大きな声で鳴き続ける、噛み付く、なかなかなつかない……。
愛猫の行動に、愛したくても、愛せないということはないですか?
もう一度、愛猫と向き合うための“心の処方箋”をお届けします。
愛猫の性格を見極めてやさしく接して
問題行動を抱える猫の飼い主さんと接することが多い菊池亜都子先生。「猫はかわいいのに、どう接していいかわからない」というケースでは、まずその猫の個性を見極めることが大切と言います。「わが家の猫も怖がりで、触るのに1年半もかかりました。愛猫の生態や性格を考えながらストレスをかけないよう、やさしく接していけば、お互いの距離はぐっと縮まり、猫にも愛情が伝わりますよ」。具体的な飼い主さんの悩みを見てみましょう。
1.猫の鳴く声がわずらわしい。イライラする。
私が食事をしているときに、 愛猫が大きな声で鳴きながら延々とウロウロするので、ゆっくりと食事がとれずイライラしてしまいます。ゴハンや遊びで応えれば鳴きやむこともありますが、何をしても鳴きやまない場合は、わずらわしく思いながらも無視します。念のため体に悪いところはないか、愛猫の体を見たり、触ったりして確かめますが、とくに異常はないようです。昨年9月に迎えたときから、このような鳴き癖に悩み、イライラすることもつらいです。
どんなときも無視を徹底して
猫は「鳴けば要求が叶う」と学習する動物です。こうした要求鳴きに対しては徹底的に無視を。猫はやがて諦めて鳴きやみます。食事中は愛猫を別部屋に隔離するなどして無視し続けましょう。ゴハンや遊びも、要求する前に対応するといいでしょう。(菊池先生)
2.押し入れに隠れ、人見知りしすぎて愛しきれない
Y・Nさん
ピートくん(オス・2才)、先住猫のディくん(オス・3才)
新入り猫は、人にあまりなつかず、家族がいつもいるリビングに入ってきませんでした。先 住猫がいるので、当初は別の部屋で過ごさせていましたが、開放した今も、ふだんはこの別室の押し入れなどに隠れています。ゴハンはリビングで食べますが、終わるとすぐに別室へ……。2年近く経ち、ようやく私の膝にのってくるようになったので、その隙に爪を切ったりしていますが、当初はなつかず、ちゃんと愛せるか不安でした。
なれるまで数年かかることも
飼い主さんの膝にのってくるなんてすごい進歩です。ただ、膝にのってきても今はなでるだけにし、爪切りは新入り猫がもう少しなれてからにしましょう。猫によっては、人になつくまで数年かかることも。焦るとかえって猫が警戒するので、ゆっくりとアプローチを。(菊池先生)
3.どうしても先住猫にべったり
S・Uさん
クロくん(オス・4才)、先住猫のコテツくん(オス・6才)
新入り猫は、猫エイズキャリアなので、専用の部屋で過ごさせています。そのためか、一緒 に過ごす時間が長い先住猫に対するのと同じ愛情をまだもつことができません。意識してコミュニケーションをとるようにしているのですが……。私が新入り猫の部屋にいると、先住猫が鳴いて私を呼ぶので、仕方なく先住猫のところへ戻ります。なかなか新入り猫にかまってあげられず、可哀想な思いをさせていると思いますが、どうすればいいか困っています。
同じ空間で過ごせる工夫を
直接猫同士が接触できないように二重の柵を設置するなどして、飼い主さんが過ごす部屋の一角に新入り猫用のスペースをつくれないでしょうか。それができれば、今の状況よりは同じ時間を共有でき、新入り猫との交流ももっと密にできると思います。(菊池先生)
4.調理中、猫の対応で気疲れする
愛猫が人の食べ物を食べてしまうので、食事の準備中も気が抜けず……。対応で時間が余計 にかかり、疲れます。調理中だけでも別室に隔離させたいのですが、誘導しようとすると慌ててキャットタワーの上へ逃げ、 頃合いを見計らって下りて来て、食べ物を狙うことも。隔離すると、みんなのいる部屋へ「入れろ」と言わんばかりに鳴き続けますが、「ごめんね」と思いつつも食事が終わるまでは気にしないようにしています。
別室やケージを利用して
あらかじめ隔離しておくのはOKです。別室から出すときは愛猫が鳴きやんでからに。また、ケージをリビングに設置するのも手。ふだんそこでゴハンやおやつを与えて、安心できる場所にし、食事準備前は扉を閉めるようにすれば、お互いに気持ちも楽でしょう。(菊池先生)
5.夫に比べて、猫に愛されていない気がする
A・Mさん
ぼんくん(オス・1才)
愛猫が私よりも夫になついている気がして寂しくなり、むなしい気持ちになるときがあります。夫の膝にはのるのに、私の膝にはのってこず、夜ももっぱら夫の胸の上で眠ります。そのくせお腹がすいたときだけ、かわいく鳴いて私にスリスリしてきます。私と過ごす時間が圧倒的に長く、私が一番お世話をしているのに、と思いつつも、あまりお世話をしないほうが逆に猫は関心を寄せてきたりするのだろうか、とも考えてしまいます。
相手によって愛情表現は変わる
ご夫婦のどちらかが好きというより、相手によって猫の愛情表現は変わるので、あまり気にしないで。愛猫は旦那さんも好きですが、 お世話してくれるあなたにも信頼を寄せているからこそ、ゴハンのアピールをします。これまで通りやさしくお世話してください。(菊池先生)
いかがでしたか。愛猫の対応に、ときに戸惑うことはありますよね。気持ちを整えたり、猫へアプローチしたりするときの参考にしてください。
参考/「ねこのきもち」2020年8月号「私たち、猫をちゃんと愛せていますか?」(監修:獣医師、獣医行動診療科認定医 菊池亜都子先生)
イラスト/岡田みそ
文/犬神マツコ
※この記事で使用している画像は2020年8月号「私たち、猫をちゃんと愛せていますか?」に掲載されているものです。