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【獣医師監修】日本の夏は猫にも危険?猫の熱中症は怖い病気だった!

暑さで体温調節に支障をきたし、体に異変を起こす熱中症。半砂漠地帯で生まれた猫は暑さに強いといわれていますが、それでも急激に気温が上昇した場所だと、熱を体外に逃がせず、最悪数分で命にかかわる状況になることも。愛猫を熱中症から守るために、飼い主さんができることを知っておきましょう。

田草川 佳実 先生

 獣医師
 聖母坂どうぶつ病院副院長

 北里大学獣医畜産学部(現 獣医学部)獣医学科卒業

●資格:獣医師/認定こいぬこねこ教育アドバイザー(JAHA認定)/General Practitioner Certificate IN Small Animal Surgery(小動物外科学)

●所属:日本獣医動物行動研究会日本獣医がん学会日本獣医腎泌尿器学会

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猫はもともと砂漠の動物!?

ソファーの上の猫
kaorinne/gettyimages
猫の祖先は、砂漠にすむリビアヤマネコとされています。厳しい暑さの砂漠にルーツを持つ猫なので、犬などに比べても暑さに強いのではないか? と思いますよね。

たしかに、猫は比較的に暑さに強い動物です。水があまり飲めない砂漠で暮らしていた名残りで、猫は飲水量が少なく濃いおしっこが出るという性質もあります。

リビアヤマネコと現在のイエネコとでは体質が変わっている

しかし、長い歴史の中で人と共に砂漠から各地へと移り住んだ猫は、それぞれの置かれた環境に順応するために毛の長さや体質を変えてきました。リビアヤマネコと現在のイエネコとでは体質が変わっているため、イエネコでは熱中症が起こり得るのです。

極端な例として、ノルウェージャンフォレストキャットは、北ヨーロッパの厳しい寒さに適応するために豊かな長毛をまとうようになっています。長毛種の猫にとっては、寒さよりも暑さの方が苦手な場合もあります。

日本の夏は猫にとっても過酷な暑さ

フードを食べる猫
kaorinne/gettyimages

日本の夏は高温多湿

日本の夏は「高温多湿」なため、猫にとって過ごしにくく、熱中症になりやすい環境です。

猫の祖先が暮らしていたリビア砂漠の夏は50℃を超える日があるほどの暑さですが、湿度が低く乾燥しています。

一方、日本の夏は、これまでは「温帯気候」とされていましたが、近年では「亜熱帯気候」に傾いてきました。亜熱帯気候とはすなわち、高温多湿で雨が多い地域となります。この、日本の湿度の高さが砂漠の暑さとは異なっており、熱中症の発生に大きく関わるのです。

猫の体温調節の方法

ではどうして、湿度が高いと猫は熱中症なりやすいのでしょうか?

それは、猫の体温調節の方法に湿度が関わるからです。猫には汗腺が少なく、人と違って汗を全身にかくことよる体温調節がほとんどできません。代わりに、鼻や口から水分を蒸発させることで体温を調節しています。

しかし日本の夏のように湿度が高いと、体から出た熱を水蒸気として発散しづらく、うまく体温調節ができず熱中症になりやすいのです。比較的高い気温に強い猫でも、蒸し暑さには弱いということなのです。

熱中症になりやすい猫を飼っているなら、特に注意を

猫とソファー
ramustagram/gettyimages
熱中症対策の要点は、いかに体温が上がりすぎないようにするかということ。しかし猫は、体形や健康状態などによって、体温調節の機能に差があります。以下の猫を飼っている場合は、より一層配慮することが大切です。


  • 体温調節をしづらい子猫、シニア猫

  • 長毛種の猫

  • 熱を逃がしにくい体型の「ぽっちゃり猫」「鼻ペチャ猫」

  • 好きな温度の居場所に自分で移動できない「四肢に障害がある猫」

熱中症は、対策&グッズで予防できる病気です

かわいい子猫
MasaoTaira/gettyimages

部屋間を開放する

家の外で飼っている猫の場合は、自分で涼しい場所を見つけて避難することができますが、室内で飼育している場合にはそれができない場合もあるので注意が必要です。室内飼いの暑さ対策として、部屋間のドアを開放しておくのも手です。猫が快適な温度の場所を見つけて自由に移動できる範囲を広くとってあげましょう。その際、風でドアが閉まり不意に閉じ込めてしまわないよう、ドアストッパーなどを活用するとよいでしょう。

涼める場所を作る

部屋の中で、猫が快適と感じる居場所を作れるように工夫しましょう。部分的にカーテンを引いて日陰を作る、暑い日はエアコンをつけるのはもちろんですが、それとあわせてひんやりグッズを使うのもいいでしょう。水や電気が不要なクールマットや、冷凍庫で凍らせた保冷剤を入れて内部を冷やすペットハウスなどが手軽に使用できるのでおすすめです。

冷房を28度程度に設定する

室温が下がれば熱中症は防ぎやすくなりますが、温度の設定には注意が必要です。部屋があまりに寒くなりすぎると体調不良の原因になってしまいます。エアコンは28度程度に設定し、風向きが猫に直接当たらないようにしましょう。※適切な設定温度は環境により異なります。

しっかり水を摂取できる工夫を

猫も暑さを感じると、のどが渇きます。飲みたいときにすぐに水が飲めるよう、飲み水を置く数を増やすなどの工夫をしましょう。

熱中症対策には、こちらの記事も参考にしてみてください。

熱中症になると、どんな症状になるの?

壁に頬をつける猫
Masanobu Nakatsukasa/gettyimages
熱中症を引き起こすと、次のような症状が見られます。

  • 体がいつもより熱い

  • 食欲や元気がない

  • 口呼吸をする、ヨダレが出ている、吐く

  • ぐったりしている、フラつく、あまり動かない


これらに加えて、重症化すると意識がなくなったり、痙攣(けいれん)、血尿・血便が見られたりすることも。これらの症状が見られた場合、熱中症でなくても何らかの病気の可能性があるため、発見したらすみやかに動物病院で受診するようにしましょう。

異変に気付いたら? 熱中症の応急処置

不機嫌な表情をした猫
chie hidaka/gettyimages
熱中症は、短時間で命にかかわる状態になることもあります。猫に熱中症が疑われたら、適切な応急処置を施しましょう。

応急処置は、まず猫の意識があるかどうかで異なります。飼い主さんの声かけに反応したり、猫が自分で動けたりするようなら、まずは室温を普段より低く下げましょう。それでも体温が下がらなかったり症状が落ち着かなかったりする場合は、濡らしたタオルや保冷剤を脇の下や鼠径部(後ろ足の付け根のお腹側)、首などの太い血管の通っている場所に当てて冷やしましょう。

猫の意識があり、飲み込みができる様子があればお水も飲ませてください。その際には飲みすぎないように気を付けましょう。

処置をしたら、猫の意識があるかどうかにかかわらず、すぐに動物病院に相談して指示を仰いでください。

初夏や秋も猫の熱中症に気を付けましょう

カメラを見ている階段の子猫
bombermoon/gettyimages
熱中症になりやすいのは真夏と考えがちですが、初夏は猫が暑さに慣れていなかったり、秋は夏の疲れが溜まったまま予想以上に残暑が長引くことがあったりします。真夏だけのことと考えず、長期的に対策を心がけると、より安心でしょう。

こちらの記事も参考にしてみてください。
監修/田草川佳実先生(聖母坂どうぶつ病院副院長)
文/Yoko N
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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