猫は、日本で古くから親しまれていた存在です。最も古い記録では、平安時代から人々と暮らしていたといわれています。今回は、日本の猫の歴史と毛柄との関係についてご紹介します。歴史と共に変化していった毛柄の種類に注目ですよ。
全ての毛柄は「キジトラ」から始まった!?
今では人と暮らすようになった猫ですが、もともとは野生のヤマネコでした。その毛柄は黒と茶のしま模様である「キジトラ」柄。この毛柄の遺伝子が世界各地で突然変異することで、新たな毛色や模様が生まれてきたといいます。つまり、「キジトラ」柄は、新種の遺伝子の影響を受けていない “猫の毛柄の元祖”のような存在なのです。
飼い猫の祖先「リビアヤマネコ」の毛も「キジトラ」柄とよく似ていて、両者は、毛色や模様をつくる遺伝子の構成がほぼ同じだということがわかっています。
「キジトラ」という名前は鳥のキジからきている!?
「キジトラ」柄は、鳥のキジに色や模様が似ているために、そう呼ばれるようになったといわれています。オスのキジは、赤や緑、青などのカラフルな色模様ですが、「キジトラ」柄に近いのはメスのキジで、体に茶色と黒の模様が入っています。
平安時代に日本にいたと思われる猫の毛柄は4種類
日本の古い記録をたどると、平安時代の絵画や当時の著名人の日記などから猫が登場するようになったことがわかっています。その記録によると、この時代に人と暮らしていた猫の毛柄は、「キジトラ」「キジトラ白」「黒」「黒×白」の4種類だと推定されているそうです。
当時は毛柄のバリエーションがあまりなく、「茶トラ」や「白」などの明るい毛柄の猫はまだいなかったと考えられています。
日本に多く見られる「オレンジ」の毛色の歴史は意外と浅い?
オレンジの毛色の入った毛柄は、「茶トラ」「ミケ」「サビ柄」で、とくにトルコ周辺や、東南アジア、中国、日本などのアジア圏を中心に多くみられます。その一方、ヨーロッパには比較的少ないことがわかっています。
一説では、「オレンジの毛色を作る遺伝子」をもつ猫は、トルコ付近で突然生まれ、その後東南アジアから東アジアに向かって広まったのではないかと考えられているそうです。
日本で知られるようになったのは江戸時代から
今でこそ日本で「茶トラ」や「ミケ」などのオレンジの毛色の猫は多くいますが、その歴史は意外と浅く、一般に見かけるようになったのは、国交が盛んになった江戸時代以降だという説が有力です。
この時代から、絵画などにもオレンジの毛色をもつ猫が登場するようになりました。江戸時代に猫をモチーフとした浮世絵を数多く残した歌川国芳の作品にも、「茶トラ」や「ミケ」柄の猫が多く登場しています。
バリエーション豊かな猫の毛柄も、もともとは「キジトラ」から始まっていたとは驚きでしたね。また、今ではたくさんいる「茶トラ」や「ミケ」などの猫も、昔は日本にはいなかった可能性が高いと思うと、なんだか不思議です…。
参考/「ねこのきもち」特別編集『体の色・模様から愛猫のことを知ってもっと仲よく!楽しく!毛柄がいっぱい!ねこのきもち』(監修:哺乳動物学者 川崎市環境影響評価審議会委員 「ねこの博物館」館長 日本動物科学研究所所長 今泉忠明先生、理学博士 「北九州市立自然史・歴史博物館」学芸員 山根明弘先生)
文/AzusaS
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。