猫は「寝る子」が語源という説もあるほど、よく寝る動物です。では、起きている時間で猫はどのような行動をしているのでしょうか?
今回は、「猫の睡眠のヒミツや起きているときの行動」について、獣医行動診療科認定医、ペット行動カウンセラーの藤井仁美先生に教えていただきました。
猫の睡眠は1日に16時間! 睡眠にまつわるヒミツ5つ
1日の2/3の時間を睡眠に費やすといわれる猫。まずは、猫の睡眠にまつわるヒミツを紹介します。
ヒミツ1.睡眠時間が長いのは肉食動物だから
肉食動物は全般的に睡眠時間が長めです。それは、肉食動物にとって大切な「獲物を捕る」「縄張りを守る」ことは、エネルギーを要するためです。
猫もその行動に力を発揮できるよう、無駄な体力は使わずに温存。そのためには、長い睡眠時間が必要になります。
ヒミツ2.じつは熟睡している時間は短め
人は寝ているときに、「深い眠り」と「浅い眠り」を繰り返しています。猫の睡眠も同様で、座った状態などでウトウトしている時間と、体を横たえて寝ている時間があります。
それと合わせると16時間ほどになりますが、ウトウトしている時間のほうが長いようです。
ヒミツ3.子猫&高齢猫はさらに睡眠時間が長い
成長ホルモンは寝ている間に分泌されるため、成長期の子猫はより長い睡眠時間が必要になります。
一方、活動量が低下する10才以上の高齢猫も、体力温存のために睡眠時間が増える傾向に。そのため、子猫と高齢猫はより長く寝ていることになります。
ヒミツ4.寝ているときのポーズに性格が出る
季節によって猫の寝姿が変わりますが、性格もポーズに反映されるもの。大らかな猫だと急所であるお腹を大胆に出しますが、警戒心が強い猫だと体を丸めたり伏せたりして、お腹を隠します。
ちなみに寝姿のスタンダードは、足を投げ出して脇腹を見せる横向きポーズです。
ヒミツ5.夢を見るし“寝言”もいう
人と同様に、猫も夢を見ているとされています。ときおり睡眠中に体をビクッとさせたり、ムニャムニャと声を出したりするのは、夢を見ているときの反射的なしぐさです。ひょっとしたら、夢の中でネズミを追っているのかもしれませんね。
猫が起きている8時間、なにしているの?
1日に16時間もの時間を寝て過ごす猫。では、起きている残りの8時間(480分)で、猫はどのような行動をしているのでしょうか?
今回の特集では、読者に「愛猫の行動時間」についてのアンケートに回答してもらい、そのデータをもとに、ねこのきもち編集室で時間を算出しました。
調査の結果、猫の行動時間が長い順に紹介します。
1.窓際で外を眺める&休息タイム(80分/480分)
室内飼いの猫にとって、窓の外の景色や鳥などを眺めることは暮らしの中の「いい刺激」になります。そのため、起きているときは窓際で過ごす時間が80分と、一番長いのでしょう。
外を眺める場所は、高さがあると視野が広くなるため、出窓や猫タワーなどを好む猫が多いもの。ただ、ずっと外を眺め続けているわけではなく、そこにとどまって休息もします。窓から入る日差しが気持ちよくて、まどろむ時間も長いはずです。
集中して眺めているときは、かまわないようにしよう
窓越しとはいえ、鳥などを眺めている猫は、ひそかに興奮しているものです。そのようなときに飼い主さんが背後から触ったりすると、驚きのあまり防衛本能から人を引っかいたりしてしまうケースも。
猫が集中しているときはむやみにかまわず、たっぷり野生気分を堪能させてあげましょう。
2.毛づくろいタイム(70分/480分)
舌の表面のトゲをブラシのように使って全身をなめる、毛づくろい。体の汚れなどを取り除いて毛並みを整えるほか、自分のニオイを付けることで気持ちを落ち着かせる作用もあります。
