「黒猫が目の前を横切ると不吉の前兆」という迷信を聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。しかし、日本ではもともと黒猫は“縁起の良い猫”と考えられていました。なぜ“不吉”というイメージができてしまったのか……黒猫の歴史をひもといてみましょう。
平安時代にはすでに黒猫が飼われていた
日本人が猫を飼っていたことが確認できる日本最古の文献として、平安時代初期に記された『寛平御記』という宇多天皇の日記があります。なんとこの文献には、「父親から譲られて黒猫を飼っている」という記述が出てくるのだそう。平安時代の人にとっても、黒猫は身近で親しみのある動物だったことがうかがえます。
昔の日本では黒猫は“福猫”だった
平安時代から人々に愛されてきた黒猫は、日本ではもともと“福猫”として大切にされていました。「夜でも目が見える」という理由から、黒猫は魔除けや幸運、商売繁盛の象徴とされ、縁起の良いものと考えられていたようです。
江戸時代には黒猫がブームに!
江戸時代には「黒猫を飼うと結核が治る」といううわさが広まり、人々の間で黒猫を飼うことがブームになったこともあるそうです。結核の特効薬がなかった江戸時代には、“福猫”である黒猫に病気平癒のご利益を求めていたのかもしれませんね。
あの名作のモデルも黒猫!?
明治時代の文豪・夏目漱石の代表作に『吾輩は猫である』という作品がありますが、そのモデルとなった猫も、黒猫だったといわれています。漱石のもとに迷い込んできた黒猫がきっかけでこの名作が生まれ、漱石は念願の作家デビューを果たせたことから、この黒猫はまさしく“福猫”として漱石夫妻に大変可愛がられたのだとか。
言い伝えを今に伝える「招き猫」
黒猫は“福猫”という考え方は、現代にも残っています。そのわかりやすい例が「招き猫」。黒い招き猫には、魔除けや厄除けといったご利益があるといわれています。
欧米では「黒猫は不吉の象徴」と考えられていた
一方、欧米では黒猫は魔女の使い魔、もしくは魔女が変身した姿であると信じられていました。そのため、人々は黒猫を不吉なものと考えており、中世の終わり頃に起こった魔女狩りでは、多くの黒猫もその犠牲になったといわれています。
「黒猫=不吉」のイメージは輸入された!?
これまで見てきた通り、古来より日本では黒猫を縁起の良いものとしてきました。明治40年前後くらいまでは、黒猫が“福猫”であるという記述が残っているそうです。現代の日本で広まっている「黒猫は不吉」のイメージは、それ以降に外国から持ち込まれたものだと考えられるでしょう。
昔の日本と欧米では黒猫に対するイメージは真逆ですが、黒猫にまつわるさまざまな言い伝えがあるのは共通です。もしかしたら、昔から人々は黒猫に対して何か特別なものを感じていたのかもしれませんね。
参考/「ねこのきもち」WEB MAGAZINE『黒猫をもっと知りたい!歴史や性格から言い伝えまで徹底解説』(監修:ねこのきもち相談室獣医師)
文/terasato
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。