生活環境のあらゆるところに存在している菌。こうした菌の中には、猫の健康維持に役立っているものがある一方、猫の体調不良を起こす病気の原因となる菌も。そんな気を付けたい菌について解説します。
どんな菌が病気の原因になるの?
病原性をもつ菌もあります
菌の中には、病原性をもつ菌もあります。代表的なものは黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌、皮膚糸状菌など。これらは、ふだんから身の回りにいるものの、猫が健康であれば免疫力や常在菌にはじかれるので体内に入り込めません。しかし、免疫力が低下していると、その隙をついて体内に入り込み、病気を引き起こします。
雑菌や常在菌が原因のことも
病原性をもたない、ふだんから身の回りにいる菌が病気の原因になることもあります。たとえば、雑菌が繁殖したフードを食べて胃腸炎になるというケースです。また、常在菌が不適切な場所に感染して病気の原因になることもあります。たとえば、大腸菌が膀胱に入って膀胱炎になるというケースです。このほか、免疫力の低下により常在菌のバランスが崩れて、胃腸炎・皮膚炎・歯周病などを起こすケースもあります。
「ウイルス」と「菌」はまったく性質が異なる微生物
ウイルスと菌は混同されやすいのですが、まったく性質が異なります。ウイルスは動物の体に入らなければ繁殖できないのに対し、菌は自分の力で繁殖できます。また、ウイルスは動物にとって基本的に脅威であるのに対し、菌は動物を守る働きもします。感染症の原因となる微生物は、下の図のように3つのグループに分類できます。
高湿度で菌が増えることでかかる病気
皮膚炎
子猫や、免疫力が大きく低下している猫は、菌が繁殖しやすい季節はとくに皮膚糸状菌症にかかりやすくなります。猫の常在菌のひとつである皮膚糸状菌(カビ)が原因で、背中などに湿疹・フケ・脱毛などの症状が出る病気です。
胃腸炎
梅雨どきは、雑菌(細菌やカビ)が繁殖したフードや水を摂取したことが原因で胃や腸が炎症を起こす食中毒系の胃腸炎が多くなります。胃腸炎になると、嘔吐、下痢を繰り返し、食欲不振などの症状が見られます。
外耳炎
外耳炎とは、外耳道(耳の穴)に炎症が起こる病気。かゆみや痛みが出て、耳アカが多くなります。さまざまな原因がありますが、マラセチアという常在菌(酵母)による外耳炎は、梅雨どきなどに多くなる傾向があります。
菌が原因となるそのほかの病気
歯周病
口腔内に存在する細菌のバランスが崩れたことが原因で、歯の周囲の組織が炎症を起こす病気。重症の場合は抜歯が必要なことも。
嫌気性菌(けんきせいきん)感染症
炎症部位や傷口などに嫌気性菌が感染し、問題を起こす病気。子宮蓄膿症や、噛み傷の化膿、歯根膜膿瘍などが当てはまります。
クラミジア感染症
クラミジアという菌による呼吸器感染症(猫カゼ)。感染猫の唾液などから飛沫感染し、くしゃみ、鼻水、結膜炎などの症状が出ます。
いかがでしたか? 菌は悪いものではなく、生きていくために必要なもの。でも免疫力が下がってしまうと病気を引き起こすこともあるようです。
生活環境内の雑菌や病原菌は、清掃や除菌で清潔で排除できますが、過度な洗浄や除菌は猫の体の常在菌のバランスを崩してしまう可能性が。愛猫の免疫力を維持できるよう、生活環境に気を配りましょう!
参考/「ねこのきもち」2019年6月号『猫にまつわる3つの菌のはなし』(監修:モノカどうぶつ病院院長 小林清佳先生)
文/浪坂一
イラスト/守屋和美
画像/iStock、Getty Images Plus、ゲッティイメージズ
※この記事で使用している画像は2019年6月号『猫にまつわる3つの菌のはなし』に掲載されているものです。