大好きな愛猫が日々ストレスを感じていないかどうか……飼い主さんであれば、きっと気になってしまうはず。
帝京科学大学の小野寺 温先生によると、猫のストレスは大きく分けて「急性ストレス」と「慢性ストレス」に分けられるのだそう。
今回は、急性ストレスに焦点を当てて解説していきます。
猫の「急性ストレス」とは
急性ストレスとは、一時的に感じるストレスの総称のこと。たとえば、「来客」や「地震」など、猫が苦手なものに一時的に直面したときに感じるストレスを指します。
これは一過性のもののため、ストレスの要因が取り除かれれば大事には至らないこともありますが、何度も繰り返されると慢性ストレスの症状が見られることも。
猫の急性ストレスの症状は?
猫に次のような症状が見られたら、急性ストレスのサインかもしれません。
- 耳を伏せる
- 瞳孔が大きく開く
- ハァハァ呼吸する
- その場で固まる、もしくはどこかに身を隠す
- 一時的に食欲が落ちる
- 一時的に排泄の回数が減る
など。
猫の慢性ストレスの症状は?
ちなみに、相性が悪い同居猫との暮らしなど、猫が苦手なものを避けられず継続的に感じるストレスが
「慢性ストレス」。
慢性ストレスの場合は、以下のような症状が見られます。
- ずっとイライラしている、もしくは神経質になった
- 攻撃行動が増えた
- 体をしつこくなめる
- 体型に変化が見られる
- 部分的に脱毛している
- 頻繁に嘔吐する
- 下痢が続く
など。
猫の急性ストレスを引き起こす17のこと
さて、ここからは猫の急性ストレスを引き起こすきっかけについて紹介します。家の中を見渡すと、急性ストレスの引き金になってしまう要因があちこちに……。
①チャイム→知らない人がくるサインに
猫がチャイムの音を嫌がるのは、鳴ると見知らぬ人が来るという「合図」だと思っているから。しかも突然鳴るために、余計に怖いのでしょう。
②掃除機→音が大きく聞こえて恐怖
掃除機は、猫が苦手な家電のひとつ。猫は聴力が優れているために、人の想像以上に大きく音が聞こえます。
また、掃除機は移動するので、追いかけられているように感じて怖いのでしょう。
③来客→縄張りが侵されないか心配
来客がくると、家の中の自分の縄張りが見知らぬ人に侵されるのでは…と不安な気持ちに。飼い主さんの動きもいつもと異なるので、よりソワソワしてしまうのかも。
④花火、雷→慣れない音と光にびっくり!
見慣れない強い光と大きな音がいきなり同時に発生すると、猫は恐怖を感じます。花火だけでなく、雷も同様です。
場合によっては恐怖からパニックになってしまうことも。
⑤子ども→予測不能な動きと奇声が苦手!
子どもはいきなり猫のしっぽを掴んだり、奇声をあげたりしがちに。そのため猫は不安になってしまうようです。
⑥カメラ→しつこく追い回されるのが苦手
「猫のかわいい表情をおさめたい!」としつこく追い回されると、嫌がる猫も。フラッシュやシャッターの音が苦手なコもいます。
⑦香水→嗅覚が優れているので少しの香りもキツイ…
猫は嗅覚が優れていて、まわりのニオイを嗅ぐことで身の安全を確認しています。香りの強いものが近くにあると、本来嗅ぎたいもののニオイがわからなくなって、ストレスに感じるよう。
⑧ノラ猫→いきなり現れる怖い存在!
