私は、かわいらしい類ちゃんに一目惚れ。『この子を冷たい石垣の隙間に置き去りにすることはできない』と思いました」
こうして、飼い主さんは、類ちゃんを保護することを決意。早速、類ちゃんに話しかけながら液状おやつを与えてみると、すんなり食べてくれたものの、再び、石垣の隙間に隠れてしまいました。長期戦になると思った飼い主さんは、いったん仕事に戻りましたが、頭の中は類ちゃんのことでいっぱいだったそうです。
飼い主さん:
「昼休み、家に帰ってキャリーと猫用のミルクを車に積んで職場に戻りました。また、猫の鳴き真似をしながら呼んでみると、類ちゃんはすぐに出てきて、皿に入れたミルクを一気に完食。私は、類ちゃんのすぐ横にしゃがんで『ねえ、うちの子にならない?一生大事にするよ?』と口説きましたが、抱き上げようとすると逃げられてしまいました」
翌日、会社は土曜日でお休みでしたが、飼い主さんはミルクと離乳食を持って、類ちゃんの様子を見に行きました。そうして翌々日になると、類ちゃんは石垣の隙間から出て、飼い主さんを待つように。飼い主さんが用意したごはんとミルクをすべて食べ終えた類ちゃんは、「もっと!」と催促するまでになりました。そして、運命の瞬間が訪れます。
飼い主さん:
「手持ちのごはんが無くなってしまったので、一度、家に戻り、おやつを持って、再び、類ちゃんのもとへ。そして、『うちの子になりなよ』と声をかけながらキャリーにおやつを入れると、類ちゃんは警戒しながらも自ら中に入ってくれました。そのまま扉を閉めて、一緒に家へ。3日かけて口説き落とし、10月30日にようやくうちの子になりました」
■先住猫たちと死別しペットロスに 飼い主さんの悲しみを癒やした類ちゃん
飼い主さん:
「後輩から『引取り手が無い双子の猫がいる。1匹だけでもいいから助けてほしい』とせっぱつまった様子で連絡が来ました。抱き合っている兄弟猫の写真を見たら、引き離すのはかわいそうに思えて一緒にお迎えすることに。そうして14年間、兄弟猫と幸せな日々を送ってきましたが、2021年に弟猫が腎臓癌で他界、2022年には兄猫もあとを追うように虹の橋へ。あまりの辛さに『もう猫は迎えない』と心に決めていました」
飼い主さん:
「それまでの猫との出会いは、私自身が放っておくことができなかったり、誰かから頼まれたりしたことがきっかけでした。でも、類ちゃんを保護したときは、初めて、『どうしてもうちの子にしたい』という強い思いに駆られたのです。それも『運命だったのかな』と思う日が来るのですが……。同居している両親も、類ちゃんを一目見て『かわいい』と大喜びして、すんなり家族の一員になりました」
■動物病院でわかった事実にびっくり おうちに迎えられた類ちゃんの様子は?
翌日、飼い主さんは、類ちゃんの健康診断をしてもらうため、車で片道1時間かかる動物病院へ。すると、男の子だと思っていた類ちゃんは、生後4ヶ月の女の子であることがわかりました。こうして、新たに類ちゃんという妹を迎えることになった仁虎ちゃんと怜音ちゃん。3姉妹と飼い主さんはともに新たな生活を始めることになりました。
飼い主さん:
「保護した初日から、腕の中ですぐに眠ってしまうほど甘えん坊で、威嚇するようなこともありませんでした。湯たんぽを入れた猫ベッドの中ではすぐに寝落ちすることも。それでも、類ちゃんなりに緊張はしていたようで、2週間が過ぎる頃までは、いつも鼻の頭がびしょびしょに濡れていました。また、先住の仁虎ちゃんが元気すぎて『もう一緒に遊ぶの嫌だ!』と、私に助けを求めてくるのがかわいらしかったです」
こうして、少しずつ、飼い主さんの家での暮らしに慣れていった類ちゃん。ある日、飼い主さんは、類ちゃんを自分の部屋に連れて行き、自由に過ごしてもらうことにしました。
飼い主さん:
「夜、私がベッドで寝ていると、類ちゃんが首元にやって来て、そのまま丸まって夢の中へ。人間に信頼を寄せる類ちゃんの姿を見て、とても心の強い子だなと思いました」
■突然、病に伏した類ちゃん “生存率1%以下”から奇跡の生還
飼い主さん:
