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岩手県盛岡市の保護猫問題改善を牽引する猫カフェ「もりねこ」の想いとは

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岩手県盛岡市には動物愛護センターがありません。そんな盛岡で、飼い主がいない猫たちを1匹でも多く救いたいと、ある1人の女性が市全体の保護猫問題改善に向けてリードしています。彼女が立ち上げた「もりねこ」についてご紹介します。

※この記事の情報は、2017年6月10日段階のものです。

お話をうかがったのは…

撮影/後藤さくら
撮影/後藤さくら

「もりねこ」の代表である工藤幸枝さん(写真右)。この「もりねこ」には、現在、写真左の武田紗耶さんを含む4名のスタッフ、3名のアルバイト、そして20名ほどのボランティアが在籍しています。

撮影/後藤さくら
撮影/後藤さくら

愛護団体での経験を経て自ら保護団体を設立

 JR盛岡駅から徒歩約10分という立地にある猫カフェ「もりねこ」は、近年全国的にも広がりを見せる里親募集型猫カフェです。同名のNPO法人が運営するこの猫カフェには、市内近郊で保護された猫が暮らし、新しい飼い主さんとの出会いを待っています。
 この団体及び猫カフェの運営者である工藤幸枝さんは、北海道から盛岡市へ引っ越したのを機に、2013年、28歳の若さで猫カフェを設立。

「自分で猫を飼い始めてから、『猫のために自分ができることは何か』と考えるようになり、北海道札幌市の里親募集型猫カフェで働きながら、猫や猫の問題について勉強していました。そんな矢先、引っ越した盛岡市には動物愛護センター(以下、センター)がなく、保護猫について市民が知れる場所がないとも感じ、猫カフェを開業。2016年1月にはNPO法人化もできました」(工藤さん)

 2017年1月には事業を拡大し、猫カフェがあるビル内にシェルターを開設。猫エイズのキャリア猫やハンディキャップのある猫のケアを行っています。

立地や広さ、機能… こだわりの猫カフェ&シェルター

撮影/後藤さくら
撮影/後藤さくら

猫カフェのプレイスペース。ロビーから入ると、猫と遊べるこのスペースが広がっています




 猫カフェとシェルターを始めるにあたり、「こだわったのは立地と広さ」と言う工藤さん。

「市内で保護された猫はできるだけ受け入れたいと思いました。そして、より多くの猫が早くここを“卒業”できるよう、みなさんに足を運んでもらいやすい場所という条件も譲れませんでした」(工藤さん)

 まず、ビルの2階にある猫カフェには、ロビーを抜けると、手作り感あふれる、広々としたプレイスペースがあります。

「壁の塗装から床の張り替え、遊具の製作まで、内装はすべてボランティアのみんなで手がけました。個人で始めたため資金に余裕もなかったので、できることはすべて自分たちでやりました。また、ケージやフードなどの細かい猫グッズに関しては、多くの方から寄付をいただき、自己資金は100万円もかからずに開業することができました」(工藤さん)

撮影/後藤さくら
撮影/後藤さくら

猫カフェと同じビルの5Fにつくられたシェルターのメインスペース。シェルター入場の際は、施設の維持や猫の医療費のための募金をお願いしているのだそう




 このシェルターは、インターネットで賛同者から資金を募るクラウドファンディングで集めたお金によって開設されたもの。設定した目標金額は150万円だったにもかかわらず、最終的には倍以上の寄付があったそうです。

「おかげさまでスムーズに開設することができ、残った資金は猫たちの医療費に充てることができました。シェルターの名前『タイコウクロノーブ』は、一番高額な出資を申し出てくださった方に付けていただいた名前です」(工藤さん)

 2フロアを丸ごと借りていることもあり、現在計約50匹もの猫を保護している「もりねこ」。猫を一時的にかくまうだけの場所にならないよう、工藤さんたちは、日々猫の幸せを考えながら活動しています。

 同ビル5階のシェルター「タイコウクロノーブキャットシェルター」は、メインスペースのほかに、いくつかの小部屋が設けられています。

「シェルターはいろいろな事情を抱えた猫たちが集まるので、猫の状態によって隔離できるような間取りにしました」(工藤さん)

センター設立に向けて市へ働きかけも

「もりねこ」は、単独での活動だけでなく、保健所などの行政と繋がることで、市民への働きかけも行っています。
 たとえば、定期的に啓発イベントを開催。市内の商業施設などの協力を得て、保護猫についてのパネル展示を行っています。また、工藤さんは市内の学校で講演会をしたり、中学生の職場体験を受け入れたりして、市民が保護猫問題を知る機会を増やすことにも力を注いでいるのだそう。その理由を聞くと、

「毎日、猫の相談が舞い込んできます。私たちを頼りにしてくださるのはありがたいのですが、すべてをカバーしきれないのが現状。どうしたらこの問題を解決できるのかと考えたときに、そもそもこれらの問題の根本は、“知らない”ことにあるのではと思いました。動物愛護や適正飼育に対する知識と理解が得られるよう、意識の底上げ、つまり啓発こそ、私たちがすべき活動ではないかと思ったのです」

と工藤さんは言います。

 工藤さんたちの猫を想う声は、行政へも届けられます。2015年10月、「もりねこ」は、3カ月の活動を経て集まった約3万名分の署名を添えて、センター設立に関する請願を盛岡市議会に提出。また、2016年10月には盛岡市長らとの意見交換を行いました。

画像提供/もりねこ
画像提供/もりねこ

市の動物愛護についての意見交換の際、猫カフェを訪れた盛岡市長




「2016年度、私たちが保護した命は105匹。たった105匹しか助けられませんでした。シェルターをつくったことで保護の効率は上がりましたが、問題のある猫をお世話するには専門的な知識も必要。勉強会を行うなどして努力はしていますが、一般人の私たちでは、救える命に限界を感じています。そのこともあり、行政に属するセンターがあれば、もっと多くの猫が救われるのではないかと思ったのです」(工藤さん)

工藤さんたちの請願書は採択され、現在、市はセンター建設に向けて検討中だそうです。

 猫のために何かしたいと思う人は多いでしょう。しかし、実際に行動に出るには、とてもエネルギーが要ります。にもかかわらず、若くして猫カフェを開業し、保護猫活動の道を一から切り開いてきた工藤さんの姿は、私たちにもできることが必ずあるということ、また、できることから始めることの大切さを教えてくれています。

撮影/後藤さくら
撮影/後藤さくら

猫スペースにあるキャットウォークでくつろぐ猫たち。内装費節約のため、ボランティアの協力で手作りしたのだそう

問い合わせ先

NPO法人もりねこ
☎ 019・613・7773
「もりねこ」の活動内容などについては、ウェブサイトにも記載されています。
URL http://npomorineko.wixsite.com/morineko

出典/「ねこのきもち」2017年8月号「猫のために何ができるのだろうか」
文/「ねこのきもち」編集室
カメラマン/後藤さくら

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