庭などにノラ猫が現れると、「縄張りを侵されるかも」と不安な気持ちに。「これ以上近寄らないで!」の気持ちから、シャーッと威嚇する猫も少なくありません。
⑨留守番→飼い主さんの不在で不安と退屈が…
留守番慣れしていない猫は、飼い主さんがいない環境をいつもと違うと感じ、不安な気持ちに。また、刺激が少なく、退屈によりストレスの引き金になることも。
⑩ペットホテル→知らない場所で過ごす恐怖
知らない場所で過ごすのはもちろん、ほかの猫や犬の存在が気になりストレスに。自宅にペットシッターが来るよりも、ストレスを感じるかも。
⑪お手入れ→体を押さえつけられるのが苦手
爪切り、歯磨き、投薬の際など、いずれも体を押さえつけられることが多く、猫には恐怖に。ただ、猫の健康を考えると大切なことなので、慣れさせるよりほかありません。
⑫家族のケンカ→大きな叫び声に身の危険を感じる
飼い主さんのいつもと違う様子や大きな声には、猫は身の危険を感じます。ちょっとした言い合いでも、猫は異変を敏感に察知して、不安な気持ちに。
⑬スキンシップ→長時間触られるのは、もともと苦手
程度は異なるけれど、多くの猫は長時間触られるのが苦手です。最初は嬉しくても、許容時間を超えるとしっぽをパタパタさせるなど、「やめて!」のサインを出すことも。
⑭乗り物→ニオイ、音、揺れ…苦手なものだらけ!
乗り物は、大きな音や知らないニオイなど、苦手なものだらけ。猫によっては慣れない揺れに車酔いすることもあります。
⑮動物病院→拘束されたり、苦痛を感じたり…
動物病院は、猫のストレス要因ナンバーワンといっても過言ではありません。たまにしか行かないのに、診察台で拘束されて、ときに痛いことをされるので怖いのでしょう。
⑯キャリーケース→「嫌なことが起こる」と察知
キャリーケースに入れられると、動物病院などどこかに連れて行かれると察し、嫌がるのでしょう。
無理やり中に入れられることや、自分のニオイがキャリーケースにあまり付いていないことも要因に。
⑰エリザベスカラー→視界に遮られ、動きにも制限が
エリザベスカラーを装着させられたときの違和感はもちろん、視界が遮られて、自由に動くこともままならないので不快に。
もし猫が嫌がって自ら外す場合は、獣医師に相談を。
猫の急性ストレスの対処法3つ
上記で紹介したような急性ストレスを和らげるためには、次の3つのポイントを意識してみてください。
①逃げ場になる安心できる場所を作ってあげて!
猫のストレスを和らげるために、猫がストレスを感じたときに逃げ込める場所を作ってあげましょう。
嫌なことがあっても、安心できる場所が用意されていれば、猫は心を落ち着けられるので、ストレスを緩和できるはず。
②可能なら、ストレスの要因を回避できるようにしてあげて!
もしできるなら、ストレスの要因となるものを取り除いてあげましょう。たとえば……
- 掃除機:音が限りなく小さいタイプの掃除機に替えてみる。
- 来客:友人などお願いできる相手なら、外にで会うようにお願いしてみる。
- 香水:つけないのがベスト。あるいは、つける量を減らして。
- ノラ猫:カーテンなどを閉めて、ノラ猫の姿が見えないように。
- ペットホテル:ペットシッターや知人に頼んで、自宅まで来てもらえるようにしても。
- スキンシップ:残念だけど、心を開いてくれるまでグッと我慢するのみ!
など。
③少しずつ慣れさせるようにしてあげて!
動物病院での受診やお手入れなど、たとえストレスを与えることになっても、猫のためにしなければならないこともありますよね。その場合は、少しずつ慣れさせるしか方法はありません。
まだ子猫であれば、小さいうちから慣れさせるのがいいでしょう。
動物病院での工夫
避けては通れない動物病院。獣医さんたちも猫の健康を守るために、「怖がらせない工夫」をしているそう。
キャット・フレンドリー・クリニック
→猫にやさしい動物病院づくりを目指していると認定された動物病院のこと。ほかの犬や猫の鳴き声や、ニオイをさせないなど、猫を怖がらせないように配慮しています。
来院イベント
→気軽に来院して慣れてもらおうという趣旨で、イベントを開催している動物病院も。このような機会に愛猫と通ってみるのも、ひとつの手といえるでしょう。
猫がストレスを感じてしまう原因は、じつにたくさんあるようですね。もし回避できるものがあれば、工夫をして対処できるようにしてあげましょう!
参考/「ねこのきもち」2016年8月号『猫のQOLを尊重するために知っておこう! 急性ストレスと慢性ストレス」
(監修:帝京科学大学教授、動物看護師 小野寺 温先生)
イラスト/内田尚子
文/sorami