猫と暮らす
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行き場のない猫が生まれる原因を解決したい
*記事内容はすべて2024年12月10日現在のものです。
高齢猫が増える背景に飼い主さんの課題あり
その室内には見渡す限り猫がいますが、じっとしている猫や動きがゆっくりめの猫が多く、静かでのんびりとした雰囲気。床に腰を下ろせば、ひざの上にのってきたり、「なでて」と腕の下に頭を突っ込んできたり、すぐさま甘えん坊の猫3~5匹に取り囲まれる、じつに癒しの空間です。
「シニア猫は譲渡先が見つかる可能性が低いので、ストレスなく、長く暮らせる空間づくりを心がけています」とは、同ハウスを主宰する石川砂美子さん。でも、譲渡数が少ないと猫が増える一方では? と尋ねたところ「看取ることも多くて」とのこと。
さらに、昨日は緊急でレスキューに行き、一昨日も新たに2匹来たばかりで「今日の時点では約120匹を保護していますが、数の変動は激しいです」といいます。
中でも、最近の悩みは“高齢猫の急増”。その要因は“高齢者の飼い主さん”で、病院や施設に入ったり、亡くなったりして猫が取り残されてしまうケースが年々増加しているそう。大きな社会課題だと感じているとか。
「とくにご高齢で一人暮らしの方は、事前にお身内や保護団体に相談して、もしご自身に何かあったときのために引き取り先を見つけておいていただきたいです。さらにいえば、お元気なうちに手放す勇気を持ってほしい、とも思っています。私たちが救える命はごく一握りで、本当に運がよかったときだけ。放置されて、命を落とすほうが多いのです」
行き場のない猫のため、これからも守っていく
「つねに人手不足で余裕がない状態なんですが、シェルターの維持管理には25名ほどのボランティアさんにご協力いただいています。また、資金的には医療費の負担が大きく、この先も持続可能なシェルターでいるためには何らかの仕組みが必要だと危機感を持っています」
そんな中、石川さんにはひとつの願いがあるそうです。
「世の中には保護団体が山ほどあって、その背景は身近に〝助けたい命″があふれているから、ですよね。だから、外猫の課題解決が進み、飼い主さんの意識やモラルが高まり、いずれ社会全体の動物福祉が底上げされたら、保護団体などすべてなくなってほしいと思っています」
現在、シェルターの運営のほかに取り組んでいることといえば、譲渡会があります。預かりボランティアさんのもとにいる猫が中心に参加して、月2回の開催です。会場では、ねこひげハウスオリジナルグッズなどをチャリティー販売し、シェルターの運営に活かしているそう。
「人気商品は、猫タワー用のハンモックカバーです。ボランティアさんの中に〝お裁縫チーム″があって、みんなで手作りしてくれて。今日、私が着ているTシャツもオリジナルで、プリントされた『ねこひげハウス』のロゴは知り合いのデザイナーさんが作ってくれました」
周囲の人々に支えられ、石川さんは行き場のない猫たちの拠り所「ねこひげハウス」を全力で守っています。
撮影/尾﨑たまき
取材/野中ゆみ
※この記事で使用している画像は2025年2月号『猫のために何ができるのだろうか』に掲載しているものです。
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