猫が特定のものに執着したり、食べ物ではないものをかじったり、舐めたりしている姿を見かけたことはありませんか。もしかすると、その行動は「ウールサッキング」かもしれません。動物病院での受診が必要になる場合もあるこの問題行動について、獣医師の菊池亜都子先生にお話を伺いました。
ウールサッキングとは?
ウールサッキングは別名「毛織物吸い行動」とも呼ばれる、異物を好んで吸ったり、噛んだり、摂食したりする問題行動のことです。これは同じ行動を繰り返す「常同障害(じょうどうしょうがい)」のひとつで、例えば毛布を食べるといった行動を頻繁に繰り返します。
どうして危険なのか
猫が毛布などを少し吸う程度であれば危険はありませんが、噛みちぎって飲み込むと、消化できず腸に溜まります。手術で摘出しなければならないこともあるので、そうなる前に受診が必要です。
ウール以外に口にするもの
布類であればなんでも対象になりますが、とくにウールやフリース、毛布といった素材が多いようです。また布類以外のものもウールサッキングの対象になり、紙類、ポリ・ビニール類、プラスチック類を好んで口にしたがる猫もいます。やわらかい噛み心地の台所用スポンジや、ウレタンマットも例外ではありません。
誤食との違い
ウールサッキングは、誤ってではなく、好んで口にしている点が誤食とは異なります。
誤食は食べ物だと思い誤って食べてしまうことを指し、たとえば刺身のニオイが付いた食品トレーを食べてしまうようなケースが誤食にあたります。
それに対しウールサッキングは、食べ物に関係なく、自ら対象物を探し出して口にしているのです。
問題行動の原因
この問題行動の詳細な原因は解明されていませんが、乳飲み猫のうちに母猫から引き離される「早期離乳」が要因のひとつと考えられています。また、ストレスや欲求不満が生じるような環境下に置かれている猫や、トラウマを生じるようなできごとに遭遇した経験のある猫も、ウールサッキングを起こしやすいようです。
ウールサッキングは、どんな猫にも起こり得る問題行動です。もし、食べ物ではないものを好んで口にしていても、猫に悪気はないので怒らずに対応してあげましょう。
お話を伺った先生/菊池亜都子先生(獣医師)
参考/「ねこのきもち」2021年2月号『冬はとくに注意!どの猫にも起こり得る問題行動「ウールサッキング」を知っていますか?』
文/小崎華
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。