「先生からは、命の期限がすぐそこに迫っていて、高度医療センターに連れて行くのは難しいと言われました。また、今ここでで処置をしても生存率は1%以下、入院しても、今夜、亡くなるかもしれないほど重篤な状態であると告げられました。そうしている間にも、血栓症による激痛に襲われる類ちゃん。私が『大丈夫。助けるよ』と声をかけると、まるで言葉を理解しているかのようにピタリと鳴くのを止めました。安楽死も考えたほうがいいと言われましたが、私を見上げる類ちゃんの眼差しは、まだ生きることをあきらめていないように感じられたのです」
「私があきらめたら確実に可能性はゼロになります。治療をお願いします」と申し出た飼い主さん。先生は、これを承諾し、類ちゃんは入院しながら3日間、治療を受けることになりました。幸い、無事に帰宅することはできたものの、類ちゃんは下半身を動かすことができないため寝たきりの状態に。先生の見立ては「麻痺は残り、血流は回復せず、いずれは足先から壊死していくだろう」と厳しいものだったそうです。
飼い主さん:
「車の助手席に類ちゃんを乗せて家に帰る途中、涙が止まらなくなりました。先生が決めてくれた誕生日の7月1日を前に亡くなってしまうかもしれないと思うと、悲しみより、その理不尽な運命に激しい怒りが……。『類ちゃん、まだ終わってない。ママが一緒にいるから頑張ろう』と自分を奮い立たせるように、何度も繰り返し声をかけました」
こうして、予断を許さない状況の中、類ちゃんの闘病生活が始まりました。飼い主さんは、投薬とマッサージを続けながら、仕事の休憩時間に帰宅。少しでも壊死を防ぐことができるよう、数時間置きに体位交換をしました。
類ちゃんは、体を動かされたり、触れられたりすることで生じる痛みに耐え、飼い主さんがすることを一度も嫌がる素振りは見せなかったといいます。オムツを拒否した類ちゃんに、「トイレがしたくなったら教えてね」と飼い主さんが声をかけると、鳴いたり、這いずり回ったりして教えてくれたそうです。
飼い主さん:
「『まだ若いから、時間をかければ回復する可能性もある』という先生の言葉を信じて、私は、類ちゃんの体が壊死しないように1秒でも多く時間を稼ごうと思いました。その一方で、壊死が始まったら苦しまないように安楽死を決断する覚悟も……。私のほうが何度もくじけそうになりましたが、寝たきりになっても必死に頑張る類ちゃんの姿を見て励まされました」
そうして闘病生活が1ヶ月を過ぎた頃、類ちゃんの体にうれしい変化が。何と、壊死を危ぶまれた両足に血流が戻り、明らかに回復し始めたのです。
飼い主さん:
「長らく動くことができなかったため、重症だった左足に大きな褥瘡ができてしまい、その治療も大変でした。10月23日現在、爪先が硬くなって動きに不自由は残っているものの、類ちゃんは、家の中を元気に走り回っています」
■家の中を駆け回るほど回復した類ちゃん 飼い主さんが思う“猫と暮らす魅力”とは?
飼い主さん:
「『出会ってくれてありがとう』という気持ちでいっぱいです。命の強さ、生きようとする力の凄さを教えてもらいました。あの日、類ちゃんを保護していなければ、人知れず、病に苦しみ息絶えていたかも……。そう考えると、私はこの強く気高い猫を生かすために選ばれたのかなと考えることもあります。血栓症を起こした子は、予後が悪いと言われていますが、類ちゃんは、再び、歩くことができるようになりました。今、楽しそうに飛び跳ねる類ちゃんから、闘病による悲愴感はまったく感じられません」
現在、類ちゃんは、仁虎ちゃんと怜音ちゃん、飼い主さんに見守られながら穏やかな日々を送っています。当面の目標は「発病から半年を迎える2024年のお正月を家族全員で迎えること」。紆余曲折を経て、類ちゃんと飼い主さんは、さらに強い絆で結ばれたようです。最後に、“猫と暮らす魅力”について伺いました。
「今の類ちゃんは、『生きてるって楽しいね。一緒にいると楽しいね』と全身で表現しているように見えます。私もまた、風に吹かれ、陽だまりに温められ、柔らかな表情を浮かべている類ちゃんがそばにいるだけで幸せです。ともに生きる楽しさ、愛しさを感じさせてくれるところが猫と暮らす魅力だと思います」
写真提供・取材協力/@kuroto_mhkoさん
取材・文/佐東みかん
UP DATE