猫にとっては大切な行動で、ここでは1日平均70分でしたが、起きている時間の1/3は毛づくろいに費やしているという説も。
他者を毛づくろいするのは、親愛の表れ
自分自身を毛づくろいするように、同居猫や飼い主さんの手などをなめる猫も。他者を毛づくろいするのは、親愛の表れです。猫が手の甲をなめたら、そのままなめられたところを使ってなでて、お返しをしましょう。
3.遊び&運動タイム(65分/480分)
猫にとって遊びは単なる娯楽ではなく、野生時代の“狩り”の疑似体験をする大切な時間です。同時に、猫タワーの上り下りや、廊下を走ったりする運動も健康維持には欠かせません。
猫の年代によって大きく変わると思いますが、若い猫やベンガルなど活発な猫種は、遊びの時間が長ければ長いほど嬉しいでしょう。
たくさんの回数遊んであげよう
飽きっぽい猫は長い時間遊ぶより、短い時間で何回も遊ぶほうが楽しめるもの。できたら、1日に10分×3回は遊ばせましょう。獲物代わりのおもちゃには好みがあるので、猫がよく遊ぶ素材や長さ、形、動きを見極めて選んでみてください。
4.飼い主さんに甘えタイム(60分/480分)
飼い猫はいくつになっても、飼い主さんは“母猫”で自分は“子猫”という感覚でいます。ただ、甘え方はさまざまで、ストレートに抱っこされたがる猫もいれば、飼い主さんに体をくっ付けただけで満足する猫も。
一般的に、ラグドールなどの長毛種に甘えん坊が多く、トータルで2~3時間ベッタリという猫も。
安心したいときは、飼い主さんに甘えたくなる
猫は高齢になると関節炎から動きが鈍くなったり、認知機能が衰えたりして不安を感じやすい傾向に。すると、安心したい気持ちが強まり、飼い主さんに甘える時間が長くなります。
愛猫が飼い主さんの膝の上にのっていたらできるだけ動かないなど、甘えたい気持ちに応えてあげましょう。
5.お気に入りの場所でゴロゴロタイム(55分/480分)
日当たりのいい場所や、自分のニオイが付いたお気に入りのソファなどでくつろぐのは至福のとき。天気のいい日は日光で体を温めるため、お腹を出してゴロゴロする時間は長くなるでしょう。そのようなゴロゴロタイムを経て、やがてウトウトタイムに移るパターンも。
お腹は“急所”だから、気安く触らないようにしよう
飼い主さんのことを意識していないときは、甘えたくてゴロゴロしているわけではありません。「お腹をなでたい」「モフモフしたい」という気持ちはグッとこらえて、愛猫を近くで見守りましょう。
6.室内パトロールタイム(40分/480分)
元来、猫は休息や子育てをする縄張りを拠点とし、その周りの行動圏を毎日パトロールします。飼い猫も、縄張りである家の中をチェックするのは大事な日課に。
1日に数回、歩き回ったり、高い場所から室内を眺めたり、ニオイを嗅いで確認したりするでしょう。若い猫やオスの猫ほど縄張り意識が強いため、より長くなる傾向に。
好きな場所に行けるようにしよう
家の中をパトロ―ル中に、「ここのドアを開けて」などと鳴いて訴える猫も。猫が行ってもいい場所であれば、自由に歩き回れるように対応してあげましょう。
猫は1日の多くの時間を睡眠に費やし、起きているときの行動にも理由があります。飼い主さんは愛猫の行動を理解し、快適に過ごせるように配慮してあげましょう。
お話を伺った先生:獣医師、獣医行動診療科認定医、ペット行動カウンセラー 藤井仁美先生
参考/「ねこのきもち」2022年4月号『「よく寝る子」は起きてるときって、何してる? ねこの8時間』
※「ねこのきもち作り隊」262人にご協力いただきました。
※写真は「いぬ・ねこのきもちアプリ」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください
文/紺野ユウキ