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【獣医師監修】室内猫でも要注意! 猫の寄生虫の原因や症状、治療方法|ねこのきもち
飼い主さんも猫自身も気づかぬうちに、猫の体に忍び込む寄生虫。今回は、猫の寄生虫の種類や原因、症状、予防方法などを解説します。猫同士の接触がなくても、飼い主さんがノミなどを外出先から持ち込む可能性もあるので、完全室内飼いでも油断は禁物です!

田草川 佳実 先生
聖母坂どうぶつ病院副院長
北里大学獣医畜産学部(現 獣医学部)獣医学科卒業
●資格:獣医師/認定こいぬこねこ教育アドバイザー(JAHA認定)/General Practitioner Certificate IN Small Animal Surgery(小動物外科学)
●所属:日本獣医動物行動研究会/日本獣医がん学会/日本獣医腎泌尿器学会
とくに多い内部寄生虫「回虫」「条虫」
ノラ猫の半数以上が感染している「回虫」
「回虫」の特徴
猫には「猫回虫」(写真)と「犬小回虫」が寄生しますが、そのほとんどが「猫回虫」です。白くて細長いのが特徴で、成虫の長さは2~10cmほど。ノラ猫を対象とした調査で50~60%の猫から見つかったという、猫に身近な寄生虫です。
どうやって感染するの?
感染ルートで多いのは、感染した母猫のお乳を飲むことです。母猫の体の中で回虫の幼虫が血管に侵入し、幼虫が母乳にも入り込むため、それを飲んだ子猫に感染します。また、回虫の卵を口にしたり、感染したネズミなどを食べたりすることによってもうつります。
どんな症状で気づく?
回虫は猫の小腸にすみ着くため、猫が回虫を吐いたり、下痢をしたり、回虫がウンチと一緒に排泄されたりすることで気づきます。子猫の場合は、体重が減少することも。
治療法は?
回虫の卵はウンチに混じって排出されるため、便検査を行い、出てきた虫を確認します(嘔吐で出る場合も)。回虫が見つかったら駆虫薬を投与します。
通称サナダムシともいわれる「条虫」
「条虫」の特徴
猫には「瓜実条虫」「猫条虫」(写真)「マンソン裂頭条虫」の条虫が寄生します。なかでもとくに多いのが「瓜実条虫」で、成長すると50~60cmほどの長さになることもあります。いずれも片節というパーツでつながっていて、白く細長いヒモのような見た目が特徴です。
どうやって感染するの?
瓜実条虫の卵を食べたノミが猫の体の表面に付き、毛づくろいのときに、猫が条虫を宿したノミごとなめとることで感染します。また猫条虫は、条虫の卵を宿したネズミを猫が食べることで、マンソン裂頭条虫は、条虫の卵を食べたカエルや、そのカエルを食べたヘビを猫が食べることで、それぞれ感染します。
どんな症状で気づく?
条虫は猫の小腸に寄生しますが、多数寄生しない限り猫への害は少なく、無症状のこともあります。瓜実条虫の片節(白い卵のようなもの)がウンチに混じっていたり、お尻や寝床に付いていたりすることで気づく場合も。
治療法は?
便検査では条虫の卵は見つかりにくいため、猫のお尻やウンチに条虫の片節がないか視診で確認します。治療は条虫を退治する駆除薬を投与するほか、ノミに感染している可能性も高いため、ノミの駆除薬の投与も必要です。
とくに多い外部寄生虫の「ノミ」「ダニ」
吸血されると激しいかゆみが生じる「ノミ」
「ノミ」の特徴
ノミは世界中に多くの種類が棲息し、吸血する相手を選びません。猫に付くのはほとんどが「ネコノミ」で、体長は2mmほど。毛の間をすり抜け、活発に動きます。猫の皮膚に刺した針からアレルゲンとなる唾液を出すため、強いかゆみが生じます。
どうやって感染するの?
全身毛に覆われている猫は、ノミが寄生しやすい動物で、刺しやすい背中、下腹、脇、内股部を吸血する傾向があります。また、ノミは気温20~30℃、湿度50~80%の環境で繁殖します。そのため、冷暖房の整った部屋で暮らす猫にとっては、もっとも身近な寄生虫だといえます。
どんな症状で気づく?
猫がノミに刺されるとかゆみを感じます。体をしきりにかいたり、毛をカチカチと噛んだりするしぐさが見られたら、ノミが寄生している可能性があります。
治療法は?
猫の毛をかき分けて、砂のような黒い粒を見つけた際、濡らしたティッシュの上にのせます。血が滲むようなら、ノミの糞なので、ノミの存在が確認できます。その後猫に駆除薬を投与することで駆除と予防が可能です。同時に家の中にいるノミも駆除します。
耳や体表に寄生する「ダニ」
「ダニ」の特徴
猫の毛をかき分けて、砂のような黒い粒を見つけた際、濡らしたティッシュの上にのせます。血が滲むようなら、ノミの糞なので、ノミの存在が確認できます。その後猫に駆除薬を投与することで駆除と予防が可能です。同時に家の中にいるノミも駆除します。
どうやって感染するの?
ダニは感染力の強い寄生虫で、感染した猫と軽く接触したり、同じブラシを使ったりするだけでもうつります。複数飼いの場合は生活空間を共有しているため、すぐに同居猫にもうつってしまいます。とくに多いミミヒゼンダニは外で生活していた元ノラ猫や、迎え入れたばかりの子猫に多く見られるようです。
どんな症状で気づく?
耳ダニは、猫の耳の中に寄生するので、しきりに耳や顔周りをかいたり、頭を振ったりします。黒い耳垢も大量に出ます。また、ショウセンコウヒゼンダニは顔周りや前足の皮膚に寄生し、猫は激しい痒みを感じ、耳に沿って乾燥したカサブタが出来ます。マダニは猫についた虫自体を見つけることで気づきます。
治療法は?
検査は、皮膚の表層部分を採取して顕微鏡で確認します。マダニは肉眼でも確認が可能です。治療はダニの種類に応じて駆除薬を投与します。
感染するとやっかいな内部寄生虫「フィラリア」「原虫類」
猫が感染すると突然死してしまうこともある「フィラリア」
まれに成虫に発育すると、普通に生活していた成猫が突然死亡してしまうケースも。現在は有効な治療法がなく、フィラリアから猫を守るためには、定期的に予防薬を投与するのが唯一の方法です。
猫の体の中で増殖する目に見えない寄生虫「原虫類」
猫の寄生虫が人にうつることもあるの?
猫回虫幼虫移行症
瓜実条虫症
寄生虫の予防や対策について
動物病院で便検査などを受ける
寄生虫の予防・駆除薬を投与する
ウンチを観察し、処理したあとは石鹸で手を洗う
感染しても症状が出ないこともあり、気づかないうちに感染している可能性もある寄生虫。愛猫が元気だからと油断せずに、定期的に動物病院で検査や予防をすることが大切です。
文/ねこのきもち編集室
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