その体をだら~り、ぐにゃり。やっぱり、猫は液体!?
2017年、イグノーベル賞を受賞して注目を浴びた「猫=液体説」。その論旨は「猫は容器に合わせて体型を変えられるので液体も同然?」というもの。
ねこのきもちに寄せられた証拠写真をもとに検証すべく、動物学者・今泉忠明先生にお話しを伺いました。
容器によって形を変える。ゆえに猫は液体⁉
2017年、「人を笑わせ、考えさせてくれる業績」に与えられるイグノーベル物理学賞を受賞した「猫=液体説」。液体を「容器によって形を変える性質のもの」とすれば、鍋に入れば丸くなり、段ボール箱に入れば四角くなる猫も液体なのでは?
「猫が液体のようにしなやかなのは、体のしくみや習性と関係があります」と今泉先生。
さっそく検証してみましょう。
猫の液体化はすなわち柔軟性である
「こんにちは! ピッチピチの“箱入り息子”です」(A・Fさん)
どん兵衛くん(オス・1才/ラグドール)
柔らかさの秘密は約240個の骨にあり
入った容器によって猫の体が丸くなったり、四角くなったりできるほど柔らかいのは、骨格に特徴があるから。人の体が約200個の骨からなるのに対し、猫は、なんと約240個。そのぶん関節も多く、可動部が多いため、より柔軟な体勢になれるのです。(今泉先生)
猫の液体化はすなわちバランス感覚である
「だら~り、クッションからこぼれそう」(M・Aさん)
タイガくん(オス・1才)
発達した三半規管と前庭がカギ
狭い場所で絶妙な体勢でバランスを保っていられるのは、猫が優れた平衡感覚をもっているから。動物の耳の奥には、平衡感覚をつかさどる三半規管と前庭器官がありますが、猫はほかの動物に比べ、これら器官が発達しているのです。(今泉先生)
猫の液体化はすなわち密着性である
「宇宙船のような猫タワーでぐっすり睡眠中」(M・Sさん)
ライアンくん(オス・7才/ベンガル)
体を何かにくっ付けて安心する習性がある
狭い場所へもすっぽりと入り込んでしまう猫たち。こうした密着したがる習性は、穴蔵を住処としていた野生時代の名残で、周りを囲まれた場所にピタッとはまると安心するからといわれています。そのほか、体を暖めたいときや甘えたいときも何かに体をくっ付ける習性があります。(今泉先生)
猫の液体化はすなわち伸縮性である
「タオルでつくったハート型にうまく伸縮しました」(M・Hさん)
毬萌ちゃん(メス・10才/スコティッシュフォールド)
骨をつなぐ靭帯が柔らかで、その伸縮率は約2倍
狭い場所で小さく丸くなったり、リラックスして体を長く伸ばしたり……。猫がこのように伸縮自在なのは、骨の数の多さに加え、骨と骨をつなぐ靭帯がほかの動物に比べ柔軟性に富んでいるから。関節をすべて伸ばすとふだんより2~3割は長くなります。(今泉先生)
お話しを伺った先生/哺乳動物学者 今泉忠明先生
参考/「ねこのきもち」2020年8月号「やっぱり猫は、液体でした。」
撮影/中川文作
文/犬神マツコ
編集/ねこのきもちWeb編集室