今回は、猫の「転嫁行動」について解説します。猫はストレスを感じると、その原因とは別のものに対して八つ当たりをすることがあります。これを「転嫁行動」といい、攻撃目標は飼い主さんになる場合も。原因を探り対処することで、問題行動をセーブさせましょう。
ある日、愛猫が攻撃的になった
穏やかな性格の愛猫が、「突然、攻撃になった!」という経験はありませんか?その行動をみた飼い主さんは、怒ったり叱ったりしようとするでしょう。しかし、その前に少し考えてみてください。もしかすると、愛猫が問題行動を起こす理由がどこかにあるのかもしれません。
たとえばこんなとき……
- 飼い主さんの赤ちゃんが産まれたら、攻撃的になった
- 同居猫にお気に入りの居場所を奪われたら、飼い主さんに噛みついてきた
- ノラ猫の声が外から聞こえると、興奮して同居猫にパンチする
あくまでも一例ですが、これらの行動は「転嫁行動」といわれる行為です。転嫁行動とは、猫がストレスを感じたときに、やり場のない気持ちを攻撃行動に移してはらすこと。英語では「Redirected Behavior(向きを変える行動)」といわれ、人でいう“八つ当たり”といってもいいでしょう。
人でたとえると……
- ケンカに負けたあと、自分より弱い相手にケンカを仕掛ける
- テストで低い点数をとり、弟にイライラをぶつける
- 子育て中にフラストレーションがたまり、夫にあたる
いかがですか?
猫は心の中で葛藤していた
猫は緊張や恐怖など、さまざまな感情で心の中が葛藤状態になると、そのストレスを要因となったものと全く関係ないものに向けることがあります。その攻撃の多くは、飼い主さんや同居猫へ向き、ストレスが継続すると攻撃も続くでしょう。
この転嫁行動は、深刻なケースが多いものです。そのままにしておくと、攻撃対象となった飼い主さんや同居猫との関係が悪化したり、ほかの問題行動を起こしたりする引き金にもなりかねません。早めに対処したいところです。
転嫁行動に対処するには
そもそも転嫁行動は、マイナス感情から引き起こされるものなので、その原因を取り除いてあげることが必要です。転嫁行動といわれる問題行動そのものに対処するのではなく、「転嫁行動へ発展したストレス原因」を探ることが先決なのです。
折り合いが悪い同居猫がいる
安心できる居場所やトイレ、ゴハンの場所などは、それぞれが満足できるように分けてあげるといいでしょう。
ノラ猫の姿や声に興奮する
この場合は、とにかく声を聞かせない、姿を見せないようにすることが必要です。遮音カーテンや衝立などを活用し、外からの刺激に対処してください。
環境の変化にストレスを感じている
家族が増えた、引っ越しをしたなど、どうしようもないストレスは、うまく放出させてあげましょう。遊びの時間を増やしたり、爪とぎ器をあちこちに用意したりと、気分を発散させることが大切です。
愛猫にとって何がストレスになるかを探り出し、解決へ導いてあげることが転嫁行動解決への近道です。複雑な心の葛藤は、なるべく早く取り除いてあげたいですね。
参考/「ねこのきもち」2015年11月号『猫が抱える心の葛藤…』(監修:獣医学博士 麻布大学獣医学部動物応用科学科介在動物学研究室講師 大谷伸代先生)
文/HONTAKA
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。