みなさんはふだん愛猫の様子を見ていて、「あれ、なんか様子が少し変だな…」などと感じた経験はありませんか? 今までにしなかったことを愛猫がするようになったら、病気の疑いが考えられる場合もあるようなんです。
この記事では、「○○がある」で気づける猫の異変について、5つの行動を取り上げて解説します。
※この記事で紹介しているチェック項目はあくまで症状のひとつで、可能性のある病気を紹介しています。そのなかでも猫に多い病気を紹介していますが、ほかの病気の可能性も考えられます。少しでも心配な様子が見られる場合は、動物病院で受診しましょう。
行動1:食欲がふだんよりある
猫の食欲がふだんよりある場合は、次のような病気の可能性があります。
①たくさん食べるのに体重が減る⇒「甲状腺機能亢進症」の恐れが…
甲状腺は、
体の新陳代謝に関わる内分泌器官です。そこに異常が起き、
代謝が過剰になるため、たくさん食べても痩せていくことが。とくに
シニア猫に多く見られるようです。
ほかに見られる症状としては……
などがあります。
甲状腺機能亢進症の治療は?
治療については、投薬、または甲状腺摘出手術を行います。
②毛ヅヤが悪い、極度に皮膚が薄くなるなどの症状が見られる⇒「脳や副腎の腫瘍」の恐れが…
脳腫瘍や副腎に腫瘍ができた場合は、ホルモンが過剰に生成されて、皮膚が極度に薄くなったり、ときに食欲増進が見られたりすることがあります。
行動2:飲水量がふだんより異常にある
猫の飲水量がふだんより異常にあり場合は、次のような病気の可能性があります。
①食欲もある⇒「糖尿病」の恐れが…
糖尿病は、ホルモンの一種であるインスリンの働きが悪くなり、血液中の糖が多くなる病気。血液中の高濃度の糖分がその浸透圧によって細胞内の水分を異常に引き寄せるため、脱水症状になり、水をがぶ飲みするようになります。
また、エネルギー不足にもなるので、空腹感から食欲旺盛になります。
②食欲が落ち、痩せている⇒「腎不全」の恐れが…
腎不全は腎臓の機能が低下し、正常に働かない症状です。初期症状では、多飲多尿の症状が見られ、後期には貧血や嘔吐、食欲不振により痩せてきてしまいます。
腎不全の治療は?
食事療法でタンパク質やミネラル分の摂取量を調節したり、投薬、輸液などを行ったりします。
行動3:トイレに行くことが頻繁にある
猫がトイレに行くことが頻繁にある場合は、次のような病気の可能性があります。
①1回のオシッコの量が少なく、血が混じっている⇒「膀胱炎」や「膀胱結石」の恐れが…
細菌感染により膀胱に炎症が起きたり、結晶や結石ができてオシッコが出にくくなったり、ときにはオシッコに血が混じることもあります。結石は、食事や体質的なものも要因に。
メスはオスよりも尿道が太く短いため、細菌が入りやすい傾向にあります。
②1回のオシッコの量が極端に少ない、またはまったく出ない⇒「尿道閉塞」の恐れが…
尿道閉塞は、尿道に結石が詰まってしまった状態。膀胱の結石が細い尿道に流れ込み通過できずに尿道を塞いでしまうため、オシッコが出にくくなることがあります。
尿道閉塞の治療は?
治療法は、尿道内に引っかかった結石を洗い出すか、膀胱まで押し戻します。
③真っ黄色のオシッコが出る⇒「黄疸」の恐れが…
黄疸とは、
胆汁に含まれるビリルビンという色素によって、皮膚や粘膜、血液が黄色に変色してくる症状です。それらがオシッコとして排泄されるため、真っ黄色に。
原因として考えられるのは……
などの可能性があります。
④1回のオシッコの量が多く、色が薄い⇒「腎不全」の恐れが…
腎臓が正常に機能していないと、腎臓に血が流れにくく、腎臓が硬くなり縮小していきます。そのため、体に必要のないものをろ過しにくくなり、老廃物を含まない色の薄いオシッコが大量に出るのです。
行動4:頻繁に吐くことがある
猫が頻繁に吐くことがある場合は、次のような病気の可能性があります。
①水や食べたものを吐く⇒「腎不全」の恐れが…
腎不全を発症すると、腎臓から老廃物を排泄できないため、たまった老廃物がやがて毒素となり、嘔吐や食欲不振の原因になります。
毒素の内容や濃度によって症状も変わり、飲んだ水や食べたものを吐いたり、けいれんを起こすことも。
②ゴハンを食べてもすぐに吐く⇒誤食や毛玉による吐き気の恐れが…
猫に多い誤食は、裁縫の糸やタオルの糸、洋服のほつれた生地、輪ゴム、ポリ袋片、自分の毛玉など。
これらが胃の中や十二指腸にたまっていると、柔らかいものでは胃壁を刺激しにくいですが、数時間後に食べると胃壁を刺激するため、嘔吐してしまいます。
もしも誤食したら?
③吐く様子に規則性がない⇒脳のトラブルの恐れが…
胃腸を調べてもとくに異常が見つからないのに、突然苦しそうに吐くなど不規則な場合は、脳がトラブルを起こしている可能性が。
脳炎や前庭障害などを発症すると、吐き気を伴うことがあります。
行動5:咳をすることがある
猫が咳をすることがある場合は、次のような病気の可能性があります。
①乾いた咳をする⇒「気管支炎」や「咽頭喉頭炎」の恐れが…
外から吸い込んだ空気の通り道である咽喉頭部や気管、気管支に炎症が起こるのが「気管支炎」や「咽頭喉頭炎」です。
人が風邪を引いたときのような「ケホッケホッゲーッ」と嘔吐に似た乾いた咳をします。
気管支炎や咽頭喉頭炎の治療は?
吸入治療、せき止め薬や気管支拡張薬などで治療をします。
②湿った咳をする⇒「肺炎」の恐れが…
肺に細菌や真菌などが原因で炎症が発生した状態です。回数は少ないですが、「ゴホッ」とたんが絡んだようなこもった咳をすることがあります。
肺炎の治療は?
酸素吸入、抗菌剤、咳を抑える鎮咳薬や気管支拡張薬などで治療をします。
「いつもより…」が早期発見の手助けに!
愛猫の健康を守るためには、ふだんの猫の様子をよく知っておくことが大事です。ふだんの様子と比較して、見た目や行動の多い/少ない、する/しないといった、小さな変化に気づくことができれば、病気の早期発見につながります。
大切な愛猫のためにも、飼い主さんはふだんから愛猫の様子を注意深く観察するように心がけましょうね。
参考/「ねこのきもち」2017年8月号『いつもより、目ヤニがある、食欲がないetc. ○○がある・ないのサインでわかる猫の病気』
(監修:埼玉県日高市のノヤ動物病院院長 野矢雅彦先生)
※記事と一部写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
イラスト/Studio CUBE.
文/雨宮カイ