「愛猫がさみしくないように、2匹目を迎えたい」と考える飼い主さんは多いことでしょう。しかし、元々単独行動を基本とする猫にとって、同居猫の存在が必ずしもプラスになるとはいえないようです。
複数飼いの家庭では、猫たちそれぞれの幸せを考えてあげる必要があります。猫の「QOL(クオリティ・オブ・ライフ)」について、今一度考えてみませんか?
QOL(クオリティ・オブ・ライフ)とは…
QOLは、Quality Of LIfeの略で、「生活の質」という意味。どれだけ人間らしい生活を送れているかの満足度を表す指標ですが、最近では動物でも注目されています。
猫の場合は……
- 心身ともに健康な状態か
- 快適な生活か
- 飼い主さんや同居猫といい関係が築けているか
などが、QOLを向上させるポイントに。
今回は、猫の複数飼いで残念ながらQOLがマイナスになってしまっている家庭のケースを2つ紹介します。複数飼いの家庭ではよくあるお悩みだと思うので、ここで紹介する改善策をぜひ参考にしてみてください!
お悩み1:2匹一緒に食事をさせると、高齢猫がフードを横取りされてしまう…
まず1つ目のケースで紹介するのは、つくねちゃん(メス・4才/ワガママでこだわりが強い性格)とチャチャくん(オス・11才/温厚で穏やか、フレンドリーな性格)の複数飼いの家庭のエピソード。
「2匹一緒に食事をさせていると、つくねは自分の分を残し、チャチャのフードを横取りします。チャチャも抵抗しますが、最後は『ンニャー!』と鳴き、つくねの残したフードに移動。高齢のチャチャがかわいそうなので、今は食べ終わるまで私が見張っています」(千葉県 S・Aさん)
チャチャくん、落ち着いて食事ができていないようですね……。
横取りすることで、自分の優位性をアピール
食欲旺盛な猫が同居猫の食べ残しを狙うのは、よくあること。しかし、つくねちゃんの場合は、横取りしているので「自分が優位なんだ!」とアピールしている可能性があるでしょう。
飼い猫にとって、食事は死活問題です。チャチャくんは年齡的にも、自然に食欲が落ちていく年頃です。安心して食べられるようにしてあげたいですね。
【解決策】問題を起こす猫を別の部屋で食べさせよう!
解決への近道は、物理的に横取りできない環境にすること。チャチャくんの生活環境を優先させるために、つくねちゃんを別の部屋で食事させるようにしましょう。
また、ケージをチャチャくん用の食事場所にするのも一案に。猫にとって、囲まれた狭い空間であるケージは落ち着ける場所なので、マイペースに食事ができるでしょう。
お悩み2:外を眺めていると、"弟分"の猫に場所を乗っ取られてしまう…
続いて紹介するのは、こむぎくん(オス・1才/甘えん坊で慎重な性格)とコタローくん(オス・2才・マンチカン/おとなしい性格)の2匹を飼っている家庭のケース。
「コタローが外を眺めていると、こむぎがやってきて、グイッと体を押し付けてコタローの体を舐めたりします。嫌がるコタローが『ウーッ』と威嚇すると、こむぎが噛み付き、コタローの上に乗って戦闘体勢に……。最後は悲しそうな表情でコタローが立ち去ります」(埼玉県 Tさん)
好意でくっついているようにも見えるけれど、コタローくんにはちょっぴり迷惑かな……?
好意でくっ付いても、迷惑好意に…
こむぎくんの行動から推測すると、場所を乗っ取りたいというよりは、コタローくんにくっ付きたいのでしょう。とはいえ、結果的に好きな場所に居られないのは、コタローくんにとっては迷惑なことですよね。
こむぎくんのためにも、無理なく一緒に居られるように、2匹が付かず離れずリラックスできる居場所があるといいでしょう。
【解決策】1匹に丁度いいサイズの居場所を2個つくろう!
たとえば、1匹がちょうど休めるサイズの猫ベッドなど、まったく同じものを用意して、猫たちのお気に入りの場所に並べてみてください。
注意したいのは、猫ベッドのサイズ。サイズが大きめだと、こむぎくんが無理やり2匹で入ろうとする可能性があるのでNG!
猫の複数飼いを成功させるための4つの心得
最後に、猫の複数飼いならではの飼い方のコツについて紹介します。実践できているか、確認してみてくださいね。
心得1:飼い主さん主導の遊び時間を、猫ごとに設けよう!
活発な若い猫は、ときとして高齢の猫には迷惑な存在になってしまうことも。活発な猫のエネルギーを発散させるために、飼い主さんがおもちゃを使うなどして、存分に遊び相手になってあげて。
複数で遊ばせるのは難しいので、1匹ずつ相手をしてあげましょう。
心得2:ケンカになりそうなときは、すぐに引き離そう!
仲が悪くない猫同士でも、ときには険悪なムードになることがあります。唸りながら睨み合っていたら、声をかけたり、おやつで気を引いてみたりして、速やかに2匹を離しましょう。
ただし、ケンカが始まってしまったら手を出すのは危険です! 2匹の間にクッションを投げるなどして遮断してみてください。
心得3:室内のあちこちに居場所をつくろう!
猫には、「安心してくつろげる場所」と「何かあったときに避難できる場所」が必要です。複数飼いの場合は、猫ごとにそうした居場所を用意してあげましょう。
1匹の猫が休める程度の大きさで、高さの違う居場所を家のあちこちに配置するのがポイントです。
心得4:猫トイレの数は多く、静かな場所に設置しよう!
排泄に神経質な猫の場合だと、同居猫が近くにいると落ち着いてトイレが使えないことがあります。また、同居猫の排泄物が残っているトイレを使いたがらない猫もいます。
粗相やオシッコの病気の原因にならないように、それぞれの猫が好むトイレの環境をつくることが大切に。
猫にとって理想のトイレ環境って?
- トイレの数は匹数+1個を準備
- 猫それぞれの好みのトイレ砂を用意
- 人や同居猫があまり通らない、静かな場所にトイレを置く
複数飼いによって猫たちそれぞれのQOLが下がっているのであれば、そのまま放置せずに、飼い主さんが改善できるよう対策をしてあげてください。猫たちみんなが幸せに暮らせるよう、考えてあげましょうね!
参考/「ねこのきもち」2019年12月号『どの猫も幸せでなくてはいけないから 考えたい! 複数飼いのQOL』
(監修:獣医師、東京大学附属動物医療センター行動診療科にて犬猫の治療に従事 菊池亜都子先生)
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
文/sorami