猫の心臓病の中で発症率が高い心筋症。気付きにくく、かかると重篤なケースが多いことから怖い病気のひとつと知られています。東京都北区にある、王子ペットクリニック院長の重本 仁先生に心筋症が怖いワケをはじめ、早期発見のためにしたいことを教えてもらいました。
猫の心筋症は予兆なく死に至る可能性が
猫の心筋症は、症状がわかりにくいことから気付かないうちに病状が進行して突然倒れ、そのまま命を失う可能性のある、恐ろしい病気です。心筋症による突然死の原因の多くは、「大動脈血栓塞栓症(ATE)」という合併症を起こすことです。心臓内の血液循環が悪くなることでできた血の塊(血栓)が動脈を介して全身へ流れ、血管が細い箇所に詰まってしまうのです。「愛猫が突然命を失う悲しみは計り知れません。心筋症は命に関係する病気だということを知っておきましょう」(重本先生)。
年齢に関係なく発症の可能性がある
心筋症の発症年齢は、生後3カ月から17才までと幅広い年齢で報告されており、年齢と発症のしやすさには関連がないと考えられています。「実際に生後約6カ月の猫の心筋症を診たことがあります」(重本先生)。
遺伝の心配がある猫種はかかりやすい
はっきりとした原因は解明されていませんが、心筋症を発症しやすい猫種がわかってきました。メインクーン、アメリカンショートヘアー、ブリティッシュショートヘアー、スフィンクス、ペルシャ、ラグドール、ノルウェージャンフォレストキャット、ヒマラヤンがかかりやすいとされています。
早期発見のために… 2つの習慣で愛猫を守ろう
心筋症は残念ながら予防ができません。愛猫を守るためには、早期発見できるかがカギになります。飼い主さんができることを紹介しましょう。
心臓の検査を定期的に受けるようにする
心筋症は、通常の定期健診では判明しにくいので、特化した検査を定期的に受けることが大切です。血液検査の心臓マーカー(NT-proBNP)であれば、少量の血液を採るだけで検査ができるので、定期健診の血液検査時に追加してもいいでしょう。心臓マーカーが高値を示した場合には、超音波検査を受けるようにしても。
心拍数をできるだけ毎日測るようにする
正常な猫の心拍数は、安静時で1分間につき130~160拍。運動や興奮時は、240拍くらいまであがることもありますが、安静時でも200拍以上が継続するなら、心臓に異常がある可能性が。心拍数は猫によって個体差があるので、愛猫の通常の数値を把握する意味でも、できるだけ毎日測り、少しの異常でも気付けるようにして。
猫の背後から、両脇の下に両手を入れて抱っこをして手に伝わってくるトクトクという鼓動を数えて。20秒間の心拍数を数え、その数を3倍にすれば1分間の数値になります。
抱っこを嫌がる猫は、立っている状態でも大丈夫です。同様に左右の脇の下から両手を入れて測りましょう。
実際のことを… 読者の体験談から知ろう
心筋症は、飼い主さんが気付きにくいものです。愛猫が心筋症になるという経験をされた実体験を紹介しましょう。
手術前のレントゲン 検査で心臓の異変を発見
<山梨県 K・Eさん うにちゃん(メス・15才)の場合>
約4年前、前足の腫瘍除去手術前のレントゲン検査で、心臓が大きいことが判明。その後、心臓超音波検査で「肥大型心筋症」との診断が。以前からきょうだい猫よりも呼吸が速めで、活動量が減ってきていましたが〝まさか〟でした。定期的に検査を受け、進行せずに過ごせています。
現在は毎日1回1錠、抗血栓薬を投与。舌の奥に薬を入れたあと、スポイトで水を飲ませているそう。
いかがでしたか? 怖い心筋症を早期発見できるように、心臓の検査を定期的に受けたり、心拍数をできるだけ毎日測るようにしたいですよね。
参考/「ねこのきもち」2020年10月号『どの猫にも、突然死の危険が 怖い心臓の病気 猫の心筋症』(監修:東京都北区にある王子ペットクリニック院長 重本 仁先生)
文/Betty
撮影/Akimasa Harada
撮影協力/猫と本 Miaw
※この記事で使用している画像は「ねこのきもち」2020年10月号『どの猫にも、突然死の危険が 怖い心臓の病気 猫の心筋症』に掲載されているものです。