「慢性腎不全」は猫がかかりやすい病気の1つで、死亡率が高いことでも知られています。実は、慢性腎不全には明確な予防法がありません。そのため、まずは慢性腎不全の症状や治療法を理解し、早期発見に努めることが肝心。症状をステージ別に見ていきましょう。
ステージ別・慢性腎不全の主な症状
慢性腎不全は、腎臓の機能障害のレベルによって、4つのステージに分けられています。
慢性腎不全・ステージ1
この段階では症状はほとんどなく、「慢性腎障害」と呼ばれることもあります。ただし、腎臓に病変が存在していることは確かで、タンパク尿が見られることも。
慢性腎不全・ステージ2
ステージ2になると、軽度の窒素血症と尿濃縮能の低下が見られ、多尿の症状が現れはじめます。さらに脱水や外傷などで慢性腎不全へと移行すると、尿毒症の症状が見られるようになります。
慢性腎不全・ステージ3
軽度~中程度の窒素血症や、多尿などの尿濃縮機能低下、貧血、体重減少などの症状が現れます。ステージ3の段階で、腎臓組織の75%以上に障害をきたしていると考えられます。
慢性腎不全・ステージ4
尿毒症、あるいは腎不全の末期といわれる時期で、一刻を争います。食欲不振、ぐったりして元気がない、重度の貧血などの症状が見られます。ステージ4ともなると、すでに腎臓組織の90~95%以上に障害をきたしていると考えられており、死亡率は高くなります。
慢性腎不全の主な治療法とは?
慢性腎不全は、進行すると命を落とす危険性もあるとわかりました。それでは、慢性腎不全になると、どのような治療が行われるのでしょうか?
慢性腎不全の主な治療法は、水和状態(体内の水分量)の管理と食事療法です。
水和状態の管理
慢性腎不全では尿を濃縮する機能が低下するため、多飲多尿の症状が現れます。そのため脱水状態になりやすく、皮下補液を含む輸液療法によって、水和状態の管理を行うことがあります。
また、ステージ3~4以外では、経口摂取する水分を増やすことも重要と考えられています。
食事療法
食事療法は、主に高リン血症をコントロールする目的で行われます。この食事療法は、ステージ2からの開始が推奨されているため、早い段階から食事療法を開始すると、低リン血症や高カルシウム血症を引き起こす危険性もあります。
もしリン制限食で血しょうリン濃度を抑制できない場合は、積極的にリン吸着剤を使うケースも生じます。さらにステージ3以上になると、尿毒症の軽減のため、腎臓病療法食でたんぱく制限を行うこともあります。
慢性腎不全にかかりやすい猫はいるの?
猫の慢性腎不全の原因はさまざまですが、尿石症や膀胱炎など泌尿器系の病気や感染症などによって、腎臓に支障をきたしやすいためという説があります。
特にヒマラヤン、ペルシャ、ロシアンブルーは、遺伝的に腎障害を持って生まれることもあるといわれ、慢性腎不全にかかりやすいとされています。しかしこれらの純血種に限らず、どの猫も注意する必要があるでしょう。
慢性腎不全の予防につなげよう!
明確な予防法がないとされる慢性腎不全ですが、愛猫の腎臓をいたわったり、病気のきっかけになる要因を排除したりすることも、予防の一環となるでしょう。
愛猫がしっかり水を飲む工夫をしよう
泌尿器系の病気の予防には、猫が飲む水の量をしっかり確保することが大切です。水飲み容器の数を増やす、流水タイプの自動給水器を使うなど、猫が水を飲みやすくなる工夫をしてください。水はこまめに交換し、雑菌やカビの繁殖も防ぎましょう。
トイレはこまめに掃除しよう
トイレを清潔に保つことで、猫がトイレに入りやすくします。トイレを掃除することで頻繁に排尿の状況をチェックできるため、異変にいち早く気づけるというメリットもあります。
誤食を避けよう
猫が危険なものを誤食すると、中毒を起こして腎不全を発症することもあります。猫にとって有害なブドウやユリ科の花、人の薬などは誤食しないように片付けましょう。
定期健診を受けよう
慢性腎不全は、急激に症状が悪くなるのではなく、徐々に症状が進行する病気です。そのため、1年に1~2回の血液検査や、画像診断を含む健康診断を受けることで早期発見につながります。
猫がかかりやすい慢性腎不全ですが、早期発見して適切な治療を開始することで、延命にもつながります。積極的に定期健診を受けさせ、病気を早めに治療できるようにしましょう。
参考/「ねこのきもち」WEB MAGAZINE『【獣医師監修】猫はかかりやすいから要注意!「腎不全」ってどんな病気?|ねこのきもち』(監修:聖母坂どうぶつ病院獣医師 鵜飼佳実先生)
文/松本マユ
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。